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SDGsシンポジウム2023を開催 「都市と自然:その連関の探求と持続可能性へ向けた課題解決のデザイン」

掲載日:2023年4月13日

東京大学とシュプリンガーネイチャーは2023年2月28日に、「都市、自然、持続可能な開発目標(SDGs)」に関するシンポジウムを共催しました。今回は東京大学とシュプリンガーネイチャーが共催する4回目のSDGsシンポジウムであり、2019年、2021年、2022年の過去3回では、それぞれ異なるSDGsの目標に焦点を当ててきました。2023年の本シンポジウムでは、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に加えて、SDGsの他の目標との接点に焦点を当てました。これは、生活様式と消費のパターンが遠く離れた場所の自然に一層大きな影響を与えるような形に変化していることに関連して、世界中で見られる急速な都市化が持続可能性に重大な波及効果を及ぼしているという本シンポジウムの実行委員会の中での共通認識に基づくものです。さらに、消費、廃棄からインフラや資源へのアクセスに至るまでの多くの都市プロセスが、都市域内、都市と都市の間、都市と地方の間での不平等を鮮明にしていることも背景にあります。

2023年のSDGsシンポジウムのテーマである「都市、自然、持続可能性」は、経験豊富な研究者や実務家と次世代の研究者の双方による議論を通じて、地球規模の持続可能性の課題解決に向けた総合知的アプローチの意義を共有するという、一連のSDGsシンポジウムの長期的な目標に整合するものです。このような趣旨を反映し、本シンポジウムでは、都市、自然、持続可能性という横断的なテーマについて豊富な経験を有し国際的に活動する研究者や出版社、そして日本から若手の学者や学生を集めました。登壇者については、専門分野、所属機関、性別、キャリアの段階に関して、包摂性を達成できるよう特に配慮しました。登壇者は、世界の第一線で活動する研究者2名(バイ教授、エルムクビスト教授)、シュプリンガーネイチャーの編集長(キャンベル卿)、Nature Sustainability チーフエディター(コンテスタービレ博士)、日本の新進気鋭の研究者2名(曽我博士、新保博士)です。本シンポジウムの東京大学側の幹事は、本学で総合知的アプローチによる研究活動を実践する研究者の拠点である未来ビジョン研究センター(IFI)が務めました。

東京大学の藤井輝夫総長による開会挨拶は、本シンポジウムの基調をなすものでした。藤井総長は、現在の都市化が自然に対してもたらす甚大な影響について言及し、都市活動は生物多様性の損失や気候変動に直結しており、単一のステークホルダーの集団や学問分野のみによっては解決が困難な、多次元的な持続可能性の課題を生み出していると指摘しました。その上で、統合知的アプローチを採用し、そのための場を作ることの必要性を強調しました。また、現在東京大学で行われている主な取り組みを紹介し、大学が民間を含む学外のステークホルダーとの超学際的な連携や協働を促進するための環境を整備することが重要であると述べました。

最初の基調講演では、オーストラリア国立大学のシューメイ・バイ教授が、都市化の変遷が都市の近くや遠くの自然にどのような影響を及ぼしているかについて、知見を紹介しました。都市化のパターンとその影響に焦点を当てるだけでなく、バイ教授は、地域の持続可能性を志向した実験や学際的な協力を通じて、解決策を見つけるためにとりうるアプローチや、Earth Commission(アース・コミッション)による活動についても言及しました。続いて行われた2番目の基調講演において、シュプリンガーネイチャーのフィリップ・キャンベル卿は、自身が世界経済フォーラムを通じて携わった、自然を活用した都市の課題解決策に関するいくつかの議論を紹介しました。また、都市の持続可能性に関する研究成果が専門家や政策立案者によって採用され、実質的な影響力を持つための、主要な論点や要因について説明しました。

次に4人のパネリストが、都市と自然の相互作用に関する様々な重要な問題と、それらが持続可能性に与える影響を概説しました。トーマス・エルムクビスト教授(ストックホルム大学)は、都市の持続可能性とSDGsの目標11に関して、現在浮上している重要な研究課題について概説し、特にグローバルサウスとグローバルノースの間で研究の優先事項に大きな違いがあることを強調しました。曽我昌史准教授(東京大学)は、なぜ人間と自然の関係が都市の住みやすさとその住民のウェルビーイング(健康と幸福)にとって重要か、また都市化のパターンがこれらの関係性をどのように変化させるのかについて述べました。新保奈穂美講師(兵庫県立大学)は、都市の緑化がどのように人間と自然の強い関係を作り出し、社会的結束に良い効果をもたらすだけでなく、アクセスの公平性にも重要な影響を与えるかということを、ヨーロッパと日本の事例をもとに批判的に論じました。モニカ・コンテスタービレ博士(ネイチャーサステナビリティ、チーフエディター)は都市科学と政策を橋渡しする重要性と課題、また都市に関する学問がどのような文脈で行われているかを考えることの重要性について述べました。

SDGsの目標11が非常に幅広いテーマであることを踏まえ、各基調講演とパネルプレゼンテーションのテーマは、異なる学問分野のレンズを通して、都市と自然の接点に関する様々な観点を反映できるように考慮されました。それにより、この接点において現在の主なパターン、研究上の課題、主な研究優先順位が明確になりました。それぞれの講演では、講演毎に焦点を当てたテーマについてだけでなく、都市と自然の関係がもたらす公平性への影響や、都市と自然の接点で起こる現象を理解し、都市の持続可能性を高める解決策を設計するために、なぜ、どのように、超学際的研究が必要なのかについても言及がありました。

最後に、亀山康子教授(東京大学)がモデレータを務め、全登壇者によるパネルディスカッションが行われました。このパネルディスカッションでは、都市とSDGsの接点で研究、出版、実践に携わってきた登壇者の経験に基づく議論が展開されました。パネルディスカッションで討議された主なトピックは、(a)技術が将来的に都市と自然の接点にどのような影響を与えるか、(b)グローバルサウスとグローバルノースにおける公平性と都市計画の間のフィードバックは何か、(c)都市の持続可能性を高めるために、イノベーションや地域の現場での持続可能性実験をどのように規模拡大するか、(d)都市の持続可能性に向けた対応策の適用や実装を改善するために、市民はどのような役割を果たすことができるのか、(e)高い社会的影響力を持つ研究において、グローバルサウスや若手研究者の関与をどのように改善し、促進するか、でした。
全体として、本学の「新しい大学モデル」と密接に関連した内容となりました。

本シンポジウムには世界97か国から約1,400名の参加登録があり、東京大学伊藤国際学術研究センターで63名、オンラインで390名の合計453名が参加しました。オンライン参加者は約56%が日本から、約44%が海外からの参加でした。学術・研究機関だけでなく、民間企業、政府機関、市民社会からの参加者も多く、本イベントの学際的な魅力を示しています。また、学生や若手研究者の登録も多く見られました。

本シンポジウムに先立ち行われたポスターセッションでは、東京大学や日本の他大学の学部学生、大学院学生がポスターを展示し、シンポジウム登壇者、参加者に自身の研究について発表しました。合計10名の学生から、都市と自然について様々な角度から捉えたポスターが提出されました。このうち6名は東京大学から、4名は他大学からの参加でした。ポスターでは、都市の屋上緑化がどのように持続可能性を高められるか、大学キャンパス内の樹木がどのような生態系サービスを提供しているか、都市のヒートアイランド現象に対する緑地の効果など、様々なトピックが紹介されました。都市、自然と持続可能性の接点にある現象を理解するだけでなく、都市の自然やインフラの役割を活用し、都市の持続可能性を高めるための革新的な解決策を提案するポスターもありました。いずれのポスターも、学際的なアプローチにより持続可能性に関する重要な課題に対して統合知的アプローチを採用する必要性と価値を示しました。ポスター選考委員会は、東京大学内外の新進気鋭の研究者によるハイレベルな研究を反映した質の高い発表に感銘を受けました。ポスターセッションでは、学生がシンポジウムの講演者や聴衆からフィードバックや激励を受けていました。



写真:
[上段]左から、藤井総長、バイ教授、キャンベル卿、閉会の辞を述べたアントワーン・ブーケ氏(シュプリンガーネイチャー・ジャパン代表取締役社長)
[下段]パネルディスカッション(左から、亀山教授、バイ教授、キャンベル卿、エルムクビスト教授、曽我准教授、新保講師、コンテスタービレ博士)
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