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新しい渋谷から未来への問いかけを|総長室だより第25回 思いを伝える生声コラム

掲載日:2019年12月25日

東京大学第30代総長 五神 真

新しい渋谷から未来への問いかけを

 

 いま、渋谷が大きく変わろうとしています。11月にオープンした渋谷スクランブルスクエアはその象徴です。その15階に産学交流の新しいプラットフォームとして、SHIBUYA QWSが誕生しました。名称はQuestion with sensibilityの頭文字を繋げたもので、物事の本質を探究し、常に問い続けることが、新しい価値につながる原点になるという思いがこめられています。渋谷のほど近くに駒場キャンパスを擁する東大も参加して、都内5大学と企業16社の提携によって生まれました。11月8日には、オープニング企画の一つとして、隈研吾先生と私が、「地域の未来を拓く知の創発とは?」をテーマに現地で対談を行いました。隈先生はスクランブルスクエアの設計者の一人です。

 私は東大入学当初、進学先の選択肢として建築を考えたこともあり、とても楽しく対談できました。建築は人たちが集い、出会うプラットフォームである、大きな施設作りのような巨大プロジェクトに人を惹きつけ巻き込むには、“実験性”が大事……といった、インパクトのある作品を次々世に問うてきた隈先生ならではの話に大いに刺激を受けました。大勢の人々を巻き込むのが重要というのは大学運営にも通じる話です。

 とりわけ印象的だったのは、東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場に47都道府県の木材を使ったという話です。同じ杉材でも産地によって木目も色味も手ざわりも全然違うというのです。多様な材料というと、木とプラスチックと鉄が違うことは誰でもわかります。しかし、杉材の微妙な違いを感じるには、日頃から木材をより丁寧に深く見つめていなければわかりません。違いを感じ取るセンシビリティを鍛えておくことが重要なのです。それがあれば、違いを味わい楽しむことができる。これは多様性を尊重することの出発点なのではないかと思いました。そこから新しい価値が生じてくるはずです。

 大量生産大量消費の時代には、差異を捨てることがむしろ価値につながっていた面がありました。しかし、今は違います。革新が進むデジタル技術も、社会の様々な差異を丁寧に扱い、尊重するツールとして役立てるべきです。差異を尊重する中で、新しい価値が生まれます。そのためには、物事を漠然と見ているのではなく、違いに対するセンシビリティを意識して磨くことが大切です。それを鍛える場として大学の多様性をいっそう高めることが重要だと感じています。

 私も駒場に通っていたころ渋谷に良く足を伸ばしました。次代を担う若者が集う渋谷から、未来社会への協創の問いかけを発信していきましょう。

 

 

「学内広報」1529号(2019年12月19日)掲載
 

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