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3度目のダボス会議とGCSの構想|総長室だより第26回 思いを伝える生声コラム

掲載日:2020年4月2日

東京大学第30代総長 五神 真

3度目のダボス会議とGCSの構想

 

 新型コロナウィルス感染症は瞬く間に世界中に広がり、経済・社会に大きな影響を与えています。収束への道筋はまだ見えませんが、東大も教育研究をしっかり維持するよう、対応を急いでいます。対処マニュアルがないからこそ創造性を発揮し、一緒に取り組むことが必要です。ぜひ皆さんのご協力をお願いします。

 さて、新型コロナ感染拡大の直前の1月下旬、世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に参加しました。地球環境問題は今年も関心の中心でした。1兆本の植樹プロジェクトが公表されたほか、マイクロソフトCEOからは排出ゼロのカーボンニュートラルを越えた、「カーボンネガティブ」の達成という方針とそのための基金設立が発表されました。インドネシアの少女たちの思いに始まった「Bye Bye Plastic Bags」の運動が、2025年までに海洋プラスチックごみを70%削減する政府の政策となるなど、企業、NGOなど多様な組織がそれぞれの立場で環境問題に積極的に取り組む様子を目の当たりにして、大いに刺激を受けました。一方で、残念ながら日本の主張や提案の存在感は極端に乏しく、日本からの参加者としては忸怩たる思いを抱きました。また、経済政策の成果を声高にアピールするトランプ大統領の演説を、16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが苦々しい顔で見ていた姿も印象的でした。世界で、世代間の分断が拡大しているのです。グローバルな共通課題について、日本の存在感を高める取り組みが必要だと感じました。

 東大Webサイトに掲載した本年の年頭挨拶でも述べたことですが、グローバル・コモンズの創出と育成は、大きな共通課題です。デジタル革新によって、地球を含むフィジカル空間はサイバー空間と不可分なものとなっています。サイバー空間が荒れ果てていくようなら、地球のコモンズ(共有地)を守ることは出来ません。サイバーとフィジカルの両空間を一体として捉え、グローバル・コモンズの持続可能なあり方や評価指標を開発する活動を進めるため、東京大学グローバル・コモンズセンターの設置を構想しています。例えば森林資源や水産資源についてはその持続可能性を評価するFSCやMSCの認証がありますが、それらを拡張したGlobal Commons Stewardship(GCS)の認証システムを、東大から世界に発信できると良いと考えています。ダボス会議の場で、このセンターの構想について、世界の様々な方と集中的に議論しました。皆さんから大いに賛同をいただき、意を強くしたところです。東京大学からインクルーシブな社会への変革を駆動し、それを世界に発信していきたいと思っています。

「学内広報」1532号(2020年3月25日)掲載
 

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