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大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析アルゴリズム開発プロジェクトを牽引。| UTOKYO VOICES 057

掲載日:2019年4月11日

UTOKYO VOICES 057 - 地震研究所 巨大地震津波災害予測研究センター 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻 准教授 長尾大道

地震研究所 巨大地震津波災害予測研究センター / 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻 准教授 長尾大道

大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析アルゴリズム開発プロジェクトを牽引。

「小さい頃から、宇宙や地球に非常に強い興味がありました。また、算数や数学は絶対に誰にも負けたくなかった。それが、地球科学と数理科学の融合という今の研究につながっています。理学部に行くと決めたのは中学生の時で、その頃から研究者になると決めていました」

京都大学大学院理学研究科の修士・博士課程に進んだ長尾は、データ解析のための数学的手法に興味があったが、「これといったデータ解析手法がなかなか見つからず、大した結果を出せずに悩んでいました」。転機は博士課程のときに訪れた。

「統計数理研究所の樋口知之先生が京大で行った集中講義で、まったく知らないデータ解析手法に出会ったのです。まさしく、目から鱗でした」

その後、長尾は統計数理研究所在職時に、モデルに実際の観測値を入力して現実に近いシミュレーション結果を得る「データ同化」の手ほどきを樋口から受け、東京大学に異動後、シミュレーションとデータが大規模な場合にも適用可能なデータ同化アルゴリズムの開発に取り組んだ。例えば、長尾らは天気予報でおなじみの台風の進路予測で表示される予報円の精度と求めるまでの計算時間を、劇的に改善する新しい4次元変分法を2年前に開発した。

「天気予報で使われている従来の4次元変分法は、予測結果の不確実性を評価できませんでしたが、それを可能にする新しい4次元変分法の開発に成功しました」

「通常、シミュレーションモデルの規模が大きくなると、そのままでは計算コストが幾何級数的に増大します。たとえば、モデルの規模が10倍になると、計算時間は100倍といった具合に。しかし、やはりデータ同化の計算時間も10倍であってほしい。これが可能となるような4次元変分法データ同化のアルゴリズムを作りました」

現在、さらに大規模なデータを解析できるアルゴリズムの開発に取り組んでいる。それが、長尾らが牽引している科学技術振興機構の大型プロジェクトCRESTで、最先端のベイズ推論に基づくデータ同化手法の深化や、大容量化の一途を辿る地震ビッグデータの解析に役立つベイズ統計学的手法の開発を実施している。

公的な研究機関が運営する国内1,000カ所以上の地震観測点に加え、近い将来、民間会社が所有する数千カ所にのぼる地震計や、スマホに搭載されている振動計のデータの利活用が実現すると、一挙に何千万カ所もの地震観測点ができることになる。しかし、「このような地震ビッグデータを効率よく処理するアルゴリズムは、まだありません。その解析手法は今から作る必要があるため、CRESTプロジェクトを発足させました」。

「私は、基礎研究を実施している地震研の中でも、特に基礎中の基礎の研究を担当しています。論文は数式だらけで、見た目に派手な図もありませんが、数理科学的に一切の誤魔化しや曖昧さを残さないことを最も大切にしています。固体地球科学と数理科学の融合に賛同してくれる若手研究者が、徐々に集まってくれています。引退後はもちろん、死ぬ間際まで、そのような人たちが集まって議論してくれる、そんな研究者になりたいですね」

(小物)「デジタルペーパー」

Memento

1年くらい前に買ったデジタルペーパー。「メモを書いたり論文を読んだりすることはもちろん、学生や研究員の論文原稿チェックなど、本当に手放せません。これを買うまでは、海外出張の際に大量の印刷物を持参していたのですが、それからも解放されました」。

(直筆コメント)「アホになれ」

Maxim

任期付き研究職を渡り歩く苦しい時期、研究者をこれ以上は続けられないと諦めかけていた時に、父から言われた言葉。「まだ決まってもいない先のことを、あれこれ考えてもわからない。目先の小さな損得を考えず、ただひたすら目の前のことを一生懸命やれ、アホになれ、と言われ、生き返りました」。

Profile
長尾大道(ながお・ひろみち)

1997年京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻修士課程修了、2002年同専攻で博士号取得、その後、日本原子力研究開発機構、海洋研究開発機構、統計数理研究所での研究生活を経たのち、2013年より地震研究所と東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻の准教授を兼務。専門は数値シミュレーションと観測・実験データをベイズ統計学で融合する「データ同化」のアルゴリズム開発および様々な科学分野への応用展開。地震学者と統計学者の橋渡し役として、地震ビッグデータ解析アルゴリズム開発のプロジェクトを牽引している。

取材日: 2019年1月18日
取材・文/佐原 勉、撮影/今村拓馬

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