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東大生のSDGs認知度は87%に上昇 TSCP学生委員会が第2回意識調査の結果を発表

掲載日:2021年2月22日

学生のSDGsへの関心の高さは、学生を採用する企業にとってもSDGsに取り組むインセンティブの一つになりそうだ © 2021 東京大学

TSCP学生委員会 (UTokyo Sustainability) は「東大生のSDGs意識調査2020」を実施し、2021年2月、報告書を発行しました。SDGsとは、2030年までの達成を目指す、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。2015年9月に国連サミットで採択され、17個の目標とその下にある169個のターゲットで構成されています。

〈調査概要〉
実 施・分析:TSCP学生委員会
協力:東京大学施設部施設企画課TSCPチーム
調査期間:2020年6月29日~7月31日
調査方法:学務システムUTASにて掲示板・メール配信
回答者数:東京大学に在籍する学生 計3184人
回答言語:日本語、英語
設問内容:SDGsに関して8問。環境・エネルギーに関して7問。学年や所属部局など基本質問6問。

調査実施主体のTSCP学生委員会とは、東京大学のサステイナブルなキャンパスの実現に向けて活動しているTSCP(the Todai Sustainable Campus Project:東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト)の一環で、在学生の有志約20名で活動する学生委員会です(2015年発足)。学生のサステナビリティ意識の実態を把握し、学内でより良い啓発活動を実行するため、SDGs意識調査を行っています。今回は、2018年に続き2回目の調査でした。

調査によれば、東大生のSDGs認知度は87%で、2018年調査の63%と比べて、24ポイント上昇したことがわかりました。

「(就職されていない方へ)将来勤める企業を選ぶうえで、その企業がSDGsを経営戦略などに組み込んでいることを一つの判断基準として考慮しますか?」という問いに対しては、68%の回答者が考慮する、あるいは、少し考慮する、を選びました。学生のSDGsへの関心の高さは、優秀な学生を採用したい企業にとってもSDGsに取り組むインセンティブになりそうです。

SDGsの17個のゴールの中で「重要だと思う課題はどれですか?」と世界全体、日本国内、身近な生活と3つのスケールについてそれぞれ尋ねた設問では、各課題の重要度認識の差が浮き彫りになりました。また、日本の達成度が低い課題を尋ねる設問では、学生たちの意識が、国際組織による各国のSDGs達成状況レポート「持続可能な開発報告書2020」(Sustainability Development Report 2020)内の達成度スコアと異なる部分があり、日本でよりSDGsの達成を高めるためには、課題によっては認識を改める必要があることが示されました。

2018年から2020年にかけての東大生のSDGs認知度の変化(「東大生のSDGs意識調査2020」結果報告書〈概要版〉より転載)© 2021 TSCP学生委員会

国際組織による達成度スコアは低いが学生の達成度認識が高い(達成度が低いと思っている学生が少ない)課題は、[14]海洋とその生態系の保護、[15]森林と陸上生態系の保護、[17]パートナーシップなどでした。一方で、国際組織による達成度スコアは高いが学生の達成度認識が低い(達成度が低いと思っている学生が多い)課題は、[4]教育問題、[7]エネルギー問題、[8]持続可能な労働、雇用と経済成長などでした。

「この結果がどの課題を重視して今後取り組んでいけばいいのかという指針になります。ぜひ報告書を見てほしい」と、TSCP学生委員会委員長で、生物多様性の保全を研究する鬼頭健介(きとう・けんすけ)さん(農学生命科学研究科・修士2年)は呼びかけます。

鬼頭さんがこれまで先頭に立って推進してきた活動の一つには、ドラフトチャンバーのサッシュ(窓)を閉めて省エネルギーの実現を呼びかける活動「Shut the Sash」キャンペーンがあります。

ドラフトチャンバーとは、化学実験時に有害な気体を排出する換気装置です。この装置を使用しない時はきちんとサッシュを閉めることで、余分な換気に使われるエネルギー消費を節約できます。

TSCP学生委員会が作成し配布している「Shut the Sash」啓発ステッカー © 2021 TSCP学生委員会

「Shut the Sash」キャンペーンは、もともとハーバード大学やカリフォルニア大学などの海外大学で始まった啓発活動で、多くの大学では学生が主体となって行われています。東京大学では、TSCP学生委員がオーストラリア国立大学に交換留学で派遣された際に国際的な実験系研究室での取り組みを調査し、2017年度から本格的に取り入れました。

今回の意識調査にて「Shut the Sash」の認知と実施について尋ねた設問では、キャンペーンを知らず実行もしていない層が34%、知っているが実行していない層が2%で、認知して実行している層の7%を大きく上回ることがわかりました(残りの57%の学生はドラフトチャンバーを使用する可能性のない部局に所属)。この結果を受け止め、TSCP学生委員会はさらなる周知活動に力を入れていきます。

TSCP学生委員で、来年度から物理工学を専攻予定の池山尚(いけやま・なお)さん(理科II類・2年)は、「2年生で基礎化学実験の授業を受けた時、ドラフトチャンバーの開けっ放しによる電力の無駄な消費について先生が言及されていて、実際にTSCP学生委員会が活動していることを知って興味を持った」と、委員会参加の経緯を話しました。

大学のSDGsや環境に関する取り組みへの要望を尋ねた自由回答では、『(マイボトルのための)ウォーターサーバーを設置してほしい。』『SDGsについて学べる場を増やしてほしい。』といった学生からの声がありました。

建築物の省エネについて研究し、来年度から池山さんと共同でTSCP学生委員会委員長を務める増田朱音さん(ますだ・あかね)さん(工学系研究科・修士1年)は、「実現可能性を考慮しながら、委員会としてできることに取り組んでいきたい」と今後の抱負を語りました。

私たちのキャンパスをよりサステイナブルにするために、TSCP学生委員会は調査結果を活用し、今後も活動を進めていきます。

結果報告書公開に合わせて実施したオンラインインタビューの様子。左上:増田朱音さん、左下:鬼頭健介さん、右下:池山尚さん、右上:森下瑠里花(筆者) © 2021 東京大学

取材・文:情報学環教育部 森下瑠里花(広報課インターン兼TSCP学生委員)

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