入門が難しい囲碁を一から学べる全学ゼミナール
今年で20年目を迎える全学体験ゼミナール「囲碁で養う考える力」
。
日本棋院
の協力で開講している、囲碁のルールや流れなどを学ぶ初心者を対象にした授業です。
定員40名に対し、毎年100名ほどの応募がある人気ゼミ。
2014年からこのゼミを担当している、東大囲碁部OBで総合文化研究科准教授の森畑先生に、ゼミの狙いや囲碁の魅力について紹介してもらいます。
プロ棋士が直接指導する囲碁ゼミ
総合文化研究科准教授
東大囲碁部OB
MORIHATA Akimasa
囲碁は簡単に言うと陣取りゲームです。黒白交互に石を打ち、陣地を囲い、その陣地が多いほうが勝ちです。構成要素はシンプルですが、打ち方は多様にあり、奥が深い。入門のハードルが高いゲームです。
東京大学では2005年秋から初心者を対象にした全学体験ゼミナール「囲碁で養う考える力」
を開講してきました。当時日本棋院の理事長だった故加藤正夫名誉王座からの働きかけがきっかけで始まったと聞いています。日本の伝統文化を学び、実践を通じて思考力や決断力などを養うことが目的です。
全13回のゼミでは、基本的なルールや対局の流れを講義と実践で学んでいきます。講師は日本棋院のプロ棋士。正式な碁盤は、縦横それぞれ19本の線がある19路盤ですが、まずは小さな6路盤で囲碁の陣地をつかんでいきます。19路盤だと、強い人同士の対局でも250手くらい打たないと終わりませんが、6路盤だと30手ほど。受講者同士で対局します。その後9路盤にステップアップし、最終的には19路盤で対局ができるようになることを目指します。
囲碁の初手は361通りあり、そこから50~100通りくらいある状態が終局近くまで続きます。それらの可能性をしらみつぶしに考えるのは不可能です。大事なのは先を読むことではなく、その都度の判断やプラン。その難しさから、ゼミを始めた当初は全員が打てるようになるとは考えていなかったようです。しかし実際には、最終週に打てない学生を見たことはありません。東大生は頭を使う勝負で負けたくないという気持ちから手を抜かずに授業を受け、対局に臨んでいるからでしょうか。なかには負けてめげてしまう受講者もいますが、数年に1人は受講後に囲碁部に入部しています。


日本の伝統文化である囲碁
囲碁は日本の伝統文化です。発祥は中国と言われていますが、時代ごとに盛衰があり、特に清代にはやや衰退してしまいました。
日本では江戸時代に家元制度というプロ制度が出来て、技術水準が飛躍的に向上しました。その後、プロ棋士の普及活動によって、中国、韓国、台湾を中心に海外にもプロ組織が誕生していったという歴史があります。日本人であれば、能や狂言のように囲碁についても知ってほしい。それが私が考えるゼミの意図です。
私の専門はプログラミングで囲碁とは関係ありませんが、囲碁を抜きにした自分の人生は考えられないほど多大な時間を費やしてきました。小学生の時、囲碁将棋部の顧問だった担任から勧められて囲碁に触れ、中学、高校、大学と囲碁部に所属して本格的に学び、全国大会にも行きました。
囲碁の魅力は自由なことだと思います。一手一手ではなく、そのコンビネーションをどう組み上げていくかというゲームなので、自由度が高い。自分のビジョンやプランが影響しやすいゲームです。序盤に判断を迫られ続けて、それが良いか悪いか分からないまま最後まで進んでみると「ああ、そうだったのか」となり、終わる。人生のようだと思っています。向き不向きはあると思いますが、純粋にゲームとして理解できればすごく面白い。囲碁に少しでも興味があれば試してほしいです。



- 森畑先生の推しゲー
- 『囲碁であそぼ!
』(Unbalance Corporation)
「吉原由香里六段が中心になって作った囲碁の基本ルールなどを学べるアプリ。とてもよくできているので、ちょっと学んでみたいという人にお勧めです」


