駒場16号館屋上の天文台を再生 大和国から来た「思兼神」
駒場Iキャンパス北西部にある研究棟の屋上に、銀色のドームがあるのはご存じでしょうか。関係者以外には知られていないこの建物を、貴重な都会の天文台として甦らせた大学院生がいます。
趣味を大学と社会の財産につなげた試みを紹介します。
陸上部の練習でドームを捕捉
NAOKAWA Fumihiro
理学系研究科博士課程3年
駒場16号館の屋上には天文台のドームがあります。知る人ぞ知る存在ですが、少年時代にトイザらスで買ってもらった望遠鏡とともに奈良からやって来た走幅跳選手の目は、その姿をしっかり捉えていました。
「陸上運動部の練習中にグラウンドから見えるんです。調べても情報が出てこないので、使えないんだなと思いましたが」
1年の秋、たまたま東京の空に望遠鏡を向けたところ、見えたのはペルセウス座のα星ミルファク。珍しくはない星ですが、周りの星々の配置が星図の通りであることを確かめた直川さんは、新鮮な感動を得たそうです。
「街明かりが強い東京でも満天の星が広がっていました。視野を少しずつ広げていけば、原理的には全ての星が見えるぞ、と」
以来、低価格帯の望遠鏡とiPhoneカメラで技を磨いた直川さん。初期はぼやけたものしか撮れず、ウェブ検索で出てくる画像との違いを痛感しましたが、光軸を合わせる練習を重ね、撮影手法を研究し、本格的なカメラとスマホの違いを精査した結果、徐々にイメージに近い画像を得られるようになります。
「うまく撮れた画像は自分のSNSで紹介しました。そこで軽い気持ちで付記したのが「ナオカワ天文台」の名でした」
理学部物理学科から修士課程に進み、駒場16号館で行われた集中講義に参加したところ、講義のホストを務めた鈴木建先生は屋上天文台の管理者。使う自信があると伝えた院生を、鈴木先生は屋上に誘ってくれました。
「内部は結構きれいで、大きく修理しなくても動かせる状態。ラッキーと思いました」
アウトリーチ活動が大人気に
鈴木先生の協力のもと、高性能の望遠鏡を使える機会を得た直川さんは、磨いた観測&撮影の技を広く伝える活動を展開。「駒場観測所」を紹介する駒場祭企画は1000人超の来場者を記録し、学内外の授業に呼ばれて話す機会も増えました。それには憧れの先生の授業も含まれます。
「2008年のTV『情熱大陸』で国立天文台の小久保英一郎先生の姿を見て、研究者に憧れたんです。東大に来たら先生が授業をやってて。最前列に座り、サインももらいました」
宇宙マイクロ波背景放射から宇宙の成り立ちを調べ、新しい素粒子を探索してきた直川さん。博士課程修了後は、東北大学に籍を置いてスペインで研究を進める予定です。
「スポンサーと後継者の探索に奔走し、なんとか目処がたちました。都会の真ん中にある天文台は世界的に見ても貴重です。私が去っても末長く使われることを願っています」
「ナオカワ天文台・駒場観測所」
の活動報告書には「オモイカネ計画」の文字が見えます。天岩戸に籠った天照大御神を出そうと外で祭りを行った思兼神が由来。閉ざされていたドームをもう一度開けた若い知恵者の思いが重なります。



兵庫から東大に進み箱根駅伝に2度出場

二人の東大ランナーが出場した今年の第102回箱根駅伝。本多健亮選手とともに関東学生連合チームに選出されて7区を走った秋吉拓真選手は、六甲学院高校の出身です。周りの友人の多くが京大や阪大を目指すなか、箱根を走れる可能性があって勉強もできる大学はどこかと考えたことが、東大を選んだ理由の一つだったと広報誌『学内広報』1591号
で語っています。2年連続の出場となった今回は区間4位相当の好タイムを記録。4月からは大学院に進み、実業団選手として陸上を続ける予定です。
※学年・所属などは2026年3月時点のものです。


