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キャンパス散歩/富士山と山中湖にいだかれた「東京大学の別荘」富士癒しの森研究所| 広報誌「淡青」37号より

掲載日:2019年1月22日

キャンパス散歩 第32回

富士山と山中湖にいだかれた「東京大学の別荘」富士癒しの森研究所

齋藤暖生
農学生命科学研究科附属演習林富士癒しの森研究所
助教

朝焼けに染まる富士山と山中湖

 

農学生命科学研究科附属演習林のひとつ、富士癒しの森研究所(以下、研究所)は、富士山と山中湖にいだかれ、緑あふれる山梨県山中湖村にひっそりとたたずんでいます。盛夏でも木陰に涼風が吹き抜け、真冬はとびきり冷え込みますが、思いがけない絶景のプレゼントが待っています。

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カラマツ風倒木を有効活用した看板

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青空レクチャー

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夏を告げる渡り鳥・キビタキ

このような土地になぜ東京大学の施設ができたのか、その歴史をひもといてみましょう。研究所の前身「富士演習林」が設置されたのは大正14年のことでした。当時、山中湖村は貧しい寒村でしたが、別荘開発が進むなど新たな発展の道筋が見えはじめた時期でした。当時の東京帝国大学としては、大正12年の関東大震災での甚大な構内被害を受けて、東京以外での教育施設を模索していたと言われています。村としては帝大に村の発展を託し、大学としては教育施設が補完できる、と両者の思惑が一致し、ここに演習林と学生・教職員の寄宿舎(今の山中寮)が置かれることになりました。戦前の山中湖村には、総長をはじめ多くの教授が別荘をかまえていましたので、これらの施設は、東京大学の別荘という意味合いもあったように思われます。

その後、山中湖村はリゾート地、観光地として大きく発展してきました。そうした中で、富士演習林は森林の保健休養機能に研究・教育の軸足を置き、2011年より富士癒しの森研究所と名称変更しました。研究所の理念や取り組みについては、研究所ウェブサイトブログを参照していただければ幸いです。

研究所の事務所は、山中湖村役場からほど近く、カラマツの木立の中にあります。常勤職員4名の小所帯なので、「これが大学のオフィス?」と思われるほどこぢんまりとしています。事務所では暖房をすべて薪ストーブでまかなっています。林内の危険木や支障木を処理したものが薪の材料になります。これを導入してから、なんと灯油を一滴も購入していません。薪ストーブの心地よい暖かさは所員の癒しにもなっています。薪割りは、学生実習で人気のプログラムでもあります。うまく割れた時の爽快感が病みつきになるようです。見学や体験をご希望の方はぜひご相談ください。

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薪割りは学生に人気のプログラム

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秋には多くのキノコが顔を出します

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事務所裏の雪景色

研究所では事務所のほかに、富士癒しの森講義室と自炊宿舎があります。これらはもともと一つの建物で、昭和4年築の歴史があります。富士癒しの森講義室は2016年に改修してできた施設で、インターネット環境が充実しており、東京のキャンパスなどと中継して遠隔講義ができます。また、森との行き来がしやすいように全面を土間にしていますので、フィールド教育にも適しています。自炊宿舎はレトロな雰囲気をそのままに、快適に過ごせるよう改修とメンテナンスをしていますので、少人数でのフィールド調査等の拠点としてご活用ください。

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富士癒しの森講義室

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緩やかな森の小径を歩いてリフレッシュ

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事務所裏にも頻繁に姿を現すシカ

さて、皆さんにとっては、むしろ拠点となる山中寮を紹介しましょう。初代の山中寮は2008年に役割を終え、2010年にいまの山中寮が竣工しました。2017年からは、弥生キャンパスでレストランなどを営む株式会社アブルボアによる経営となり、一層と快適な空間へと、日々グレードアップを続けています。建物内には、セミナールームをはじめ、ゼミや授業ができるいくつかの部屋も用意されていますので、研究室合宿や職員研修、学外授業もできます。

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滞在の拠点となる山中寮

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湖畔広場の東屋

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林内を飛び歩き、食事にいそしむリス

山中寮周辺の森林は、皆さんがなるべく安全に、そして快適に楽しんでいただけるように研究所が管理をしています。国道を挟んで山中湖畔に広がっている森も研究所の森林です。ぜひ、湖畔まで足を伸ばしてみてください。山中湖村役場方面に向かえば、広大な芝生の湖畔広場があります。この湖畔広場にある東屋はちょっとユニークです。壁は丸太を積んだだけですが、実はこれは薪の原木、そう、薪棚でもあるのです。村役場前の交差点から寮に帰る途中には、小さな草原があります。ここは、演習林が置かれた当時の第10代総長・古在由直にちなんで古在ヶ原(こざいがはら)と呼ばれています。研究所では、年一回の草刈りをして当時の草原植生を維持しています。いまや珍しくなったナデシコなど秋の七草の姿にも会えるでしょう。

山中寮は東京大学の学生、教職員、卒業生の皆さんに開かれています。研究合宿などの休憩時に、林内散歩で疲れた頭をリフレッシュすれば、また新たなアイデアが湧いてくるかもしれません。ぜひ「東京大学の別荘」を訪れてみてはいかがでしょうか?

厳冬の湖畔に見られるフロストフラワー

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