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やわらかさと生き物をヒントに未来にジャンプするロボット博士 | 新山龍馬| UTokyo 30s No.7

掲載日:2019年11月12日

やらいでか!UTokyo サーティーズ
淡青色の若手研究者たち

約5800人いる東京大学の現役教員の中から、30代の元気な若手研究者を9人選びました。職名の内訳は、教授が1人、准教授が2人、特任准教授が1人、講師が1人、特任講師が1人、助教が3人です。彼/彼女らは日々どんな研究をしているのか、そして、どんな人となりを持っているのか。その一端を紹介します。(広報誌「淡青」39号より)
※2019年9月10日現在での30代を対象としています。

ソフトロボット学

やわらかさと生き物をヒントに未来にジャンプするロボット博士

新山龍馬
NIIYAMA, Ryuma
情報理工学系研究科講師
写真
工学部2号館にてAthlete Robotのプロトタイプと。「その後、バドミントンやバレーボールの動きも可能になりました」 写真:貝塚純一

ロボット、と聞けば、金属製の硬質な物体を想像する人が多いでしょう。ガンダム、アトム、マジンガーZといった有名ロボたちや、工場で働く産業用ロボットなども、そんな感じが濃厚です。しかし、新山先生が研究するのは、それらと一線を画す「やわらかい」ロボット。材質がソフトというだけではありません。つぶしやすい、伸びやすい、曲げやすい、バネっぽい、危なくない、かわいい......。そうした形容も似合う存在です。

「小さい頃から生き物と図画工作が大好きで、生き物のようなモノを作りたい、と思っていました。高専と大学での「ロボコン」三昧な生活を経て、歩くASIMOを見たときに、もっと元気に動くものを目指そうと決心し、動物のようにしなやかにジャンプするロボットに取りかかりました」

2004年、関節の制御は不要と見抜き、跳躍の瞬発力と着地の衝撃吸収力をゴムチューブの空気圧人工筋に託したロボットは、ダイナミックな跳躍を実現し、注目を集めます。ただ、意外な評価も待っていました。

「後ろ脚しか作らなかったせいか、世間からはカエル型だと思われたんです。自分としては、ドラえもんとは違うタイプのネコ型ロボットでしたけど」

次に取り組んだのは、走るヒト型ロボット。前作で実現した跳躍という単発の動作を、二脚を前後させて走る連続運動に高めたAthlete Robotは、やはりゴムチューブの空気圧人工筋を重用し、義足の短距離ランナーのような足元を備える下半身だけのロボットでした。

一連の研究で学位を取得した新山先生は、2010年にMITの研究員に。Soft Roboticsという新分野が黎明期を迎えていた彼の地で、四本脚で走るチーター型ロボットなどの刺激を吸収した後、2014年に東大に帰還し、研究・教育活動に励んでいます。そんな日本のSoft Robotics界の第一人者がいま感じている課題とは?

「この分野に目を向ける仲間が少ないことです。まだ正体不明の部分もあるからこそ、0から1を作る研究の醍醐味が味わえます。生き物と機械が好きな人にぜひ来てほしい」

耐久性、信頼性、出力の小ささなど、やわらかいロボットには弱点もあります。しかし、人間の隣で働くには、ベイマックスのようなやわらかさが必要です。実は、カレル・チャペックがロボットという語を創出した際、その材質は金属ではなく人造の原形質だったそう。やわらかさはロボット本来の特徴だったのかもしれません。

ロボットという触れる実体を作っていると実世界に生きている実感が湧いてくる、と語るロボット博士。扱う対象はソフトですが、博士のロボット愛はどう見ても堅固です。

Q & A
長い目で実現したいロボットは? 「生き物のように、成長したり、自己修復したり、増殖するロボット」
これはやられた、と思ったロボットは? 「ユカイ工学のQoobo。しっぽ付きのクッション型セラピーロボです」
いまの30代に感じる特徴は? 「腕一本で食っていくんだという意識が強いように感じます」
赤ちゃんを見ていて感じることは? 「できなかったことがどんどんできるようになってすごい。ロボット技術はとても追いつけない」
新山先生の著書
『やわらかいロボット』(金子書房/2018年7月刊/2300円+税)

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