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前回し蹴りを愛する若き運動科学者がパラテコンドーのメダル獲得に邁進|木下まどか|オリパラと東大。

掲載日:2020年4月21日

オリンピック・パラリンピックと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
半世紀超の時を経て再び東京で行われるオリンピック・パラリンピックには、ホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
パラテコンドーのメダル獲得に邁進

前回し蹴りを愛する若き運動科学者

木下まどか 総合文化研究科 助教 KINOSHITA Madoka
強化指定選手が練習を行う体育館にて(2019年11月撮影) 写真:井上匠

大阪大学に入学して出会ったテコンドーに打ち込み、学生日本一となり、社会人を含めた全日本選手権では2位になった木下先生。あと一歩のところでオリンピックロンドン大会出場を逃した後、進学した筑波大学大学院で主に取り組んだのは、愛する前回し蹴りの速さの定量的解析でした。

「私の蹴りは遅いと言われていたんですが、きちんと計ってみたら実は速かったんです。蹴り出しを見せない工夫やフェイントなどによって、視覚的に速いと思わせることが重要だとわかりました」

現在は、身体運動科学研究室の助教としてバイオメカニクスの研究と体育の授業を行いながら、全日本テコンドー協会のパラテコンドー委員会委員長・監督として活動しています。2020東京大会で初めて正式競技となったパラテコンドーは、上肢に欠損や障害がある選手が対象。2分×3ラウンドの中で、胴体に有効な蹴りを多く入れたほうが勝者です。R音のかけ声と同時に繰り出す蹴りが当たって響くのは、ずっしりした重低音。防具があるとはいえ、障害がある上肢に当たったら……と見る人を不安にさせる迫力があります。

「テコンドーをやっていてもパラテコンドーのことは全然知らず、2016年のアジア選手権で初めて試合を生で見て、衝撃を受けました。腕がない人がある人と同じように強烈な蹴りを繰り出す凄みが、人体の動きを研究する自分には痛いほど伝わったんです。選手としての未練もありましたが、競技の魅力を伝えていく覚悟を決めました」

とはいえ、パラテコンドーを担当する協会スタッフはごく少数。国際競技連盟や他国の情報収集、競技規則の翻訳、スポンサー探し、選手発掘、練習環境の準備、医療サポート……と、自分でなんでもこなさなければなりません。もちろん、練習で強化指定選手のスパーリング相手を務め、勝つための戦略を練るのも、委員の重要な任務です。

「テコンドーでは2012ロンドン大会から電子防具が導入され、有効な蹴りかどうかをセンサーで自動判定していますが、このシステムはけっこう癖が強く、蹴り方や蹴る場所などによって得点が左右されることがあります。体格や体力で海外勢に劣りがちな日本チームとしては、電子防具を味方にする技術を武器にしたいですね」

東京大会では、体重別に男女計6階級が設定され、各階級に12人が出場します。日本には開催国枠として3階級の出場権が与えられる予定。2019年2月にトルコで行われた世界選手権では、男子-75kg級で工藤俊介選手、女子+58kg級で太田渉子選手がそれぞれ銅メダルを獲得しており、期待は高まっています。

左の太田渉子選手は女子唯一の強化指定選手。冬季パラリンピックに3 大会連続で出場し、トリノのバイアスロンで銅、バンクーバーの距離スキーで銀を獲得しています

「今大会の結果は競技の今後に大きく影響します。3階級のどれかで絶対にメダルを取って、2024パリ大会につなげます」とは、委員としての強い願いを込めた宣言。では研究者としての展望は?

「たとえばパラテコンドーの選手は、上肢の障害を全身で補って強烈な蹴りを繰り出せるよう進化した人類だと言えます。上肢以外の面でも人には様々な進化の可能性がある。障害を持つアスリートの身体形態の変化と動作変容の関係を解明した上で、人が進化した最終形がどうなるかを知りたいと思っています」

-61kg級の阿渡健太選手(右)とスパーリングをする木下先生。電子ソックスと相手の防具が触れた際の圧力をセンサーが感知し、後ろのディスプレイにポイントが表示されています
 

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