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障害は機能を失わせるだけじゃない! パラ選手の脳研究が示す人類の可能性|中澤公孝|オリパラと東大。

掲載日:2020年6月2日

オリンピック・パラリンピックと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
半世紀超の時を経て再び東京で行われるオリンピック・パラリンピックには、ホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
障害は機能を失わせるだけじゃない!

パラ選手の脳研究が示す人類の可能性

中澤公孝
総合文化研究科
教授
NAKAZAWA Kimitaka
上肢の筋力調節の安定性(変動係数)を、脊髄完全損傷の人と様々な障害で車椅子生活をしている人、および健常者で比べた結果。最大筋力の10%の場合でも65%の場合でも、脊髄完全損傷者のほうが健常者より調節能力が高いという結果に

リハビリテーション医学の専門家である中澤先生が、パラリンピック金メダリストの脳活動を調べる機会を得たのは、2016年1月。NHKの「超人たちのパラリンピック」という番組の企画で訪れたアメリカの大学のプールでその泳ぎを見て、中澤先生は驚きました。脳性麻痺で自由に動かせない左腕が、水中では大きく動いていたのです。

「陸上では転倒の恐怖から左腕が無意識に硬直してしまいますが、転倒の危険がない水中ではそのこわばりが取れていた。本人いわく「水中では自由になれる」。このメカニズムを解明できればリハビリに応用できるかも、と思いました」

調べると、左腕の動きを司る脳領域の機能はほぼ失われていたものの、本来は別の部位を司る領域が活発に働いていました。パラアスリートの脳では、機能を補完するよう脳の別領域が発達するのではないか。そう考えた中澤先生は、走り幅跳び、走り高跳び、アーチェリーと様々なパラ競技のトップアスリートの協力を得て検証を実施。fMRI(機能的磁気共鳴画像撮影法)のデータはどれも仮説を裏付けるものでした。さらに、パワーリフティングの選手の調査でわかったことがあります。

「脊髄損傷がある選手と健常選手を比較すると、上肢の力を一定に保つ能力は前者のほうが高かったんです。下肢の機能喪失を補完するよう脳内で変化が生じ、それが日々の高度なトレーニングで促進されたと考えられます」

通常、右足を動かす際は左脳が働きますが、パラ陸上の金メダリストの場合、義足の右足を動かす際には左右両方の脳が働いていました

実はベンチプレスではすでにパラ選手の記録が健常選手を上回っており、最も遠い的に弓を当てた人類は両腕のないアーチェリー選手だとか。障害は、機能を失わせるだけでなく、発達させることもある。人類のさらなる可能性を中澤先生の研究が示唆しています。

 

 

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