日本にも広がる「海のエコラベル」とスポーツの祭典との関係と課題 | 石原広恵 | オリパラと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
半世紀超の時を経て再び東京で行われるオリンピック・パラリンピックには、ホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
水産開発学 |
スポーツの祭典との関係と課題
石原広恵 農学生命科学研究科 助教 ISHIHARA Hiroe |
環境に配慮した商品であることを示すエコラベル。カエルの絵がついたコーヒーのレインフォレスト・アライアンスや、雑誌の紙などで見かける木材のFSCが有名ですが、水産物にも「海のエコラベル」があります。英国のNPOの海洋管理協議会によるMSC認証がそれ。乱獲で資源量が減っている魚種を避けるために、持続可能性に配慮して獲った水産物であることを担保するものです。
「近年は日本でもスーパーなどが普及に力を入れており、ツナ缶やカニカマなどで青いラベルを見かけます。養殖ものが対象のASC認証もありますよ」と語るのは、国際水産開発学研究室の石原先生。しかし、水産物の持続性とオリンピックは関係があるのでしょうか。
「選手村などで提供される食べものに持続可能な調達基準を定める方針が2012ロンドン大会で初めて掲げられ、2020東京大会でも踏襲されました。オリンピックのような一大イベントの方針は社会の動向に大きく影響します」
2016リオ大会ではMSCかASCの認証を得た水産物でないと提供できない形でしたが、今大会では枠が広がったとか。日本では水産物の持続性の理解が低い、のではありません。
「欧米が主導したMSC認証は、単一魚種を大規模に獲る漁業が対象で、多魚種を小規模に獲る漁業が多い日本や途上国には適さない面があります。認証のコストが非常に高いのも問題。そうした背景から、日本独自の認証を受けた水産物も含まれたんです」
漁のやり方の違い、稚魚を放流する栽培漁業など、漁業管理に対する考え方は国により様々で、課題は多々あります。ただ、エコラベルやオリ・パラは、日本の消費者が水産物への関心を高める契機になる。石原先生はそう信じています。