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トップ選手と宇宙飛行士の議論が示唆するオリンピック・パラリンピックの光と影 | 熊谷晋一郎 | オリパラと東大。

掲載日:2020年7月7日

オリンピック・パラリンピックと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
半世紀超の時を経て再び東京で行われるオリンピック・パラリンピックには、ホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
トップ選手と宇宙飛行士の議論が示唆する

オリンピック・パラリンピックの光と影

熊谷晋一郎
先端科学技術研究センター
准教授
KUMAGAYA Shinichiro
当日は、手話による同時通訳と、音声をリアルタイムで字幕化するソフトウェア「UDトーク」による文字表示も行われました

「競技生活引退後、当時を思い出すとフラッシュバックで胸が苦しくなった」

「障害者もトップアスリートも、聖人君子であるべきという社会のレッテルを貼られている」

「宇宙飛行後、かつての自分と宇宙から帰還した自分は同じ存在なのか整理がついていない」

2018年7月、先端科学技術研究センターで行われたシンポジウム「日常への帰還 アスリートと宇宙飛行士の当事者研究」には、バスケットボール元日本代表の小磯典子さん、元パラリンピック車いすマラソン選手の花岡伸和さん、元宇宙飛行士の野口聡一さん、依存症回復支援施設ダルク女性ハウスの上岡陽江さんが登場。五輪や宇宙飛行など、極限的な状況のあとに経験した強烈な喪失感や日常生活への適応の困難さを吐露しました。

シンポジウムを企画したのは「当事者研究」が専門の熊谷晋一郎先生。当事者の素朴な経験、問題意識や「弱さの情報公開」が科学的なエビデンスになると考える熊谷先生は、さまざまな障害者や薬物依存経験者との協働を進めてきました。

オリ・パラを間近に控えたいま、過剰な五輪賛美がもたらす「能力主義の先鋭化」に警鐘を鳴らす熊谷先生。能力主義こそが障害者を苦しめてきたことをいま一度認識し、トップアスリートに対してメダル獲得などの短期的関心を寄せるのみならず、彼らに必要な「長期的かつ全人的なサポート」を考えるべきだと訴えます。

「アスリートが弱音を吐くと、いろんなところからバッシングされます。でも、オリンピックを前にした熱狂の中にあるからこそ、私たちはその弱さに触れる必要があるのではないでしょうか」

 

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