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無意識のバイアスを自覚する |ダイバーシティと東大 03|吉江尚子先生の巻

掲載日:2021年11月4日

このシリーズでは、東京大学のダイバーシティ(多様性)に関する課題や取り組みを、教員たちへのインタヴューを通して紹介していきます。 東京大学は多様な背景をもった人たちが、活き活きと活動できる場の実現を目指します。

2019年に本郷キャンパスで開催した「女子高校生のための東京大学説明会」には数百人の高校生が参加しました。

 

35 年ほど前、学部新入生約800人の中で31人しかいない女子学生の一人として東京工業大学に入学した吉江尚子先生。今でも覚えているのは、当時の先生方が「今年は31人も入った」という表現をしていたことです。その後、女性が特に少ない工学系の研究者としての道を歩み 、2003年から生産技術研究所で研究を続けてきた吉江先生は、当時と比べて女性が仕事を続けるための制度はだいぶ整ってきたと話します。

とはいえ日本の女性研究者の割合は依然低く、国際的には「日本だけおいてきぼりです」と東京大学の男女共同参画室長を2020年4月から務める吉江先生は指摘します。

内閣府の男女共同参画白書によると2020年3月31日時点で、日本の研究者に占める女性の割合は16.9パーセント。その割合は上昇傾向にありますが、スペインの40.8%、英国の38.6%、米国の33.7%など30~40パーセント台の欧米諸国に比べ大きく後れをとっています。東京大学でも状況は同じで、女性の学生や研究者を増やすことが、キャンパスの多様性を実現するうえでも大きな課題です。

なかなか女性が増えない一因として先生が指摘するのが、知らず知らずのうちに身についた無意識のバイアス(偏見)です。例えば、中学校や高校で理系科目の教師は男性が多いことが、理系は男性の方が得意だといった偏った考えに至る一因になっていないか。また、若手研究者を海外に送ることになった場合、子供がいる女性を初めから候補者からはずす、といったバイアスがかかった判断をしていないか。子供がいる男性でも同じ判断になるのか。そう先生は問いかけます。

実際にアメリカのオーケストラで団員採用にブラインド・オーディション方式を取り入れたところ、採用される女性の割合が数倍増加したといった無意識のバイアスに関する科学的根拠のある報告はたくさんあり、そのような偏見を自覚することが大切だと話します。「私もこのような話をしてますが、自分にもバイアスが残っているのではないかと疑うことが大事だと思っています」


女性の応援

ジェンダーに関する意識改革や、女性の活躍を後押しするような取り組みを行ってきたのが、東京大学が2006年4月に設置した男女共同参画室です。女子高生に対する啓発や若手女性研究者のキャリア支援、女性教員を増やすためのプログラムなど様々な取り組みを行ってきました。

吉江尚子先生写真
吉江尚子教授・男女共同参画室長  

2006年から毎年本郷キャンパスで開催している女子高校生を対象にした大学説明会は毎回盛況で、数百人の高校生が参加しています。コロナ禍のためオンラインで開催した昨年と今年の説明会には、例年の数を超える高校生が参加しました。 また、毎年主催しているUTokyo Womenという女性研究者のネットワーキングイベントでは、メーリングリストが作成され、悩みなどについても話し合うことができる場になっているようです。

保育所不足の問題にも取り組んできました。吉江先生が東大に来た20年くらい前にはキャンパス周辺に保育所が少なく、子供を入園させるのは激戦でしたが、全部局対象の4つの保育所を設置したり、民間が運営する保育所が本郷キャンパスにできたりしたことで、状況はだいぶ改善されてきたといいます。部局では女子学生のお茶会などが行われていますが、参画室でも今年度中に次世代育成部会(仮称) を立ち上げ、女子学生同士のネットワーキング支援や、男性を含めた啓発イベントなどを検討していく予定です。

「参画室の役割は、究極的には誰もが公平に尊重され、チャンスが得られる環境をつくることですが、 その過程として今は女性を応援することが必要だと考えています。直接的な女性支援はもちろんですが、そのための雰囲気作りもやらないといけないと思っています」

変化の兆し 

一方、学生と接するなかで性別による役割分業意識などの変化を感じることもある、と吉江先生は言います。コロナ禍のため実験を行うことができなかった学部の2年生に、実験する際に重要になる段取りについて学んでもらうため、料理を作る課題を出したところ、バランスの取れた定食風のセットや具だくさんのちゃんぽん麺、また生栗の皮をむいて作った栗ご飯な ど、予想以上にしっかりとした食事を作る学生が多くいたそうです。なかには普段から週に何度か家族のための料理を担当している、という男子学生もいました。現在大学生の吉江先生の息子さんも変化する若い世代の一人で、中学1年生から受験勉強で忙しくなる高校3年生になるまでの約5年間、家族3人分の お弁当を作っていたと話します。学内にはジェンダーやセクシュアルマイノリティなどに関して取り組んでいるサークルなどもあるので、そのような学生の活動を後押しすることも室長の視野に入っています。

多様性は研究にとって非常に重要だと話す吉江先生。研究室がある生産技術研究所では一つの建物に工学系の多くの先生がいて、さまざまな分野の先生方と話す機会があるので、「いろんな方と話していると、そこから新しい思いつきがポッと浮かぶんですね。これは学問分野の多様性ですが、やはり人として様々な方がいるということが大切です」と話します。

「大学は学問の場であり、特に東大は研究の場です。研究というのはオリジナリティが一番大事なんです。いろんな人がいていろんなぶつかり合いがあることからオリジナリティが生まれます。そういう意味でもやはり多様性が大事だと思います」

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