東大の宝第2回
明治新聞雑誌文庫初代主任 宮武外骨が集め分類しまくった絵葉書帖
『滑稽新聞』や『スコブル』など、過激にして愛嬌のある伝説の雑誌を明治・大正期にいくつも出版した宮武外骨。
還暦以降は、明治新聞雑誌文庫の初代主任として、全国で印刷物の収集・保存に尽力しました。
その一部として伝わるのが、絵葉書2.8万枚。反骨と頓智の編集者は、ただ集めたわけではありませんでした。



無関係だった絵葉書同士の間に力ずくで共通性を見出すのが外骨の真骨頂。
デジカメもインスタもない時代の視覚伝達ツールとして、今よりずっと普及していた絵葉書。外骨のコレクションは、一点ずつ異なる布張りのアルバムに整理された状態で保管されています。230冊余りの表紙には分類テーマを示す多種多様な題名が。「富士山」「日本三景」「瀑布」などの観光もの、「こども」「力士」「支那美人」などの人もの、「城」「橋」「病院」などの建築もの、「海軍」「陥落直前のシンガポール」「ざまみろ」などの戦争もの……。現代の小綺麗な印刷物とは異なる質感の絵葉書たちは、時代の空気を如実に映し出します。
そうした「懐かし絵葉書集」的性格以上に刮目すべきは、独自の感覚で分類された企画ものです。女性2人組の絵葉書をひたすら集めた「なかよし」、鳥居や日の丸など赤いものを集めただけの「赤」、馬と鹿の絵葉書を並べ続けた「馬鹿」、同じ絵葉書を3枚ずつ貼り続けた「三重」、髑髏や恐竜の標本や飛行機の骨組みや傘の骨や骨製道具などを並べた「骨」、1機の戦闘機・2機の戦闘機・3機の戦闘機など同じ絵柄で1・2・3を示すものを選り抜いた「一二三」、名所絵葉書の隅に写るものに着目し赤い矢印を貼った「鵜の目鷹の目」……。「相対語表」では、東郷平八郎と西郷隆盛で「東西」、男装の女性と女形で「男女」など、相対する漢字2字の語を絵葉書の組み合わせで表しています。雑多な印刷物にすぎなかったものが編集の力で新しい輝きを纏う奇跡を感じられるお宝です。









法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫
近代日本の文化遺産である新聞・雑誌の収集・保存・活用を目指し、外骨の盟友だった瀬木博尚(博報堂創業者)の寄付をもとに、1927年に創立。施設は現在予約制ですが、文庫の資料の検索データベース「明深」はいつでも利用OKです。
データ協力:株式会社寿限無