液体脂肪酸の光反応による活性酸素の生成――海洋表面やエアロゾル界面の化学の理解に貢献――研究成果
掲載日:2022年9月8日
東京大学大学院総合文化研究科
筑波大学
国立環境研究所
発表者
沼舘 直樹(東京大学 大学院総合文化研究科 附属先進科学研究機構 特任助教)
野嶋 優妃(筑波大学 数理物質系化学域 助教)
石橋 孝章(筑波大学 数理物質系化学域 教授)
江波 進一(国立環境研究所 地球システム領域 主幹研究員)
羽馬 哲也(東京大学 大学院総合文化研究科 附属先進科学研究機構/広域科学専攻 准教授)
発表のポイント
- 液体の脂肪酸の光反応から活性酸素の一種であるヒドロキシルラジカル(OH)を検出
- 液体の脂肪酸のOH生成効率は気体の脂肪酸のわずか100分の1であることを初めて解明
- 今後の地球の気候変動の予測に重要な海洋表面やエアロゾル界面の化学反応の理解に貢献
発表概要
東京大学大学院総合文化研究科附属先進科学研究機構の沼舘直樹特任助教、羽馬哲也准教授、筑波大学数理物質系化学域の野嶋優妃助教、石橋孝章教授、国立環境研究所地球システム領域の江波進一主幹研究員らは、液体の脂肪酸の一種であるノナン酸の光反応によって極めて反応性の高い活性酸素であるヒドロキシルラジカル(OH)が生成することを発見しました。また、ノナン酸からのOH生成効率は気体の脂肪酸(酢酸)と比べてわずか100分の1と極めて低いことが明らかになりました。この液体の脂肪酸(ノナン酸)の極めて低いOH生成効率は、液体界面においてノナン酸が「環状二量体」という特殊な構造をとっていることに由来していることがわかりました。
本研究によって求められた液体の脂肪酸の光反応によるOH生成効率は、今後の地球の気候変動を予測するうえで重要な海洋表面やエアロゾルの界面でおきている化学反応の理解を大きく進め、地球大気化学の理論モデルの改良に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年9月8日(米国東部夏時間)に米国の科学誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」のオンライン版に掲載されました。
発表詳細は大学院総合文化研究科のページからご覧ください。
論文情報
Naoki Numadate, Shota Saito, Yuki Nojima, Taka-aki Ishibashi, Shinichi Enami, and Tetsuya Hama, "Direct Observation and Quantitative Measurement of OH Radical Desorption During the Ultraviolet Photolysis of Liquid Nonanoic Acid," The Journal of Physical Chemistry Letters: 2022年9月8日, doi:10.1021/acs.jpclett.2c02199.
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