くっついて追いかける 細胞性粘菌が集団的に動く新たな仕組みを発見 研究成果
東京大学大学院総合文化研究科の澤井哲教授らの研究グループは、微小流路を用いた粘菌アメーバの運動の詳細な測定から、細胞間の接触によって細胞が細胞を追いかける性質、接触追従運動を明らかにしました。この追従運動に必須の接着タンパク質を特定し、これをコートしたビーズによって、追従運動が人工的に誘起できることを示しました。走化性による誘引と、接着による追従の両方のシグナルが入力されると、細胞型によって走化性と追従が排他的に選択されることから、この性質が組織中の特定の場所に、特定の細胞を配置するというパターン形成の基本にあることが示されました。
今回の結果は、粘菌アメーバの解析と操作しやすさと、微細加工技術によって開発した走化性操作用のデバイスを用いることで、細胞の集団運動と再配置を決定する運動規則を明らかにしたものです。細胞の集団運動は、胚発生、損傷治癒やガンの浸潤などでもよく知られ、走化性と接触シグナルの双方が関わっていると考えられていますが、その具体的な仕組みの多くは謎につつまれています。本成果は、そのような複雑な多因子環境の中から一般には抜き出すことが極めて困難な性質を具体的に明らかにしたもので、高等動物やヒトを含めた多細胞生物の組織形成全般に対する共通理解に将来的に寄与することが期待されます。
論文情報
Taihei Fujimori, Akihiko Nakajima, Nao Shimada, and Satoshi Sawai, "Tissue self-organization based on collective cell migration by contact activation of locomotion and chemotaxis," Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: 2019年2月19日, doi:10.1073/pnas.1815063116.