水中における分散力に及ぼす分極率の効果研究成果
掲載日:2019年12月12日
分散力はファンデルワールス力(注1)と呼ばれる分子間力の主要な引力で、原子の分極率と注目している原子や分子間の距離に依存しますが、水中における分子間相互作用において、分極率の違いがどれくらい分散力に寄与するかは、明らかにされていませんでした。東京大学大学院総合文化研究科の平岡秀一教授らは、横浜市立大学の立川仁典教授のグループおよび大阪大学の内山進教授 (生命創成探究センター兼任) のグループと共同で、歯車状分子に分極率の異なる置換基を導入することで、分子自己集合体の熱力学的安定性をもとに、水中における分極率が分散力に及ぼす効果を調べ、分極率の大きな元素が分散力を強くする効果が無視できないほど大きいことを明らかにしました。また、分極率がわずかに異なる軽水素と重水素が分散力に及ぼす効果については、これまでにさまざまな結果が報告され、はっきりしていませんでした。今回、歯車状分子にCH3基とCD3基を導入した歯車状分子を用いて比較を行なったところ、軽水素と重水素が分散力に及ぼす効果はほとんど同じであることがわかりました。
用語解説:
(注1)ファンデルワールス力:
分子間相互作用の一つで、双極子間に働く配向力、双極子と誘起双極子間に働く誘起力、誘起双極子間に働く分散力をまとめてファンデルワールス力と呼ぶ。これらの相互作用による安定化は、いずれも相互作用する対象物間の距離の六乗に反比例するため、両者が近づいた場合にのみ有意な相互作用となる。ヤモリが壁を自由に歩けるのは、ヤモリの足の裏に生えているナノレベルの毛と壁の表面の間に働くファンデルワールス力に由来し、自然界ではファンデルワールスが巧みに利用されている。
用語解説:
(注1)ファンデルワールス力:
分子間相互作用の一つで、双極子間に働く配向力、双極子と誘起双極子間に働く誘起力、誘起双極子間に働く分散力をまとめてファンデルワールス力と呼ぶ。これらの相互作用による安定化は、いずれも相互作用する対象物間の距離の六乗に反比例するため、両者が近づいた場合にのみ有意な相互作用となる。ヤモリが壁を自由に歩けるのは、ヤモリの足の裏に生えているナノレベルの毛と壁の表面の間に働くファンデルワールス力に由来し、自然界ではファンデルワールスが巧みに利用されている。
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- 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 平岡研究室 (超分子化学研究室)
- 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻相関基礎科学系
- 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部
論文情報
Yi-Yang Zhan, Qi-Chun Jiang, Kentaro Ishii, Takuya Koide, Osamu Kobayashi, Tatsuo Kojima, Satoshi Takahashi, Masanori Tachikawa, Susumu Uchiyama, Shuichi Hiraoka*, "Polarizability and isotope effects on dispersion interactions in water," Communications Chemistry: 2019年12月12日, doi:10.1038/s42004-019-0242-0.
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