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変異が入ることなく季節性インフルエンザウイルスを効率よく分離培養できる培養細胞株の開発に成功 - 細胞培養ワクチンへの応用 - 研究成果

掲載日:2019年4月30日

東京大学医科学研究所ウイルス感染分野の河岡教授らは、変異が入ることなく季節性インフルエンザウイルスを効率よく分離培養できる培養細胞株の開発に成功しました。
季節性ウイルスは性状が頻繁に変わります。性状解析には臨床検体からのウイルス分離が不可欠ですが、インフルエンザウイルスの分離に広く利用されているMDCK細胞を用いて季節性ウイルスを分離培養すると、変異が入り性状が変化してしまうという問題がありました。
本研究グループは、MDCK細胞の遺伝子を改変することで、変異が入ることなく季節性ウイルスを効率よく分離培養できる培養細胞株hCKを開発しました。季節性ウイルスの一つであるA/H3N2流行株のhCK細胞における分離と増殖効率は、MDCKとAX4(注1)細胞に比べて顕著に高いことがわかりました。hCK細胞で分離したA/H3N2流行株の遺伝子には変異がほぼ認められなかったのに対し、MDCKとAX4細胞で分離した流行株には高い頻度で変異が見つかりました。さらに、A/H3N2流行株をhCK細胞で長期間継代しても変異が入らないこともわかりました。
本研究の成果によって、ヒトの間で流行している季節性インフルエンザウイルスの性状変化をより高い精度で監視することが可能になります。さらに、hCK細胞をワクチン製造に利用することで、従来の鶏卵ワクチンに比べ高い有効性が期待できる培養細胞ワクチン(注2)をより迅速に製造供給することが可能になります。

用語解説:
(注1)AX4細胞
本研究グループが以前開発したヒト型レセプター関連遺伝子を発現するプラスミドを導入したMDCK細胞。AX4細胞はヒト型レセプターの発現量はMDCK細胞よりも高いものの、鳥型レセプターはMDCK細胞と同程度に発現している。

(注2)細胞培養ワクチン
季節性インフルエンザワクチンは発育鶏卵で増やしたウイルスから製造されているが、鶏卵で季節性ウイルスを増やすとHAに変異が入り、その抗原性が大きく変化してしまう。ワクチン製造を培養細胞で行うことにより、卵馴化による抗原変異のリスクを軽減させることは可能であるが、季節性ウイルスは培養細胞での増殖能が低いことから、細胞培養ワクチンの生産性の低さが大きな問題となっている。

論文情報

Kosuke Takada, Chiharu Kawakami, Shufang Fan, Shiho Chiba, Gongxun Zhong, Chunyang Gu, Kohei Shimizu, Sara Takasaki, Yuko Sakai-Tagawa, Tiago J. S. Lopes, Jayeeta Dutta, Zenab Khan, Divya Kriti, Harm van Bakel, Shinya Yamada, Tokiko Watanabe, Masaki Imai, Yoshihiro Kawaoka , "A humanized MDCK cell line for the efficient isolation and propagation of human influenza viruses," Nature Microbiology, doi:10.1038/s41564-019-0433-6.

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