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インフルエンザウイルスに対する新しい防御機構を解明研究成果

掲載日:2019年10月15日

DNAウイルスが細胞に感染すると細胞内のDNAセンサーがウイルスDNAを認識してインターフェロン応答を誘導することが知られています。最近の研究では、一部のRNAウイルスが細胞に感染した場合でも細胞質中にミトコンドリアDNAが放出されて、細胞内のDNAセンサーを介してインターフェロン応答が誘導されることが報告されております。しかしRNAウイルスがどのようにミトコンドリアDNAを放出させるのかは不明でした。
東京大学医科学研究所感染症国際研究センターウイルス学分野の一戸猛志准教授、森山美優大学院生(研究当時)らの研究グループは、インフルエンザウイルスの複製に必須のM2タンパク質が、ミトコンドリアDNAの放出を引き起こしていることを突き止めました。インフルエンザウイルスの感染によって細胞質中に放出されたミトコンドリアDNAは、細胞内のDNAセンサーであるcGASやDDX41とそのアダプタータンパク質であるSTINGを介してインターフェロンβを誘導していました。さらにSTINGを欠損したマウスでは、インフルエンザウイルス感染5日目の肺のウイルス量が、野生型マウスと比較して有意に増加していたことから、このSTING依存的なインターフェロン応答が生体内でインフルエンザウイルスの増殖を抑制するのに必須であることも明らかとなりました。さらにインフルエンザウイルスのNS1タンパク質はミトコンドリアDNAと結合することにより、細胞内のDNAセンサーからミトコンドリアDNAが検出されることを逃れていることも明らかとなりました。
本研究成果は、インフルエンザウイルスワクチンの効果を高めるアジュバントの開発や、インフルエンザウイルスが効率よく増殖するメカニズムの解明、インフルエンザウイルスの病原性発現機構の解明に繋がると期待されます。
本研究は、東京大学医科学研究所国際共同利用・共同研究拠点事業、日本学術振興会特別研究員事業などの一環として、また先進医薬研究振興財団および東京生化学研究会の助成を受けて得られたものです。研究成果は2019年10月11日の英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

論文情報

森山美優、小柴琢己、一戸猛志*, "Influenza A virus M2 protein triggers mitochondrial DNA-mediated antiviral immune responses," Nature Communications: 2019年10月11日, doi:10.1038/s41467-019-12632-5.

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