ワクチンに関する誤情報を信じていてもワクチンを接種する意向のある人々の特徴を解析研究成果
- 日本の一般市民約3万人を対象とした大規模アンケート調査を行い、ワクチンに関する誤情報と、新型コロナワクチン接種意向との関連を明らかにしました。
- ワクチンに関する誤情報を信じている人々の中でも、63.6%はワクチン接種を受けている、または接種意向を示しており、誤情報を信じることが必ずしも接種拒否に直結しないことが分かりました。
- インターネットやSNSからの情報はワクチン忌避と関連していた一方で、誤情報を信じている人では、医師・テレビ・新聞から情報を得ていることが接種意向と関連していました。
- 誤情報を信じていない人々では高齢であることや政府から情報を得ていることが高い接種率と関連していたのに対して、誤情報を信じている人々では若年者のほうが接種率が高く政府からの情報は接種意向に影響しないなど、誤情報を信じているかどうかによって接種意向と関連する要因が異なることが示されました。

ワクチンに関する誤情報と接種意向の複雑な関連を大規模データで解析
発表内容
東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの古瀬祐気教授と、東北大学大学院医学系研究科の田淵貴大准教授による研究チームは、ワクチンに関する誤情報がまん延するなかで、どのくらいの人々がそれを信じ、それがどれだけワクチン接種意向に影響しており、さらに誤情報を信じているかどうかでワクチン接種意向と関連する因子が異なるのかについて、大規模アンケート調査の結果を用いた統計解析によって明らかにしました。新型コロナウイルス感染症の流行に際して、日本を含め世界中でさまざまな誤情報が拡散しました。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの誤情報がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で報告されています。このような“インフォデミック”と呼ばれる誤情報の拡散が世界的に問題視されるなかで、日本では対象者の8割以上という非常に高い新型コロナウイルス感染症ワクチン接種率を短期間のうちに達成しました。
しかしながら、「どれだけのひとが誤情報を信じていたのか」「誤情報を信じることは、ワクチン忌避とどの程度関連しているのか」「誤情報を信じているひとにおいてワクチン接種意向と関連する要因は、誤情報を信じていないひとと異なっているのか」についてはよくわかっていませんでした。
そこで、本研究チームは、「日本における新型コロナウイルス感染症問題および社会全般に関する健康格差評価研究(JACSIS、2021年9~10月に15歳から80歳の約3万人を対象にオンラインで実施されたアンケート調査)」のデータを用いて、ワクチンに関する誤情報とワクチン接種意向との関連を解析しました。
インターネット調査による参加者の偏りを補正した集計結果(図1)から、「ワクチンの有効性や安全性に関するデータは捏造されている」といったワクチンに関する何らかの誤情報を信じているひとの割合は、ワクチン既接種者で8.1%、ワクチン拒否者で36.6%でした。つまり、拒否者において誤情報を信じている割合は高いものの、ワクチンを拒否するひとが必ずしも誤情報を信じているわけではありませんでした。(ワクチン拒否者において誤情報を信じていない割合は、63.4%。)同様に、少なくとも1つの誤情報を信じている人々においても、接種意向のあるひとは63.6%を占めていました。ただし、信じている誤情報の数が多くなるにつれて、接種意向のあるひとの割合が低下していく傾向がみられました。

図1:新型コロナウイルス感染症のワクチン接種意向と誤情報を信じているひとの割合
つぎに、「ワクチン忌避」と「信じている誤情報の多さ」に共通している因子を探索したところ、若年・低収入・インターネットやSNSからの情報収集が同定されました。
最後に、ワクチン接種意向に関連する因子について、「誤情報を信じていないひと」と「誤情報を信じているひと」のあいだでどのような共通項あるいは相違があるのかを解析しました(図2)。その結果、医師からの情報は両者において接種意向と関連しており、低収入であることは両者においてワクチン忌避と関連していました。
一方で、「誤情報を信じていないひと」では高齢者ほどワクチン接種意向が高かったのですが、「誤情報を信じているひと」ではその傾向がみられず、むしろ若年(20歳代)で接種意向が高くなりました。政府からの情報は、「誤情報を信じていないひと」でのみ接種意向との関連がみられ、「誤情報を信じているひと」では有意な関連が検出されませんでした。インターネットやSNSからの情報は、「誤情報を信じているひと」でも「信じていないひと」でもワクチン忌避と関連していましたが、その関連の強さは「誤情報を信じているひと」においてより強くなっていました。同様に、テレビや新聞からの情報は、どちらのグループにおいてもワクチン接種意向があることと関連しており、「誤情報を信じているひと」においてより強い関連がみられました。

図2:誤情報を信じているひと、信じていないひとそれぞれにおける、ワクチン接種意向と関連する因子
今回の研究によって、ワクチンに関する誤情報を信じていることが、必ずしもワクチン接種拒否に直結するわけではないことが明らかになりました。また、誤情報を信じているひとと信じていないひとでは、接種意向に関連する要因が異なる可能性が示されました。これらの成果は、将来の感染症危機において、誤情報への対策だけでなく、対象者が何を信頼しているのかやどのような情報に触れる環境にあるのかに応じた公衆衛生コミュニケーションを設計するうえで重要な知見となります。
本研究は、2026年7月31日に国際科学誌「Frontiers in Public Health」(オンライン版)にて公表されました。
発表者
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター古瀬 祐気 教授
研究開始当時:長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
東北大学 大学院医学系研究科
田淵 貴大 准教授
研究開始当時:大阪国際がんセンター がん対策センター 部長補佐
研究助成
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)先進的研究開発戦略センター(SCARDA)世界トップレベル研究開発拠点の形成事業「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群 東京フラッグシップキャンパス(東京大学新世代感染症センター)・長崎シナジーキャンパス(出島特区)」(JP223fa627001、JP223fa627004)の一環として行われました。また、科研費(JP21H04856、JP23K09693)の支援により実施されました。論文情報
Yuki Furuse, Takahiro Tabuchi, "Vaccine-related misinformation and attitude toward COVID-19 vaccination in Japan," Frontiers in Public Health: 2026年7月31日, doi:10.3389/fpubh.2026.1805589.
論文へのリンク (掲載誌
)
お問い合わせ先
<研究内容について>
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター
古瀬 祐気(ふるせ ゆうき) 教授
https://www.furuse-lab.info/
<機関窓口>
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター(広報)
https://www.utopia.u-tokyo.ac.jp/contact

