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教育と学習の倫理

現在の慣行は、先進自由主義的統治を永続させるものである

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総合文化研究科・教養学部
2018/05/25

© 2018 Claire Cheong and Bregham Dalgliesh.学生に要求される倫理的訓練に関する教師モデルとインストラクター・モデルを比較することにより、1990年代から大学に浸透してきた教育と学習における変化が強調されます。

教育・学習の倫理的慣行
学生に要求される倫理的訓練に関する教師モデルとインストラクター・モデルを比較することにより、1990年代から大学に浸透してきた教育と学習における変化が強調されます。
© 2018 Claire Cheong and Bregham Dalgliesh.

東京大学大学院総合文化研究科のブレガム・ダルグリーシュ(Bregham Dalgliesh)准教授は、大学における教育・学習慣行の倫理が、授業に浸透している先進自由主義的統治を具現化していると論じています。本研究は、教育慣行に対する哲学的批評を展開することにより、近代の技術社会における人間の条件の理解に関する幅広い問題への取組みに役立つと期待されます。

本研究は、今日の大学の基礎には、批判的教育学の目的を問う、先進自由主義の急務があると主張しています。歴史的に批判的教育学は、権力と、その権力からの解放のための手段とみなされる知識とを並置することにより、批判的市民を育てることに努めてきました。

本研究は、権力から知識を分離できる可能性を否定しています。フランスの哲学者ミシェル・フーコーが「真理の体制」と名付けた、権力と知識との合流の結果が倫理であると説明しています。壇上の賢人としての従来の教師が、寄り添う導き手として振る舞うインストラクターに取って代わられるアクティブ・ラーニング(能動学習)に焦点を置く最近の教育・学習慣行は、学生と教育者が先進自由主義的統治に基づき期待される行動法への解決策に過ぎないことを示しています。学生の行動におけるこのような変化の無害性は、その倫理的重要性により強調されています。フーコーによる倫理と道徳との区別に従うと、倫理の4つの要素が、いわゆる教育・学習体制上で識別され、配置されています。この要素とは、何に基づき行動するか(知性)という倫理的実体、どのように行動するか(個性化)という倫理的仕事、誰が行動しなければならないか(自律学習者)という主観化様態、そしてなぜ私たちが行動しなければならないのか(進取の気性に富んだ主体)という倫理規範です。

大学教員が現在持っている、かつての教師としてのアイデンティティ(同一性)と、インストラクターとしての現在の役割との間の迷いは、同時に教育・学習体制への抵抗の形態ともなる、学生に対する挑発的な倫理的関係を通じ授業自体で解決が可能であると、本研究は示唆します。さらに、より大局的には、不注意にヘゲモニー(覇権)を創りだす大学側の共犯、そして個性化のために、より大きな道徳的問題に目をつぶらされてしまう批判的ではない学生を創りだすことによる排除について警告し、このことがいかにグローバリゼーション(グローバル化)を取り込むのかについて注意するよう提案しています。もし無批判なやり方でなされれば、大学は、批判的で独立した探究と、批判的な市民の育成という歴史的な使命と対立するコーポレート・アイデンティティ(企業のもつ特性)を帯びるリスクを負うことになります。

「国際化とは今日、高等教育における決まり文句であるが、そのグローバリゼーションとの関係は、通常見過ごされているか、良くとも同意語として扱われています」とダルグリーシュ准教授は話します。「授業における倫理的な自己形成と、世界的な先進自由主義の文脈とを結びつけると、こうしている間に私たちが冒しているリスクが明らかになります」と続けます。

論文情報

Bregham Dalgliesh, "The governmentality of teaching and learning: acquiescence or resistance?", Critical Studies in Teaching and Learning Online Edition: 2017/06/26 (Japan time), doi:10.14426/cristal.v5i1.105.
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教養学部英語コース(PEAK)

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