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乳癌幹細胞が生体内に棲みつく仕組みを発見 癌の根治へ期待

掲載日:2012年4月12日

これまで、癌は、無秩序に増殖する均質な細胞からできていると考えられていました。しかし、ここ数年の間に、癌にも幹細胞があって、これが元になって癌組織ができているということがわかってきており、癌研究も、大きな転換点を迎えています。従来、抗がん剤や放射線治療により、一旦癌が治ったように見えても、癌は再発して、不幸な転帰を取るため、不治の病でありました。しかし、最新の研究により、従来の抗がん剤や放射線治療は、癌幹細胞を死滅させることができていなかった、ということがわかってきました。つまり、癌幹細胞を死滅させることができれば、癌は治る病気になるのです。

HRG‐ErbB‐PI3 kinase‐NFkBパスウエイは、乳癌幹細胞の自己複製能を制御するとともに、様々な細胞外分泌蛋白質を産生し、癌幹細胞ニッチ(微小環境)を熟成させる。© Noriko Gotoh

HRG‐ErbB‐PI3 kinase‐NFkBパスウエイは、乳癌幹細胞の自己複製能を制御するとともに、様々な細胞外分泌蛋白質を産生し、癌幹細胞ニッチ(微小環境)を熟成させる。© Noriko Gotoh

東京大学医科学研究所/システム生命医科学技術開発共同研究ユニットの後藤准教授らの研究グループは、癌幹細胞が維持される仕組みを明らかにしました。この仕組みを壊してやれば、癌は治ります。また、癌幹細胞は、自分自身で、いろいろな蛋白質を生産して、血中に流すこともわかりました。これを血中で測ることによって、癌幹細胞の存在を知ることができます。つまり、癌を早期に発見したり、症状がでないうちに再発を知ることができるのです。

本研究をきっかけにして、癌の基礎研究は、そろそろ峠を越すものと思われます。今後は、この研究成果をもとに、良い薬や診断ツールを開発し、根本的に癌を治すという方向へと大きくシフトしていくでしょう。

なお、本研究は、コニカミノルタテクノロジーセンターとの共同研究により得られた成果です。

解説記事

論文情報

Kunihiko Hinohara, Seiichiro Kobayashi, Hajime Kanauchi, Seiichiro Shimizu, Kotoe Nishioka, Ei-ichi Tsuji, Kei-ichiro Tada, Kazuo Umezawa,Masaki Mori, Toshihisa Ogawa, Jun-ichiro Inoue, Arinobu Tojo, and Noriko Goto,
“ErbB receptor tyrosine kinase/NF-κB signaling controls mammosphere formation in human breast cancer”,
PNAS April 5, 2012 doi: 10.1073/pnas.1113271109.
論文へのリンク

リンク

医科学研究所

システム生命科学技術開発共同研究ユニット

分子発癌分野

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