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Research News

クローン病の新たな治療法に光

腸間膜脂肪が慢性腸炎の発祥や悪化に関与する仕組みを一部解明

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医科学研究所
2018/03/08

©  2018 Yu Takahashi.研究グループは、(上) 培養皿上で組織化させた腸の組織様構造体(オルガノイド)より構築した腸管上皮細胞と(下)胚性線維芽細胞より分化させた成熟脂肪細胞を共培養すると、お互いの細胞において炎症反応が惹起されることを明らかにした。炎症反応の最初の引き金を引くのは成熟脂肪細胞側であることが考えられ、続いて、炎症反応を起こした腸管上皮細胞から分泌される液性因子により脂肪細胞に炎症反応が誘導される。このサイクルはポジティブフィードバック(増幅)で進行すると考えられる。

腸管上皮細胞と成熟脂肪細胞との共培養
研究グループは、(上) 培養皿上で組織化させた腸の組織様構造体(オルガノイド)より構築した腸管上皮細胞と(下)胚性線維芽細胞より分化させた成熟脂肪細胞を共培養すると、お互いの細胞において炎症反応が惹起されることを明らかにした。炎症反応の最初の引き金を引くのは成熟脂肪細胞側であることが考えられ、続いて、炎症反応を起こした腸管上皮細胞から分泌される液性因子により脂肪細胞に炎症反応が誘導される。このサイクルはポジティブフィードバック(増幅)で進行すると考えられる。
© 2018 Yu Takahashi.

東京大学医科学研究所の佐藤慎太郎客員准教授と清野宏教授と日本たばこ産業株式会社の高橋裕研究員らの共同研究グループは、独自に作製した腸管上皮細胞を成熟脂肪細胞と共培養すると、お互いの細胞において炎症反応が惹起されることを明らかにしました。本研究成果により,腸間膜に存在する脂肪細胞が直接的に上皮における炎症反応の誘導に関与すること、さらに脂肪細胞の性質を改善するアプローチが新たなクローン病治療法に結びつく可能性が提示されました。

炎症性腸疾患の一つであるクローン病患者において、腸管上皮が傷害される潰瘍部分の近くに高頻度で腸間膜脂肪組織の増大が観察されることは、80年以上前から報告されています。さらに、増大した腸間膜脂肪組織では、炎症反応が生じていることも知られています。しかし、腸間膜脂肪と腸炎のつながりを示す証拠は非常に乏しく、腸間膜脂肪の増大、炎症反応が、腸管上皮の炎症にどのようにつながるのかの具体的な検証はこれまでにほとんど行われてきませんでした。

今回研究グループは、腸に存在する様々な細胞から成る生理的な腸管上皮細胞を独自に作製しました。この細胞と成熟した脂肪細胞を共培養すると、互いの細胞において炎症誘導性の遺伝子の発現が誘導され、逆に抗炎症性の遺伝子の発現は抑制されることを見出しました。さらに、様々な阻害剤を用いた検討を行ったところ、この炎症反応は、遺伝子の転写を制御するタンパク質(転写因子)NF-κBやSTAT3といったシグナルの経路を介して起こっていることが明らかとなりました。

本研究により、脂肪細胞からの炎症シグナルが腸管上皮細胞に直接的に伝達され得ることが明らかとなりました。腸間膜脂肪の異常はクローン病の発症時より起こると考えられており、本研究で得られた知見は、脂肪細胞で生じる炎症反応がクローン病発症ないしは増悪化の一因となり得ることを示しています。また、腸間膜脂肪の性質を改善するようなアプローチが、新たなクローン病の治療法につながる可能性も示されました。

「脂肪細胞からの炎症シグナルを特異的に抑えることで上皮の炎症が改善できれば、画期的な新薬やワクチンの開発につながる。今後、本研究のように、細胞間、組織間の相互作用に着目した病因の解明や治療法の開発に結びつけるような試みはますます盛んになるだろう。本研究は、新たな研究領域を切り拓いたという意味でも大きな意義を持つ」と清野教授は話します。

論文情報

Yu Takahashi, Shintaro Sato, Yosuke Kurashima, Chen-Yi Lai, Makoto Otsu, Mikio Hayashi, Takayuki Yamaguchi, Hiroshi Kiyono, "Reciprocal inflammatory signaling between intestinal epithelial cells and adipocytes in the absence of immune cells", EBioMedicine Online Edition: 2017/08/02 (Japan time), doi:10.1016/j.ebiom.2017.07.027.
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