ARTICLES

English

印刷

誰でも、どこでも、高分子を精密に合成できる新手法 高分子材料の製造プロセス簡素化とリサイクルに向けて

掲載日:2015年3月5日

© 2015 Takuzo Aida

© 2015 Takuzo Aida

身の回りにあるプラスチックやゴムなどの素材は、高分子(ポリマー)という物質が絡み合ってできています。高分子は小分子が鎖や数珠のようにつながった長大な分子で、求める長さのものを精密に合成できます。しかし、このためには、高度な技術やそれを実現する設備が必要です。

高分子とは対照に、化学反応を必要とせずに合成できる「超分子ポリマー」があります。超分子ポリマーは、水素結合などの小分子間に働く物理的な「引力」を利用して分子同士がつながるため、常温・常圧下で原料を混ぜるだけでできます。しかし、従来の高分子のように鎖の長さを自由に変えたり、小分子をつなぐ順番を制御したりできませんでした。

東京大学大学院工学系研究科の相田卓三教授の研究グループは、誰でも、どこでも「望んだ数の小分子をつなぐ」ことのできる「超分子ポリマー」の合成方法を開発しました。小分子が持つ2つの連結点をあらかじめ分子内で連結することで環状にして、勝手に他の分子と連結できなくし、そこに、連結反応を促す小分子(連結反応開始剤)を混ぜると、鎖状の2量体ができました。さらに、これが3量体、4量体と連結反応を繰り返し鎖の長いポリマーに成長しました。この合成方法を用いて、例えば、連結反応開始剤に対して1,000倍の環状の小分子を加えれば、1,000の鎖をもつ高分子が得られます。つまり、環状分子の数を制御すれば希望する鎖の長さの高分子が作れるのです。

この「超分子ポリマー」の合成法は、さまざまな設備や、高度な技術と経験の伝承が必要であった精密な高分子合成法を、試験管さえあれば誰でもできる身近なものにします。また、小分子同士の結合は強くないため、簡単な操作で原料まで分解でき、環境への負荷をかけない合成法でもあります。超分子ポリマーを用いて、従来の高分子ポリマーに近い性質を実現しようとする今後の研究の進展に期待がかかります。

プレスリリース

論文情報

Jiheong Kang, Daigo Miyajima, Tadashi Mori, Yoshihisa Inoue, Yoshimitsu Itoh, Takuzo Aida, "A Rational Strategy for the Realization of Chain-Growth Supramolecular Polymerization", Science Online Edition: 2015/2/6 (Japan time), doi:10.1126/science.aaa4249.
論文へのリンク(掲載誌

関連リンク

大学院工学系研究科

大学院工学系研究科化学生命工学専攻

大学院工学系研究科化学生命工学専攻 相田研究室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる