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Research News

n型強磁性半導体からなるスピン江崎ダイオードの作製と新機能

スピン依存バンドエンジニアリングによる磁気伝導度の制御

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工学系研究科・工学部
2018/06/04

©  2018 田中-大矢研究室III-V族半導体InAsに磁性不純物鉄(Fe)を添加したn型強磁性半導体(In,Fe)Asとp型InAsからなるスピン江崎ダイオード(図の左)において、バイアス電圧によって電流に寄与する電子を伝導帯から不純物帯に切り替え(図の右)、電流の磁場応答の強度と符号を大きく変化させた。

スピン江崎ダイオードにおける電流の磁場応答の制御
III-V族半導体InAsに磁性不純物鉄(Fe)を添加したn型強磁性半導体(In,Fe)Asとp型InAsからなるスピン江崎ダイオード(図の左)において、バイアス電圧によって電流に寄与する電子を伝導帯から不純物帯に切り替え(図の右)、電流の磁場応答の強度と符号を大きく変化させた。
© 2018 田中-大矢研究室

東京大学大学院工学系研究科のレ・デゥック・アイン助教と田中雅明教授、東京工業大学工学院のファム・ナム・ハイ准教授の研究グループは、高速電子デバイスに使われるIII-V族化合物半導体(InAs)に鉄(Fe)原子を添加した混晶半導体(In,Fe)Asを用いて、n型強磁性半導体(In,Fe)Asとp型InAsのpn接合から成るスピン江崎ダイオードと呼ばれる新しい江崎ダイオード(トンネル効果という量子力学現象を使用する半導体)を作製し、その磁気伝導度(外部磁場に対する電流の応答)の大きさと符号をバイアス電圧(動作を最適にするためにあらかじめ与える電圧)によって制御することに成功しました。本研究成果は、従来の半導体デバイスにスピン自由度を加えることによって新たな機能をもたらすことを示したものです。

従来の非磁性半導体に磁性原子を大量に(およそ1%以上)添加することによって強磁性体になる半導体は強磁性半導体(FMS: Ferromagnetic Semiconductor)と呼ばれています。FMS は既存の半導体技術との親和性が高いため、従来の半導体デバイスに「スピン」自由度を加えることにより不揮発性、低消費電力、再構成可能性、量子情報などの新機能をもたらす可能性があり、盛んに研究がなされ注目されています。

研究グループが添加する磁性原子として選んだFeの特徴は、III-V族半導体中で中性になる(ドナにもアクセプタにもならない)、局在スピンとキャリアの起源が分離可能である点です。本研究で用いたn型(In,Fe)Asでは、母体となる半導体(InAs)の電子伝導現象を担う伝導帯の下端エネルギーの直下にFeの電子状態が形成され、このFeの電子状態は、伝導帯とは対称性とスピン偏極が全く異なり、通常ほとんど電子の伝導に寄与しない不純物帯を形成することがわかっています。

本研究では、n型強磁性半導体(In,Fe)Asとp型InAsのpn接合から成るスピン江崎ダイオード構造を作製しその電子伝導特性を詳細に調べたところ、印加するバイアス電圧を変えることによって伝導に寄与する電子のエネルギー帯を伝導帯から不純物帯に切り替えることができ、電流の磁場応答(磁気コンダクタンス)の強度と符号を大きく変化させることに成功しました。また、本研究で得られた磁気コンダクタンスのバイアス電圧依存性から、強磁性半導体の電子状態(エネルギーバンド構造、スピン偏極など)を調べることができ、物質の電子状態の研究に新しい手法を与えた点も重要な成果です。本研究成果は、今後の新材料探索とスピンデバイス応用に向けて大きな進展をもたらすものと期待されます。

「強磁性半導体(FMS)の研究は90年代から世界中に盛んに行われてきましたが、未解決の問題が多く、その中で重要課題の1つは、FMSのスピン状態、バンド構造の解明です」と田中教授は語ります。「本研究では、スピン江崎ダイオードを作製することによってFMSのスピン状態とバンド構造を調べる手法を提供でき、さらにそのバンド構造を利用することによって磁場によって電流を変化させる磁気電流効果を大きく制御できることを見事に示しました。今後の新材料の開発と理解、デバイス応用につながる重要な成果です」と続けます。

また、実験を担当したアイン助教は「Feを添加した強磁性半導体の研究は他の強磁性半導体材料に比べて新しく未開拓の点が多いのですが、従来の材料では実現できない様々な物性や機能を示しています。今回の研究で初めて、n型強磁性半導体を含むスピン江崎ダイオードという新しい半導体デバイスで新機能を実現できたので、大変うれしいです。さらに物性機能の研究を進め、近い将来、実用的なデバイス応用まで発展させたいと思います」と話しています。

論文情報

Le Duc Anh, Pham Nam Hai and Masaaki Tanaka, "Electrical tuning of the band alignment and magnetoconductance in an n-type ferromagnetic semiconductor (In,Fe)As-based spin-Esaki diode", Applied Physics Letters Online Edition: 2018 /03/07 (Japan time), doi:10.1063/1.5010020.
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大学院工学系研究科 電気系工学専攻 田中研究室

"A change in sign brings a sign of change for spin-current devices", AIP Scilight: 2018/03/07 (Japan time), doi: 10.1063/1.5027513

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