
書籍名
戦後の住宅政策と民間貸家・家主 くいつぶし型経営の福祉社会学
判型など
240ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2026年2月
ISBN コード
978-4-8188-2699-1
出版社
日本経済評論社
出版社URL
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本書では、戦後直後から1970年代までを中心として、東京圏 (東京都を中心とした1都3県) を対象に、民間賃貸住宅経営 (くいつぶし型経営) から住宅問題および住宅政策のあり方を理解しようとした。結論としては、くいつぶし型経営という特殊な経営の在り方が、住宅問題に対する独自の役割を果たす一方、住宅政策の拡充を阻み、現在もその影響が残っている、というものである。
では、なぜくいつぶし型経営に着目する必要があるのだろうか。そこでまず、日本の住宅政策の現状を、国際比較の観点から一瞥しておきたい。昔も今も、国際比較をしてみれば、日本の住宅政策 (予算、公営住宅、公的住宅手当など) が手厚いとは言い難い。したがって、ストレートに問いを立てるならば、「なぜ住宅政策が拡充しないのか」を問うべきであろう。事実、その問いへの回答は先行研究が与えている。曰く官庁セクショナリズムのせいである、曰く研究機関やディシプリンの連携不足のせいである、曰く大衆的同意の弱さのせいである、曰く企業中心社会のせいである、などである。
他方、こうした問いに対して、筆者は違和感を持ち続けてもいた。筆者は大学院で社会学を専攻していたが、社会学ではよく、当たり前を問い直す、という。そこで私は、問いを立て直してみた。「なぜ住宅政策が拡充しないのか」、ではなく、「住宅政策が拡充しなくてもやってこれたのはなぜか」、という問いを立てた。この問いが本書のオリジナリティである。
そしてこの問いに対する答えは、社会学でいう機能主義的な理解とでも呼ぶべきものである。くいつぶし型経営が住宅不足を「解決」することによって、住宅問題の社会問題化・政策的対応を抑制する機能を果たした (住宅政策の機能的代替としてのくいつぶし型経営)。それだけではない。安かろう悪かろうの木造賃貸アパートが大量に供給されることは、住居費負担および住宅の質という政策的基準の創設を阻むとともに、借家人側および家主側の圧力団体化とそれによる政策的要求の実現をも阻んだのである (政策の基準および圧力団体の不在)。これら諸機能の解明が社会的・政策的意義である。
今でも、日本に住居費負担の政策的目安はない。住宅の質についても充分だとは言い難い (つい最近、最低居住面積水準が撤廃された)。住宅問題の解決の仕方は、現在の住宅費高騰における住宅政策の在り方に、潜在的に影響を及ぼし続けている。住宅政策の理念は重要である。しかしそれと同じか、あるいはそれ以上に、理念を現実のものとさせない現実的基盤もまた、重要である。現在、住宅政策が拡充するきざしはない。格差と貧困はとどまらず、住宅価格は上昇し続けている。くいつぶし型経営を検討する意義は、いまだなくなっていない。
(紹介文執筆者: 佐藤 和宏 / 2026年9月25日)
本の目次
はじめに
第一節 住宅政策はなぜ拡充しなかったのか
第二節 先行研究の整理と本書の位置づけ
第三節 本書の独自性と構成
第一章 戦後復興における民間賃貸セクターの縮小・再編――複合的くいつぶし型経営
はじめに
第一節 複合的くいつぶしの特徴
第二節 借家のくいつぶしの現象
第三節 借家人の変容
第四節 経営状況と家主の関係
第五節 住宅問題の変容と処理
小 括
第二章 過渡期的・先駆的経営としての一九五〇年代――くいつぶし型経営からの離脱?
はじめに
第一節 住宅市場の環境変容
第二節 住宅市場の変容
第三節 民間賃貸セクターにおける木賃アパートの諸特徴
第四節 借家人からみたアパートの特徴
第五節 貸家経営の条件と家主の特徴
小 括
第三章 高度経済成長と木賃アパートの広がり――くいつぶし型経営と住宅難の再生産
はじめに
第一節 住宅事情の変化と住宅政策の対応
第二節 住宅難と木賃アパートの存立メカニズム
第三節 民間賃貸セクターはどのように変わったのか
第四節 借家人はどのように変わったか
第五節 家主はどのように変わったのか
小 括
第四章 民間賃貸セクターにおける建て替えの困難――くいつぶし型経営の隘路
はじめに
第一節 人口・世帯の変化と住宅政策の転換の可能性
第二節 住宅問題の転換と関連する諸対応
第三節 民間住宅市場の変容
第四節 木賃・鉄賃アパートにおける借家人比較
第五節 木賃・鉄賃アパートにおける家主比較
小 括
終 章 くいつぶし型経営の意義と総括
第一節 各章で明らかになった知見
第二節 くいつぶし型経営のたそがれ
第三節 住宅政策研究への貢献
第四節 福祉社会学へのインプリケーション
第五節 残された課題
参考文献
付 記
図表一覧
索 引
関連情報
受賞:
第6回東京大学而立賞受賞 (東京大学 2025年)
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
書籍紹介:
原田玄機「新刊紹介」 (『生活協同組合研究』608巻p.55 2026年9月5日)
https://ccij.jp/book/kenkyu_20260828_01.html
https://doi.org/10.57538/consumercoopstudies.608.0_55



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