
書籍名
エレクトクラシー・エピストクラシー・ロトクラシー 代表制デモクラシーを再考する
判型など
358ページ、A5判、上製
言語
日本語
発行年月日
2025年12月15日
ISBN コード
978-4-8158-1217-1
出版社
名古屋大学出版会
出版社URL
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日本では、数年ごとに実施される選挙を通じて、18歳以上の有権者の投票により、立法府の代表者が選出される。こうした選挙に基づく代表制は一般に「代表制デモクラシー」と呼ばれ、当然の制度として受け取られている。しかしながら、こうした「代表制デモクラシー」は、果たして最善の立法システムと言えるだろうか。共同体の将来を左右する法や政策を決定する上で、最も適切な方法なのだろうか。
本書の目的は、私たちが慣れ親しんできた選挙による代表制、すなわち「エレクトクラシー」を、二つの代替的な立法システムと比較検討することで、より望ましい立法システムの可能性を理論的に探究することである。その二つとは、第一に、(知識テストの合格者に選挙権を限定するなどの仕方で)知識・能力に基づいて参政権を不平等に分配する「エピストクラシー」であり、第二に、立法府の代表者を一般市民からの無作為抽出によって選出する「ロトクラシー」である。エピストクラシーは、有権者の政治的無知が問題視される中で、より知識に基づく立法システムとして、またロトクラシーは、選挙された政治家の主張が民意と乖離することが問題視される中で、より民意を反映した立法システムとして、それぞれエレクトクラシーに代わる有望な代替的立法システムとして注目を集めている。
これら三つの立法システムの評価基準として、本書では「非道具的価値」と「道具的価値」という二つの観点を採用する。非道具的価値とは、立法システムそれ自体の価値であり、その手続きにおいて、人々が対等者として扱われているか、自己統治を享受できているかといった点が問われる。他方、道具的価値とは、立法システムの結果に関わる価値であり、その制度がより良い法や政策を生み出しているかどうかが判断基準となる。
本書を通じて明らかになるのは、現在主流とされるエレクトクラシーのあり方は、必ずしも最善でも理想的でもないということである。「代表制デモクラシー」という美名のもと、エレクトクラシーは、非道具的価値の観点で非常に高く評価されてきた。しかしながら、代表者と市民のあいだには顕著な権力の不平等が存在しており、有権者が行使しうる政治的影響力は、「自己統治」と呼ぶには程遠い。また、道具的価値の観点から見ると、選挙の構造的特性が富裕層に有利な意思決定を生み出してきたという事実は、特にロトクラシーとの比較において看過できない問題である。さらに、知識や能力の不足を理由として子どもを参政権から排除することを許容すれば、同様の理由によって大人を参政権から排除するエピストクラシーへの批判との規範的な整合性を損なう。以上を踏まえると、最善の立法システムを実現するには、エレクトクラシー単体では不十分であり、代替案の要素を組み込んだ混合システムが要請される。
(紹介文執筆者: 山口 晃人 / 2026年7月17日)
本の目次
1 ロトクラシーとエピストクラシー
2 定 義
3 評価基準
4 本書の独自性
5 先行研究の問題点
6 本書の射程
7 本書の構成と概要
第I部 非道具的価値
第I部序論
第1章 対等者としての処遇
はじめに
1 〈対等者としての処遇〉は追求すべき価値か
2 代表制の問題
3 エピストクラシー
4 ロトクラシー
おわりに
第2章 自己統治
はじめに
1 自己統治論
2 自己統治論に対する批判
3 エレクトクラシーにおける〈自己統治〉
4 エレクトクラシーに対する批判
5 一致の合理的期待
おわりに
第I部結論
第II部 道具的価値
第II部序論
第3章 エピストクラシー
はじめに
1 理想的条件
2 非理想的条件
おわりに
第3章補論 エピストクラシーの諸構想と参政権くじ引き制
はじめに
a エピストクラシーの諸構想
b 参政権くじ引き制
おわりに
第4章 ロトクラシー
はじめに
1 理想的条件
2 非理想的条件
おわりに
第4章補論 政 党
はじめに
a 立法過程
b 選挙過程
おわりに
第5章 子どもの参政権と代理投票
はじめに
1 子どもの参政権
2 代理投票
3 代理投票の制度設計
おわりに
第II部結論
第III部 混合システム
第III部序論
第6章 制度構想
はじめに
1 制度改善のポイント
2 制度構想の提示
3 制度構想の評価 —— 道具的価値
4 制度構想の評価 —— 非道具的価値
おわりに
第6章補論 その他の構想との比較
はじめに
a ロトクラシー構想
b ハイブリッド二院制構想
おわりに
第7章 批判への応答
はじめに
1 熟議の批判
2 答責性の批判
3 少数派保護の批判
4 義務化の批判
5 同意の批判
6 盲従批判と集合的自己統治
おわりに
第III部結論
終 章
1 展 望
2 本書の貢献
参考文献
あとがき
索 引
関連情報
第6回東京大学而立賞受賞 (東京大学 2025年)
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
著者インタビュー:
連載 デモクラシーズ: 情報の洪水にのまれる政治をどう防ぐか くじ引き民主主義の可能性 (『毎日新聞デジタル』 2025年7月17日)
https://mainichi.jp/articles/20250715/k00/00m/010/100000c
インタビュー 第22回: ゆがんだ国会を「くじ引き」でまともに 政治哲学者が問う選挙の欠陥 (『毎日新聞デジタル』 2024年1月26日)
https://www.asahi.com/articles/ASS1S2Q5ZS1RUTIL018.html
「選挙に」ではなく「くじに」当選 政治家がランダムに選ばれる社会を考える (『東京大学新聞』第2947 (11/3) 号 2020年11月11日)
https://www.todaishimbun.org/lotcracy20201111/
書評:
吉良貴之 評 (『みすず 読書アンケート 2025』 2026年2月20日)
https://magazine.msz.co.jp/recommend/09842/
齋藤純一 評「(ひもとく)民意と統治 選挙後の民主政治を続ける」 (『朝日新聞』 2026年2月14日)
https://book.asahi.com/article/16355810
https://www.asahi.com/articles/DA3S16404265.html
藻谷浩介 評 (『毎日新聞』 2026年1月17日)
https://mainichi.jp/articles/20260117/ddm/015/070/018000c
吉田徹 評「特集「2025年回顧総特集」」 (『週刊読書人』第3619号 2025年12月19日号)
https://dokushojin.net/news/1211/
研究日誌: 岡﨑晴輝 (九州大学大学院法学研究員教授) 評 (岡﨑晴輝研究室ホームページ 2025年12月9日)
http://aktiv3.sblo.jp/article/191565369.html
関連記事:
ガクモンのめ: 議員は抽選で選べるか?――代表制デモクラシーを政治哲学の観点から問い直す【山口晃人】 (『せかいしそう』2023年11月10日)
https://web.sekaishisosha.jp/posts/7583
くじ引きで国会議員に? 「ロトクラシー」というオルタナティブ 選挙は市民の声を反映できているか (『講談社現代新書ホームページ』 2020年12月19日)
https://gendai.media/articles/-/78111
Yamaguchi A, Hata M, Inoue A. How can we accept ‘our’ decisions?: an experimental study on lottocracy, epistocracy, and electoral democracy. Japanese Journal of Political Science. 2024;25(3):123-139.
https://doi.org/10.1017/S1468109924000094
イベント:
フューチャー・デザインワークショップ
【FDW97】代表制デモクラシーは最善の立法システムか? (キヤノングローバル戦略研究所 2026年4月22日)
https://cigs.canon/future-design/20260409_9815.html


