東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

印象派の絵画の表紙

書籍名

Japan’s Love for Impressionism, from Monet to Renoir

著者名

Atsushi Miura, Beate Marks-Hanssen, Marianne Mathieu, Masato Satsuma, Hiroshi Kumazawa, Detmar Westhoff

判型など

256ページ、24.5x28.0cm、ハードカバー

言語

英語

発行年月日

2015年10月

ISBN コード

978-3-7913-5496-5

出版社

Prestel

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このカタログの基になったのは展覧会「日本が愛した印象派、モネからルノワールへ」(2015年10月8日– 2016年2月21日、ドイツ連邦共和国芸術展示館、ボン) である。その主たる目的は、専門家を除けば欧米で未知の領域に留まっている、日本に所蔵されるフランス近代絵画の優品を展示することであった。バルビゾン派、印象派からポスト印象派、ナビ派まで、すなわちコロー、ミレー、クールベ、マネ、モネからルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、ボナールまで、具体的な作品を通してその多彩な流れを示すことができた。そして、本展にはさらに二つの重要な柱が組み込まれている。
 
ひとつは、このような日本のコレクションがどのように形成されたのかという歴史的な経緯を紹介することである。日本が大きな経済発展を遂げた19世紀末から両大戦間の時期に、パリで活躍した画商の林忠正、さらに松方幸次郎や大原孫三郎など日本の実業家たちは、欧米のコレクターたちと肩を並べる素晴らしいコレクションを作り上げた。第2次世界大戦後にも経済の発展と歩調を合わせるように、いくつもの重要なコレクションが形成されていった。展覧会では林、松方、大原を始めとする主要なコレクター、さらには重要なフランス近代美術コレクションを所蔵する美術館 (国立西洋美術館、大原美術館、ブリヂストン美術館、ひろしま美術館、東京富士美術館、ポーラ美術館、吉野石膏コレクションなど) を紹介することによって、日本におけるフランス近代絵画コレクションの形成史を示したのである。
 
もうひとつの大きなテーマは、日本美術とフランス美術との交流史にほかならない。19世紀半ばの日本の開国以来、浮世絵版画がヨーロッパに渡り、フランスの印象派、ポスト印象派の画家たちに衝撃を与え、彼らの芸術の大きな養分となったことは、いわゆるジャポニスム(日本趣味)としてよく知られている。他方、ジャポニスムにやや遅れて日本にも西洋絵画が根づき始める。特に19世紀末から20世紀初めにフランスに留学した黒田清輝とその弟子たちが、フランス絵画の外光派アカデミスムや印象派の様式を我が国に移植したのである。浮世絵版画から印象派へ、印象派から日本近代洋画へという双方向的な日仏美術交流の歴史もまた本展で強調した要素であり、日本でこれほど印象派絵画が好まれるのは、両国の美意識のつながりが濃厚であるのも大きな理由だと説明できる。全体の展示構成も、浮世絵版画、印象派絵画、日本近代洋画の美的な共鳴、交感を明確にするように配慮した。
 
したがって、この展覧会が画期的なのは、ヨーロッパで知られていない日本の優れたフランス近代絵画コレクションを紹介するに留まらない。印象派絵画がジャポニスムや日本近代洋画と濃密な関係を持つことによって、日本の西洋絵画コレクションがより豊かに形成されたことを示すことにもある。それこそが本展の歴史的な意義にほかならない。なお、この展覧会とカタログは、ドイツ共和国美術展示館と日本側スタッフ (私自身ゲスト・キュレーターとして参加した) との共同作業の成果であり、国際的な学術交流の実践でもあったことを付け加えておく。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 三浦 篤 / 2016)

本の目次

Contents
Rein Wolfs: Foreword
Shuji Takashina: Words of Greetings
Atsushi Miura: Japan and the Impressionists: The Collections of French Paintings and the Interrelation between French and Japanese Art
Beate Marks-Hanssen: Japan Encounters Europe
Beate Marks-Hanssen: Tadamasa Hayashi
Beate Marks-Hanssen: The First Japanese Artits in Paris
Beate Marks-Hanssen: Claude Monet and His Collection of Japanese Woodcuts
Beate Marks-Hanssen: The Barbizon School and Courbet
Beate Marks-Hanssen: …first a colour and a light… Julius Meier-Graefe, Richard Muther and the Reception of Impressionism in Germany and Japan
Beate Marks-Hanssen: Manet and Impressionism
Marianne Mathieu: Tadamasa Hayashi, Kojiro Matsukata and the Western Collectors and Collections
Beate Marks-Hanssen: Renoir, Cezanne and Rodin
Masato Satsuma: The Reception of Western Oil Painting in Modern Japan: The Example of Tokyo School of Fine Arts
Beate Marks-Hanssen: Post-Impressionism and the Nabis
Beate Marks-Hanssen: Japanese Artists of the ‘Western Style’
The Collections in Japan
Map
Hiroshi Kumazawa: Private and Corporate Collections and Public Museums: Impressionist Collections in Japans Following the Second World War
Hideyuki Yanagisawa: The Ohara Museum of Art
Akiko Mabuchi: The Kojiro Matsukata Collection and the National Museum of Western Art
Tsuyoshi Kaizuka: Shojiro Ishibashi and the Bridgestone Museum of Art
Yoshiyuki Furutani: Hiroshima Museum of Art (A Public Interest Incorporated Foundation)
Akira Gokita: The Tokyo Fuji Art Museum and its Impressionist Collection
Yoko Iwasaki: The Pola Museum of Art and the Collector Tsuneshi Suzuki
Nanako Sato: The Yoshino Gypsum Collection – A Century of Dreams
Detmar Westhoff: Why the Japanese Love Impressionism
Appendix:
Catalogue of Exhibited Works
Short Biographies of the Artists Featured in the Catalogue
Museums and Collections with Western and Modern Japanese Art in Japan
Bibliography
Index of Names
 
[日本語訳]
ライン・ヴォルフス《緒言》
高階秀璽《ご挨拶》
三浦 篤《日本と印象派 -- フランス近代絵画コレクションと日仏美術交流 --》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《日本とヨーロッパの出会い》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《林 忠正》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《パリにいた日本人芸術家の第一世代》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《クロード・モネと彼の浮世絵版画コレクション》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《バルビゾン派とクールベ》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《まず色彩と光があった: ユリウス・マイヤー=グレーフェ、リヒャルト・ムーテル、そして日独における印象派受容》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《マネと印象派》
マリアンヌ・マチュー《林 忠正、松方幸次郎と西洋の美術収集家とコレクション》
薩摩雅登《近代日本における西洋絵画受容: 東京美術学校の事例》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《ポスト印象派とナビ派》
ベアーテ・マルクス=ハンセン《日本人の西洋画家》
日本の各コレクション
地図
熊澤 弘《個人および企業コレクションと公立美術館: 第二次世界大戦後の日本における印象派コレクション》
柳沢秀行《大原美術館》
馬渕明子《松方幸次郎のコレクションと国立西洋美術館》
貝塚 健《石橋正二郎とブリヂストン美術館》
古谷可由《公益財団法人 ひろしま美術館》
五木田 聡《東京富士美術館と印象派コレクション》
岩崎余帆子《ポーラ美術館と鈴木常司》
佐藤菜々子《吉野石膏コレクション—夢の世紀》
デトマー・ヴェストホフ《なぜ日本人は印象派を愛するのか》
補遺
出品作品一覧
出品作家解説
西洋および日本近代美術所蔵美術館およびコレクション
参考文献
人名索引
 

関連情報

ドイツ連邦共和国芸術展示館のホームページ
http://www.bundeskunsthalle.de/en/exhibitions/from-monet-to-renoir.html
 
この英語版カタログは "The Financial Times best books of 2015" のArt部門の一冊に選出された。 
https://www.ft.com/content/dbbe9112-940a-11e5-b190-291e94b77c8f

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