東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

女性の姿を描いた洋画の表紙

書籍名

まなざしのレッスン (2) 西洋近現代絵画

著者名

三浦 篤

判型など

288ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2015年3月25日

ISBN コード

978-4-13-083031-7

出版社

東京大学出版会

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まなざしのレッスン (2) 西洋近現代絵画

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文化・教養を身につけるために西洋美術を知りたい、西洋絵画を本格的に鑑賞してみたい、そんな願いを持つ学生が意外に多いことを実感している。東大生もまだまだ捨てたものではない。ただし、問題は入り口、きっかけだ。美術館、展覧会に行くのは私には敷居が高くて、などと思っている学生が結構多いのも事実である。
 
東大前期課程での講義を基にした本書『まなざしのレッスン (2) 西洋近現代絵画』は『まなざしのレッスン (1) 西洋伝統絵画』の続編であるが、私はこの2冊を一貫した目標に基づいて執筆した。すなわち、西洋絵画に興味はあるが、これまで無縁であった人を、実際に作品を見て理解できる、楽しめるという段階にまで一気にもっていくのだ。この2冊を読んで絵の見方を身につけ、あとは美術館、展覧会などで実践すれば、その目標は十分達成できると請け合おう。それはなぜなのか。
 
本書がよくあるタイプの概説書や啓蒙書と決定的に違うのは、単に西洋絵画に関する知識を植え付けようとしていない点にある。むしろ、西洋絵画を見るために必要な個々人の「まなざし」を作ること、鑑賞に有効な構え、コツ、ポイントなどを肉体化することに集中している点が特徴なのである。比喩的に言えば、絵との対話の仕方を伝授しているのだが、それを身につけるのは決して難しいことではない。
 
なぜ2冊あるのかと言えば、西洋絵画の歴史を18世紀末で大きく二分しているからだ。18世紀以前の歴史画中心の伝統的な絵画を見るためには、さまざまな約束事や体系、言わばゲームの規則を知ることが大事。しかし、本書が扱う19世紀以降の近現代とは、その約束事や体系、つまりゲームの規則が崩壊して、「規則などなくてもよい」という新しいパラダイム (枠組み) に移行する時代なので、伝統的な西洋絵画の崩壊の過程や新しい価値観の出現を知ることが肝要なのである。
 
ところが、通常の画集などでは、この時代の絵画を過去からの延長として、19世紀のロマン主義、印象派、ポスト印象派、20世紀の抽象絵画、ポップ・アートなど、重要な運動や潮流のバトンリレーのようにたどっていくことが多い。しかし、本書の構成は違う。単純に時代順に語るのではなく、「主題とテーマ」「造形と技法」「受容と枠組み」という三つの柱、言い換えれば、「何が描かれるようになったのか」「どのように描かれるようになったのか」「どのように価値づけられるようになったのか」という問題意識で、近現代絵画史を展望していくのである。具体的な作品分析も交えながら。
 
本書では視覚芸術の機能、芸術と社会の関係、新しいメディアの出現など、激動の時代の美術を考えるための多彩なテーマにも触れ、難解と思われがちな現代絵画への接近方法も述べている。ぜひとも本書を手に西洋絵画を見て、今という時代を感じ、考えていただきたい。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 三浦 篤 / 2018)

本の目次

はじめに
  第1章  西洋近現代絵画をいかに見るか
 
第1部  主題とテーマ
  第2章 物語表現の変容
  第3章 現実の表象I  近代都市の諸相
  第4章 現実の表象II  人間と自然の新たな表現
  第5章 幻視の世界
 
第2部 造形と技法
  第6章  空間と平面
  第7章  色彩と筆触
  第8章  抽象と超越性
  第9章  引用と遊戯性
 
第3部 受容と枠組み
  第10章  制度と運動
  第11章  異文化の受容、逸脱の系譜
  第12章  絵画という枠組み