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アジア・アフリカの街並みの写真

書籍名

アジア・アフリカの都市コミュニティ 「手づくりのまち」の形成論理とエンパワメントの実践

著者名

城所 哲夫、 志摩 憲寿、柏原 梢 (編著)

判型など

208ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2015年12月25日

ISBN コード

978-4-7615-2613-9

出版社

学芸出版社

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アジア・アフリカの都市コミュニティ

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世界の都市人口が、歴史上はじめて50%を超え、歴史的に都市化が進んできた経済的に豊かな国に限らず、アジアでもアフリカでも、世界のどこの国においても都市に住まうことが普通の光景になりつつある。ただし、これらの人々の住む都市は、長らく都市のデファクト・スタンダードとなってきた欧州や北米の都市とはまったく様相を異にした都市である。現在、アジアや中南米、さらには、アフリカにおいて立ち現れつつある新しい都市とは、一言で言えば、テクノロジーの粋をこらして計画的に開発された超高層ビル群の立ち並ぶファッショナブルな地区と、その足元に広がる非計画的で雑多なまちという、全く異なる論理のもとで形成される二つの地平からなる都市であり、まさにこのような都市が21世紀の都市の新たなデファクト・スタンダードとなりつつあると言ってよい。
 
現代都市の二つの地平の一方を占める非計画的で雑多なまちは、近代的な土地制度や都市計画制度というフォーマルなプロセスには必ずしも当てはまらないかたちで生まれつつある。その意味で、このようなまちは、インフォーマル市街地と呼ばれるが、本書は、東アジア・東南アジア4か国、南アジア3か国、アフリカ2か国のインフォーマル市街地の最前線における長期にわたるフィールドワークの成果についての報告である。フィールドワークの内容は、対象とする地域の社会状況や研究関心の置きどころに応じて、多様な議論を包含するものであるが、そこに通奏低音として流れる共通の問題意識は、「現代都市を構成する一方の地平であるインフォーマル市街地におけるまちづくりのあり方こそが、これからの都市のデファクト・スタンダードを作り上げていく」というものである。現代都市のもう一方の地平である計画的な超高層ビル群からなる地区は、グローバリゼーションの進む世界におけるグローバル・スタンダードのもとで、ニューヨークや東京、あるいは、つい最近まで世界から閉ざされていたミャンマーのヤンゴンに至るまで、ますます共通した文法のもとでつくられた個性のない空間 (あるいはグローバル化という世界共通のアイコンによってつくられた空間) を生み出しつつある。それに対して、本書で詳述されているアジア・アフリカ都市のフィールドワークが示すものは、人々が不断に手を加えつつ生み出してきたインフォーマル市街地こそが、生き生きとした都市の個性を育む母体となる可能性を秘めているのではないかという実感であり、その意味で、本書の内容は、これからの都市の未来を明確に指し示す指針となっている。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 城所 哲夫 / 2018)

本の目次

序  章 アジア・アフリカのまちづくり:論点
 
第1部 東アジア・東南アジア
第1章  インドネシア 「手づくり」の居住環境改善事業とその展開
第2章  タイ 都市コミュニティをめぐる組織化と地域化
第3章  フィリピン セブ市における土地取得事業導入過程
第4章  中国 城中村現象とその住環境整備
 
第2部 南アジア
第5章  バングラデシュ ダッカにおけるスラムの空間・社会・文化
第6章  インド ムンバイ・ダラービーの社会生態空間
第7章  パキスタン 「在る」ものを活かした住環境改善
 
第3部 アフリカ
第8章  ザンビア ルサカのインフォーマル市街地における空間マネジメント
第9章  ケニア ナイロビにおけるノンフォーマルスクールの空間生成プロセスと近隣との関係
 
結  章 「手づくりのまち」の論理
 

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