
書籍名
〈まちなか〉から始まる地方創生 クリエイティブ・タウンの理論と実践
判型など
208ページ、A5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2018年3月15日
ISBN コード
9784000248266
出版社
岩波書店
出版社URL
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空き店舗だらけのシャッター通りは、いまや、地方都市の風景のひとつとなっている。郊外に、ショッピングやフードコート、シネコンから生活サービス施設まで備え、日々新しいイベントを提供してくれる便利で魅力的な巨大ショッピングモールが立地しているのだから、わざわざ古ぼけたかつての中心商店街に、駐車場料金を払ってまで出かけて来る人がいないのも当然かもしれない。
一方、東日本大震災による津波災害により壊滅的な被害を受けた石巻の中心商店街では、誰でも気軽に入って共同作業のできるコワーキングスペース、お店のなかにつくられたコミュニティカフェ、子どもたちが主体的に活動する場としてまちなかにできた子どもセンター等、今までの中心市街地の概念とは違う新しいまちが生まれつつある予感がある。まだ始まったばかりの、この新しいまちづくりの胎動は全国の地方都市のまちづくりを根本から変えていく力を秘めているのではないだろうか。
実際には、このような新しいまちづくりの胎動は、いわばゼロからの出発を強いられている被災地のまちなかほど顕著ではないにしろ、何の変哲もない全国の地方都市のシャッター通りのそこかしこで始まりつつある現象である。この新しい力とは何なのか、どの方向に向かうべきなのか。これらの問いこそが、本書がこれから繙こうとすることである。
この新しい力から生み出されるまちの姿を、本書では、クリエイティブタウンと名付けた。結論から言えば、クリエイティブタウンとは、「多様なアイデアをもつ人々が、まちなかに集住し、あるいはまちなかで交流し、そのことを通じて、周辺地域も含め、その地域におけるライフスタイルをベースとした新たな産業の持続的展開をプロデュースするまち」ということになる。
本書は、上記のようなテーマのもとで、前半部ではクリエイティブタウンの理論とその背景となる日本の地方都市の状況について解説し、後半部では、デザイン (歴史的な都市構造を受けつつコンパクトな都市をつくる)、ビジネス (ライフスタイルの誇りを産業に、ライフスタイルをベースとする地域の発展)、スキーム (コミュニティに根ざし、事業と体制を組み立てる) の3つのアプローチを柱とする観点からクリエイティブタウンの実現手法を詳述するとともに、高松丸亀町、川越一番町、長浜、石巻等における豊富な実践事例を紹介し、クリエイティブタウンを実現する上での実践的な指針を提供している。まさに、地方都市の再生に関わる人、関心を持つ人の必携の書である。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 城所 哲夫 / 2018)
本の目次
序章 なぜ,クリエイティブ・タウンか
I クリエイティブ・タウンの理論
クリエイティブ・タウンの理論 [1]
第1章 クリエイティブ・タウンとはなにか
1 クリエイティブ・タウンとライフスタイル産業革命
2 アイデアをいかに実現するか
3 アイデアの実現とクリエイティブ・タウン
クリエイティブ・タウンの理論 [2]
第2章 クリエイティブ・タウンをとりまく状況
1 地域経済活性化の理論
2 求められる国の制度と仕組みの転換
3 クリエイティブ・タウンの胎動
II クリエイティブ・タウンの実践
クリエイティブ・タウンの実践 [1]
第3章 3ポイント・アプローチ
1 「デザイン」「ビジネス」「スキーム」
2 高松丸亀町商店街
3 長浜
クリエイティブ・タウンの実践 [2]
第4章 ビジネス:ライフスタイルのブランド化
1 まちのシューレ
2 まちじゅうまるごとホテル
3 商店街の再定義
4 「ライフスタイルのブランド化」のためになすべきこと
クリエイティブ・タウンの実践 [3]
第5章 デザイン
1 ふたつの都市像
2 タワー型――ル・コルビュジエの描いた都市像
3 歴史的な都市に町並み型の条件を探る
4 実現の方法
クリエイティブ・タウンの実践 [4]
第6章 スキーム
1 スキーム組み立てのイメージ――高松丸亀町の場合
2 まちづくり会社
3 再開発制度を新しい考え方で活用
4 制度のあり方
クリエイティブ・タウンの実践 [5]
第7章 事例研究:石巻クリエイティブ・タウン
1 目標と方針を考える
2 ライフスタイルのブランド化
3 デザイン――歴史的な都市構造を踏まえ,ひとつひとつの敷地単位が町並みをつくる
4 スキーム
終 章 クリエイティブ・タウンの推進
注
参考文献