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アジアの街並みの写真

書籍名

グローバル時代のアジア都市論 持続可能な都市をどうつくるか

著者名

松行 美帆子、志摩 憲寿、 城所 哲夫 (編著)

判型など

220ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年1月

ISBN コード

978-4-621-30019-0

出版社

丸善出版

出版社URL

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グローバル時代のアジア都市論

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現代のアジア都市は、急速な経済発展と都市化の進展のもとで大きく変貌を遂げつつあり、どのように持続可能な都市をつくるかが大きな課題となっている。持続可能な都市とは、すなわち、経済的発展、環境保全、社会的公正の3つがバランスした状態であり、本書のテーマは、アジアをはじめとする新興国・途上国の都市が持続可能な都市へといたるロードマップを指し示すことにある。
 
多くのアジア都市は、いままで、経済発展を重視した都市開発を重視してきた。今後、持続可能な都市への発展プロセスを考えると、環境保全と社会的公正の両立を図るエコ・シティ・アプローチや経済成長と環境保全の両立を図るグリーン成長アプローチ等のアプローチを、時々の経済的、社会的、政治的状況のもとで取りつつ、らせん状に、経済的発展、環境保全、社会的公正の3つがバランスした持続可能な都市へと発展していくプロセスを辿ることになると考えられる。
 
アジア都市の多くは、大気汚染や交通混雑などの環境問題に加えて、グローバル経済のもとでの経済的脆弱性の拡大、社会格差の増大、気候変動のもとでの甚大な自然災害の頻発化、紛争の拡大といった、まさに山積する都市問題を抱えており、今までの経済発展重視アプローチは限界が見えてきている。そのような中で、現在は、多くの都市で経済発展と貧困緩和等の社会的公正の両立を図る包括的成長 (Inclusive Growth) アプローチがとられつつあるが、今後は、さらに、環境保全も中心的な政策の一つとなっていくことになる。
 
上記のようなテーマのもとで、本書は、アジアのとくに開発途上国、新興国における都市について、都市が成り立つ仕組みを解説し、そしてアジア都市の抱える課題への対処策についての知見を提供する。 前半部ではアジア都市の成長ダイナミズムと持続可能性をテーマとして、アジアの都市を理解するための社会発展の理論と社会制度・ガバナンスの態様と市民社会の台頭、都市計画制度とその運用、都市整備の仕組み、都市の歴史をまとめ、後半部では、持続可能な都市づくりへの処方箋をテーマに、都市が抱える各課題を、気候変動と環境問題、防災、都市貧困層への支援、ファイナンス、都市分野の国際協力等の多岐にわたる観点から解説し、その対応策について検討しており、アジア都市の都市づくりに実際に携わる人のみならず、広く関心を持つ人の必携の書といえる。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 城所 哲夫 / 2018)

本の目次

第1章 都市の成長
第2章 経済成長と都市整備
第3章 都市計画
第4章 都市のガバナンスと制度
第5章 市民社会とNGO
第6章 都市形成史
第7章 都市環境
第8章 都市と交通
第9章 都市貧困層の居住形成と政策・支援
第10章 都市と防災
第11章 都市開発とファイナンス
第12章 国際協力
 

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