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早乙女踊り保存クラブの生徒たちの写真

書籍名

社会的障害の経済理論・実証研究 ふくしま高校生社会活動コンテスト報告書

著者名

松井 彰彦

言語

日本語

発行年月日

2018年3月28日

ISBN コード

978-4-9906226-5-7

出版社

Economy and Disability Press

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本報告書は私たちが感動と元気をもらった福島県の高校生の様々な社会活動の記録です。
 
初回は2014年でした。浜通りから3校、中通りから2校と1団体、会津から1校2グループの計8つのグループが参加し、ボランティア、復興への取り組み、国際交流、まちおこし、製品開発など様々な社会貢献活動に関する報告がなされました。
 
この年、コンテストの最優秀賞に輝いたのが、会津農林高校の取り組み、「早乙女踊り保存クラブ」です。後継者不足から一時中断していた会津坂下(ばんげ)町の伝統行事を同校の女子生徒が継承します。9人ほどで始まった活動は、7年後、全校の女子生徒の3割強に当たる36人の参加を得る一大行事に発展しました。笛やうたいの指導も、高齢化や多忙でなかなか来られない大人の講師に代わって、経験者である上級生が下級生を教える方式に切り替えました。こうして名実ともに高校生による活動が確立されたのです。
 
2015年、第2回のコンテストも印象的でした。素晴らしい報告が相次ぐなか、最優秀賞に輝いたのは、いわき市にある平養護学校のボランティア部でした。発表者の高校1年生、三浦宰くんが献血への呼びかけや募金活動を紹介しました。「私たち障害者はいつも支援を『される側』でした。ボランティアはしていただくもの、そういう意識がありました。しかし、先輩たちが始めたこの活動に加わって、支援を『する側』にもなれるんだと思いました」。
 
私たちはひとりで生きることはできません。どんなに強い人間でも赤子のときはか弱く、慈しみ育てる人の愛情なしに成長していくことは不可能です。そこに健常者や障害者の区別はありません。
 
そして、高校生は子供から大人に変容する過渡期にあります。それまでの受動的な立場から少しでも自発的に何かをしたい、自立したい、社会に貢献したいと思い始める時期、すなわち経済社会への入口に立っています。ただし、自立とはひとりで生きることではありません。多くの人と支え合いながら生きていくことです。
 
大人になれば、相手に与え相手から与えられるという関係を至る所で構築しなくてはならないからです。平養護学校ボランティア部に、支えられながら支えるという高校生の社会活動の原点を見ました。
 
今、コンテストは福島県の方々に引き継がれ、高校生による素晴らしい取組みが次々に紹介されています。本報告書が私が高校生からいただいた感動と元気をあなたとわかち合う一助になれば、とてもうれしく思います。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 松井 彰彦 / 2018)

本の目次

はじめに(松井彰彦)
論文
福島県における高校生の社会貢献活動と地域に根差したサービス・ラーニングの可能性(前川直哉)
記録
2014ふくしま高校生社会活動コンテスト
REASE公開講座「福島の高校生が、日本を元気にする」
2015ふくしま高校生社会活動コンテスト
REASE公開講座「福島の高校生が、日本を元気にする2」
2016ふくしま高校生社会活動コンテスト
REASE公開講座「福島の高校生が、日本を元気にする3」
(参考)平成29年度 ふくしま高校生社会貢献活動コンテスト
REASE公開講座「ふくしま高校生社会活動発表会」
 

関連情報

イベント:
東京大学REASE公開講座「ふくしま高校生社会活動発表会」 (2018年1月20日 東京大学本郷キャンパス)
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/img/180120A4.pdf
 

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