
書籍名
デューイ著作集4 哲学4 (全8巻) 確実性の探求 知識と行為の関係についての研究
判型など
264ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2018年9月26日
ISBN コード
978-4-13-014204-5
出版社
東京大学出版会
出版社URL
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哲学者としてのデューイの構想の枠組みをよく覗わせる、1929年にエディンバラ大学でおこなわれた講義をもとに刊行された The Quest for Certainty, A Study of the Relation of Knowledge and Action の全訳である。
アメリカの教育学者・哲学者として広く知られているデューイ (John Dewey, 1859-1952) は、ほぼ同時代を生きたドイツの哲学者、ハイデガー(Martin Heidegger, 1889-1976)と、好対照をなしているように見えるだろう。デューイはハイデガーよりも30歳年長であるが、二人は60年以上にわたり、同時代を生きている。どちらも、世界に広く知られているが、どちらも、相手に言及したことが一度もない。「プラグマティズム」と「存在論」という、水と油のような二人の思想の違いを考えれば、得心しそうになるが、おそらく、ことはそう単純ではないのだろう。
ともあれ、日本の教育学において、デューイの思想は、ハイデガーの思想に比べれば、はるかに大きな理論的主柱をなしていた。あの「大正新教育」を理論的に支えてきた思想の主柱の一つは、デューイのそれであったし、第二次大戦後から現代にいたるまで、日本の教育の大きな転換期においては、さまざまな人が、デューイの思想に触発されつつ、説得力あふれる教育論を展開してきた。有名な『デモクラシーと教育』『学校と社会』などは、今も教育学の基本文献である。
にもかかわらず、デューイの教育思想は、「問題解決に向かう学習」「民主主義を実現する教育」といわれるような、わかりやすいものではないし、その哲学思想も、「プラグマティズム」という言葉に収まるような、一意的なものではない。そこには、たとえば、ハイデガーが批判しながらも、迎え入れた形而上学的思考がふくまれている。その一つは、一言で言えば、全体性なきつながりあいと形容されるだろう。それは、人びとが、一人ひとりその固有性を体現しつつも、他者とも、他の生きものとも動態的につながりあうことである。デューイの教育思想も哲学思想も、いまだにその全貌がわからない、そして私たちを大切なものに向けて触発しつづける、豊かさそのものである。
本書を通巻第4巻とする『デューイ著作集』は、当面、第一期として全8巻が刊行されるが、第二期についても、同じ8巻で構成される。この著作集が、今後のデューイ研究、また哲学思想・教育思想の研究の礎になることを、心から願っている。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 田中 智志 / 2019)
本の目次
解 題 『確実性の探求』によせて(田中智志)
第1章 危険の回避
第2章 不変なものへの哲学の探求
第3章 権威の対立
第4章 変容の探究と制御の探求
第5章 作業する概念
第6章 観念の自由な働き
第7章 知的権威の座
第8章 知性の自然化
第9章 方法の卓越性
第10章 善の構成
第11章 コペルニクス的転回
訳 注
訳者解説 (加賀裕郎)
関連情報
教育思想史学会編『近代教育フォーラム』第28号, p. 174.