本書は東京大学大学院教育学研究科の大学経営・政策コースの専任教員を中心として、コースの教育に携わってきた研究者たちの専門的知見を結集させて執筆したテキストです。大学や高等教育に関するテキストはこれまでに何冊か刊行されてきましたが、「大学経営・政策」を銘打ったものは本書が日本で初めてとなります。
大学経営・政策コースは修士課程・博士課程を持っており、大学や高等教育に携わる専門的知識を持った人材育成を行っています。大学院生として、学部卒業生、大学教職員、経営管理職、政策担当者、シンクタンク・金融・メディア等の民間企業関係者など、幅広い立場の人たちが集い、それぞれの立場を活かして互いに刺激し合いながら学んでいます。本書は、本コースや他大学の高等教育プログラムで勉学を志す人たち、また、様々な立場から大学経営・政策に関心を持つ人たちにその基本となるエッセンスを学んでもらうことを目的に編集しました。
大学は、21世紀型の知識基盤社会を形成する上で、その中核的役割を担う機関であり、社会的役割は多岐にわたります。大学の三大使命は、教育・研究・社会貢献であると言われてきました。これからもこの基本的な使命は変わりませんが、それぞれを高い水準で実現するとともに、各ミッションの間の相乗効果をいかに高めていくかが現代の大学にとって重要な課題となっています。各大学を効果的に経営すること、また、大学をマクロに動かすための政策を立案することは、各大学の生き残りを掛けたり、日本の国際的プレゼンスを上げたりする上でも重要ですが、それらの目的を越えて、より自由で豊かな社会を構築する上で非常に重要な課題となっているのです。
こうした課題について考えていく上では、大学を多様な観点から理解する視座を獲得することが重要です。そのために、本書は大学を取り巻く様々なトピックを扱う全12章からなっています。第1章~第3章では現代の大学が置かれた状況を概括した後、大学の制度・政策の歴史的展開と現代的特質を紹介しています。続く第4章~第6章では組織、人事、財務という大学経営の屋台骨となる基本構造に焦点を当て、第7章~第9章では学生募集や教育・研究という機能面からそのマネジメントのあり様を概説しています。これらを受けて第10章と第11章では、国際的な視野から大学経営・政策の変遷や潮流を整理した後、第12章で大学の経営・政策の将来を展望しています。
多くの方々が本書を手に取り、我々とともに大学の未来について考えてもらえれば、著者一同にとって望外の喜びです。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 福留 東土 / 2021)
本の目次
第2章 大学の理念・制度・歴史 福留東土
第3章 高等教育政策の特質 矢野眞和
第4章 大学の組織 両角亜希子
第5章 大学の財務管理 丸山文裕
第6章 大学の人事管理 山本 清
第7章 学生の募集戦略 小林雅之
第8章 教育のマネジメント 吉田 文
第9章 研究のマネジメント 小林信一
第10章 大学の国際化 米澤彰純
第11章 大学のガバナンス 大森不二雄
第12章 大学経営・政策の展望 金子元久
関連情報
小方直幸 評 (『IDE』2019年4月号)
https://www.toshindo-pub.com/%e3%80%90%e6%9b%b8%e8%a9%95%e3%80%91%e8%91%97%e3%80%8e%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e7%b5%8c%e5%96%b6%e3%83%bb%e6%94%bf%e7%ad%96%e5%85%a5%e9%96%80%e3%80%8f/
谷ノ内 識 (追手門学院大学 総務部広報課 課長) 評 「組織力を向上させる 「経営機能としての広報」 (『広報会議』2019年3月号)
https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201903/university-seminar/015531.php
BOOK (『週刊教育資料』No.1512号2019年2月25日)
http://www.kyoiku-shiryo.co.jp/archives/1796