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白い表紙

書籍名

日本関係海外史料 オランダ商館長日記 原文編之十三 慶安四年十一月 承応二年九月

著者名

東京大学史料編纂所 編 (担当: 松方 冬子、 松井 洋子)

判型など

344ページ、A5判

言語

英語、オランダ語

発行年月日

2019年4月19日

ISBN コード

978-4-13-092713-0

出版社

東京大学出版会

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オランダ商館長日記 原文編之十三

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『オランダ商館長日記』は、江戸時代、ヨーロッパで唯一日本と関係を持ち続けてきたオランダ人の、日本における商館の長が、書き継いできた公務日誌である。17世紀に急速にアジアに展開したオランダ東インド会社は、各地に商館を置き、帳簿とともに日記を作成することを義務付けた。それらの多くは現在オランダ国立中央文書館に所蔵されているが、日本商館の文書は最も残存状況がよく、日記については、1633年から200年以上にわたって、ほぼ欠けることなく残っている。
 
史料編纂所では、マイクロフィルムで入手した原文を翻刻し、ネイティブ研究者の協力も得て校訂した原文編と、正確な全訳を提供する訳文編を刊行することにより、国内外の研究者に研究の基盤となる史料を提供している。
 
今回出版した、原文編之十三は、1652年1月1日から1652年11月3日までのアドリアーン・ファン・デル・ブルフ (Adriaen van der Burgh) の日記と、1652年11月4日から1653年11月12日までのフレデリック・コイエット (Frederik Coyet) の公務日記を翻字翻刻したものである (ファン・デル・ブルフの日記のうち、1651年11月1日から同年12月31日までは、原文編之十二に収めた)。
 
ファン・デル・ブルフは、アムステルダム生まれで、1641年に上級商務員として東インドに到着し、1651年8月、商館長として初めて日本に来た。
 
一方、コイエットはストックホルム生まれのスウェーデン人で、1643年からオランダ東インド会社の職員として勤務し、1647年から1648年に日本商館長を務め、1652年、再び商館長として日本に赴任した。オランダ東インド会社は、多くのオランダ以外の出身の職員を抱えており、彼もその一人であった。
 
本文はオランダ語であり、注は英語で付している。原文は、17世紀のオランダ語筆記体で書かれ、文法や綴字が現在とは異なることも多い。当時の東インドで用いられていた特殊語彙をも含む。書き手は東インド会社の商館長として、それなりのリテラシーを持っているとは言え、出自や経歴から、その語彙や文法力・表現力には幅がある。そう言うと、とっつきにくい、自分には関係ない、と思われる方も多いかもしれない。しかし、言語とその歴史に関心のある方には、ぜひ一度覗いてみていただきたい。近代のオランダ語が成立・発展しつつ、アジアで広汎に用いられていた時期の、混沌とした「ことば」の世界を垣間見ることができるだろう。
 
この『オランダ商館長日記』は、史料編纂所が日本史の基本史料の一つとして編纂刊行している『日本関係海外史料』のシリーズの一書目である。本シリーズには他に『イギリス商館長日記』(完結)『イエズス会日本書翰集』がある。

 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 教授 松井 洋子 / 2020)

本の目次

CONTENTS
 
Frontispieces
Contents
Introduction
Remarks
Abbreviations of the titles of the reference books for the footnotes
 
Dagregister des Comptoirs Nagasaki sedert 1 januarij 1652 tot en met
  3 november 1652
Dagregister des Comptoirs Nagasaki sedert 4 november 1652 tot en met
  10 november 1653
 
Index to Volume XII
List of Dutch ships

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