東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

グレーの表紙に大きなタイポの題字

書籍名

デジタル・デモクラシーがやってくる! AIが私たちの社会を変えるんだったら、政治もそのままってわけにはいかないんじゃない?

判型など

256ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2020年3月9日

ISBN コード

978-4-12-005277-4

出版社

中央公論新社

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デジタル・デモクラシーがやってくる!

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第4次産業革命は、民主政治をどのように変えるのか。このテーマを本書は、大きく分けて3つの側面から考察する。
 
第1は、政治に関する情報流通の変化である。従来、政党や政治家が情報発信するときには、マスメディアが人びとに伝える情報のゲートキーパーであった。ところが、インターネットの発達によって、政治はマスメディアを介さずに情報を送受信できるようになり、人々が接する政治的情報もカスタマイズされるようになった。第I部では、こうした政治コミュニケーションの変化を取り上げた。
 
第2の側面は、第4次産業革命による、民主政治における新たな合意形成の仕組みである。一時の感情的反応を世論調査で掬い取るのではなく、情報を多角的に分析し、異なる意見との討論を通じて得られた民意を政治に活かそうという熟議民主主義を、新しいテクノロジーを用いて実装することが可能なのか。第II部では、理論・実践の両面から議論を行った。
 
第3は、第4次産業革命を構成するさまざまなテクノロジーを活用した、政治制度のアップデートの試みである。例えば選挙について、投票所に行かなくても自宅でインターネットを通じて投票できるようにする仕組みづくりに向け、総務省は研究会を組織し、まずは在外投票に導入できないか検討を進めている。また、国会についても、議員に配布する資料の一部をペーパーレス化したり、産休などで会議に出席できない議員の電子投票を可能にするアイデアが提唱されたりしている。
 
ほぼ同時に上梓した拙著『現代日本の代表制民主政治 有権者と政治家』とは対照的に、本書では堅いテーマをできるだけ柔らかく伝えることに意を用い、「たにぐちサン」こと谷口、「シシドさん」こと共著者の宍戸常寿氏のアバターが読者代表となり、各章のテーマのエキスパートとざっくばらんに対談するという形式に編集を行い、タイトルや装丁もくだけたものを採用した。さらに、2020年3月の刊行前後から新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) が流行したことにより、感染症に関する情報流通の在り方、各種の対応策をめぐる政府のコミュニケーション戦略の巧拙、緊急事態宣言・外出自粛要請下での選挙、そして密集を避けるためのオンライン議会の是非など、期せずしてレレヴァンスを増すことになり、読売新聞・朝日新聞・日本経済新聞が書評欄で取り上げるなど注目を集めた。将来、本書に書いたことがその後どうなったのかを検証するのが楽しみである――出版当時と問題状況は変わっていない、などという事態にならないことを願いつつ。

 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 谷口 将紀 / 2020)

本の目次

はじまり~政治学者たにぐちの独白~
 
第I部 新しい民意
 第1章 読ませる技術とフェイクニュース――政治コミュニケーションの巻
 第2章 政党の情報戦略から見えてくるもの――政党の巻
 
第II部 新しい熟議
 第3章 情報化が導く,話し合いの必要性――熟議民主主義の巻
 第4章 新しい公共空間という可能性――討論型世論調査の巻
 
第III部 新しい制度
 第5章 ネット投票の現在――選挙の巻
 第6章 効率化からよりよき民主主義へ――電子議会の巻
 
おわりに~政治学者たにぐちと憲法学者シシドが振り返る~

 

関連情報

書評:
会田弘継 (関西大学客員教授) 評 (『週刊東洋経済』 2020年6月20日)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20200615/
 
苅部直 (政治学者、東京大教授) 評「情報社会が変える政治」 (『読売新聞』 2020年5月31日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20200530-OYT8T50103/
 
ネット政治の課題と可能性 (『日本経済新聞』 2020年5月30日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59746180Z20C20A5MY6000/
 
坂井豊貴 (慶應義塾大学教授) 評「熟議・可視化…新たな可能性も」 (『朝日新聞』 2020年4月18日掲載)
https://book.asahi.com/article/13306170
 

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