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黄色の表紙

書籍名

学習評価ハンドブック アクティブラーニングを促す50の技法

著者名

エリザベス・F・バークレイ (著)、クレア・ハウエル・メジャー (著)、 東京大学教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 (監訳)、 吉田 塁 (監訳)

判型など

416ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2020年4月10日

ISBN コード

978-4-13-051353-1

出版社

東京大学出版会

出版社URL

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学習評価ハンドブック

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原著はエリザベス・F・バークレイ先生とクレア・ハウエル・メジャー先生が書かれた Learning Assessment Techniques: A Handbook for College Faculty です。
 
学習評価の考え方やデザイン方法に加えて、50の技法がわかりやすく紹介されています。
 
序論では、学習評価の概念的な枠組みを整理しています。本書における中心的なトピックである学習評価技法 (LAT: Learning Assessment Techniques) や重要な役割を担う Fink の意義ある学習分類について説明されています。序論は、本書の構成や内容に大きく関わることから、こちらを一読した上で他の読みたいところを読むことをおすすめします。
 
第1章から第6章では評価に関する全体像を把握できるようになっています。具体的には、学生に学習してもらいたいことの明確化、学習目的の設定、学習評価技法の選択、技法の実施、学生の学んだことの分析と報告、評価結果を次の教育活動に活かす方法 (ループを閉じる方法) と評価のプロセスに沿って、それぞれの段階で具体的に何をすれば良いのか知ることができます。そのため、評価の流れやプロセスを知りたい場合はここを熟読することをおすすめします。
 
第7章から第12章では、Fink の意義ある学習分類における各学習領域 (「基礎知識」「応用」「統合」「人間性」「関心」「学び方の学習」) に関する説明とその領域に関連した評価技法が紹介されています。各技法の説明では、具体的な準備、実施、結果の分析・集計の方法が載っているのに加えて、実践例が詳しく説明されています。ただ一般的な流れを説明するだけでは「この評価技法を実際に授業に組み込む時どうすればよいの?」と疑問が出てきやすいのですが、具体的な実践例があるおかげで、技法の活用がよりイメージしやすくなっています。また、教室での実践例のみならずオンラインでの実践例についても紹介されていることから、授業のオンライン化が必須になってしまったウィズコロナ時代にも、幸か不幸か対応できるものとなっています。
 
本書は教育実践を行っている教員を主な対象としていますが、教育に興味を持っている学生のみなさんが読んでもわかりやすい内容になっていると思いますので、興味があれば是非お読みください。「成績が決まるもの」「期末試験」などといった、これまで持っていた評価のイメージとは大きく異なり、評価は多様で、学習する上で重要な要素であることが理解してもらえるはずです。

 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 特任助教 (2019年3月) 吉田 塁 / 2020)

本の目次

監訳者まえがき/解説

序 論 概念的枠組み
 どうすれば学習を促進する最高の教え方ができるのか?
 学習評価技法(LAT)とは何か?
 LATは意義ある学習を促進する考え方をどのように支えるのか?
 結論

第I部 学習評価技法サイクル

第1章 学生に学んでほしいことを明確にする
 1.1 学習を定義する
 1.2 意義ある学習を目指す
 1.3 意義ある学習目的を特定するために学習目的目録(LGI)を利用する
 1.4 学生に学んでほしいことを評価に役立つ言葉で表現する
 1.5 授業レベルの学習目的を特定する
 1.6 授業の学習目標と学習成果に関連した課題を検討する
 1.7 授業レベルの学習目標を決める
 1.8 授業レベルの学生の学習成果 (SLO:Student Learning Outcome) を特定する
 1.9 学習目標と学習成果を区別する
 1.10 授業の学習成果ステートメントを作成する
 1.11 個人およびクラス全体のパフォーマンス基準を決定する
 1.12 求められるこうした作業は努力に値するのか?

第2章 学習評価の目的を決める
 2.1 評価を定義する
 2.2 学習評価と成績はどう違うのか?
 2.3 学習評価の種類
 2.4 学生がどの程度学んでいるかを教員自身が判断するために評価する
 2.5 学習者に進捗状況についてフィードバックするために評価する
 2.6 教授と学習の学術的探究 (SoTL) を通して大学教員という職業の価値を高めるために評価する
 2.7 学生がどの程度学んでいるかについて大学および外部関係者に情報を提供するために評価する
 2.8 評価に関する質問を作成する

第3章 学習評価技法を選択する
 3.1 学習目的目録 (LGI) を利用する
 3.2 LATを学ぶ際に授業の背景を考慮する
 3.3 考慮すべき授業の主な要素
 3.4 複数のLATの組み合わせを検討する

第4章 学習評価技法を実践する
 4.1 評価ルーブリックを作成する
 4.2 学生の自己評価書を作成する
 4.3 ピア評価書を作成する
 4.4 学習活動を導入する
 4.5 学習評価について必要な情報を学生へ提供する
 4.6 学習評価を促す
 4.7 学習活動を終える
 4.8 各段階の時間配分を行う
 4.9 学習成果物を収集する
 4.10 学習成果物を管理する
 
第5章 学生が学んだことを分析して報告する
 5.1 誰の学習を測定しているのかを明らかにする
 5.2 独立データ分析と協同データ分析を検討する
 5.3 個人の学習成果物を採点する
 5.4 グループの学習成果物を採点する
 5.5 データ分析方法を決定する
 5.6 量的データ分析法を用いる
 5.7 質的データ分析法を用いる
 5.8 データと分析結果を表示する
 5.9 結果を解釈する
 5.10 評価結果報告集を作成する

第6章 ループを閉じる
 6.1 学習目的,目標,成果を修正する
 6.2 学習評価の目的を調整する
 6.3 異なるLATを選択する
 6.4 実施部分を修正する
 6.5 分析と結果報告の方法を変更する

第II部 学習評価技法

第7章 「基礎知識」の教授と評価
 「基礎知識」領域に関する学習目的を明確にする
 「基礎知識」領域に関する学習成果を特定する
 「基礎知識」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「基礎知識」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 学習評価技法――基礎知識
 1 初回テスト
 2 背景知識調査
 3 入口出口チケット
 4 穴あき要約
 5 包括的キーワードリスト
 6 速筆
 7 ベスト要約
 8 スナップショット
 9 チームテスト
 10 チームゲームトーナメント

第8章 「応用」の教授と評価
 「応用」領域に関する学習目的を明確にする
 「実践スキル」の学習目的
 「応用」領域に関する学習成果を特定する
 「応用」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「応用」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 結論
 学習評価技法――応用
 11 予測チェック
 12 事実か意見か
 13 引用解説
 14 気付き・資料・応用
 15 考察せよ
 16 問題は何?
 17 声に出して問題解決
 18 問題解決ピアレビュー
 19 3段跳び
 20 デジタル作品

第9章 「統合」の教授と評価
 「統合」領域に関する学習目的を明確にする
 「統合」領域に関する学習成果を特定する
 「統合」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「統合」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 結論
 学習評価技法――統合
 21 知識グリッド
 22 順序マップ
 23 コンセプトマップ
 24 現代問題日誌
 25 2人1組レポート
 26 統合論文
 27 事例研究
 28 クラスブック
 29 eポートフォリオ

第10章 「人間性」の教授と評価
 「人間性」領域に関する学習目的を明確にする
 「人間性」領域に関する学習成果を特定する
 「人間性」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「人間性」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 結論
 学習評価技法――人間性
 30 フリーディスカッション
 31 賞への推薦
 32 編集会議
 33 演劇ダイアローグ
 34 ロールプレイ
 35 倫理的ジレンマ
 36 デジタルストーリー

第11章 「関心」の教授と評価
 「関心」領域に関する学習目的を明確にする
 「関心」領域に関する学習成果を特定する
 「関心」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「関心」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 結論
 学習評価技法――関心
 37 目に見える立場表明
 38 3分メッセージ
 39 啓発広告
 40 学生の主張
 41 論説文
 42 ディベート
 43 概要レポート

第12章 「学び方の学習」の教授と評価
 「学び方の学習」領域に関する学習目的を明確にする
 「学び方の学習」領域に関する学習成果を特定する
 「学び方の学習」領域に関する授業の学習成果と大学の学習目的を対応させる
 「学び方の学習」領域に関する学習成果の達成度を評価する
 結論
 学習評価技法――学び方の学習
 44 学習アウトライン
 45 学生作ルーブリック
 46 問題作成
 47 学習目的リスト
 48 「何? だから? これからは?」日誌
 49 段階的タスクチェックリスト
 50 個人的学習環境

付録A 学習目的目録 (LGI: Learning Goals Inventory) について
付録B 学習目的目録と採点表
付録C LATの活用例における学問領域と授業環境

 

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