東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白とピンクの表紙

書籍名

インタラクティブ・ティーチング アクティブ・ラーニングを促す授業づくり

著者名

栗田 佳代子、 日本教育イノベーションセンター

判型など

240ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2017年2月

ISBN コード

978-4-7772-1794-6

出版社

河合出版

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学内図書館貸出状況(OPAC)

インタラクティブ・ティーチング

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今、教育は大きな転機にあり、「(教師が) いかに教えたか」から「(学習者が) いかに学んだか」への過渡期にあります。つまり、これからは学習者が主体となる教育が求められます。そのような教育に関わる言葉として「アクティブ・ラーニング」があります。これは「一方向でない教育」全般を指し、いわば学習者の視点に立った学びのあり方です。では、教師はこの「アクティブ・ラーニング」が成立する場をどのようにつくればよいのか? その答えが、本書籍の名称でもある「インタラクティブ・ティーチング」です。「インタラクティブ・ティーチング」とは、学習者が主体性を持って学べるような、場の相互作用 (インタラクション) を重視する教え方です。
 
本書は、学習者が主体的に学ぶような授業を実現するための、授業の作り方や教師としてのあり方を、いくつかのテーマにしたがって実践的に学んでいただくことを目的としています。「教える」に関わる多様な理論をわかりやすく説明しながら実践につなげていきます。教師としての経験がない人にも「教える」ということについて基礎から学べるように構成されています。
 
本書は、基本的にはオンライン講座「インタラクティブ・ティーチング」を書き下ろしたものです。このオンライン講座「インタラクティブ・ティーチング」の動画教材は、東大FDのウェブサイトから視聴することができます (www.utokyofd.com/mooc/attend)。
 
オンライン講座はもともと全8回で構成され、各回が、ナレッジ・セッション、スキル・セッション、ストーリー・セッションの3部によって構成されていました。
 
ナレッジ・セッションでは、「インタラクティブ」な学びを促す教育のあり方について学び、アクティブ・ラーニングの方法や学習科学、シラバス、評価など、「教える」ために必須のテーマを設定し、丁寧に学んでいきます。スキル・セッションでは、演劇・表現の観点から、参加者が主体的に学ぶ場を作るための技法を学びます。さらに、ストーリー・セッションでは、各領域で第一線を走る研究者・実践者たちが、「教えること」にいかに向き合い、実践してきたのかを語ります。
 
これらの内容を、ナレッジ・セッションを第1章から第8章、スキル・セッションを第9章、ストーリー・セッションを第10章に再構成したのが本書です。各章には読者に向けた問いが設定されているので、これらに取り組むことで、学んだ内容を「じぶんごと」にしていくことができます。
 
また、本書は東京大学で開講されている「東京大学フューチャーファカルティプログラム」(東大FFP) のテキストでもあります。もともとオンライン講座「インタラクティブ・ティーチング」は、この東大FFPを基盤にしてつくられています。もし、本書に書いてあることを、実際に学内の多様な仲間とともに学びたい場合には、東大FFPをご受講ください。

 

(紹介文執筆者: 大学総合教育研究センター 准教授 栗田 佳代子 / 2020)

本の目次

第1章 アクティブ・ラーニングの基礎
1.1. アクティブ・ラーニングとは
1.2. アクティブ・ラーニングの現状
1.3. アクティブ・ラーニングを選ぶ
1.4. アクティブ・ラーニングの方法を適用する
1.5. アクティブ・ラーニングの方法の効果
1.6. 初回の授業:自己紹介の意義
 第1章 確認問題
 参考文献
 
第2章 アクティブ・ラーニングの技法
2.1. シンク・ペア・シェア
2.2. ジグソー法
2.3. ポスターツアー
2.4. ピア・インストラクション
2.5. 大人数講義で使えるアクティブ・ラーニングの技法
 第2章 確認問題
 参考文献
 
第3章 学習の科学
3.1. モチベーション
3.2. ARCSモデル
3.3. 熟達への道
3.4. 練習とフィードバック
3.5. なぜ学習の科学を学ぶのか
 第3章 確認問題
 参考文献
 
第4章 90分授業のデザイン
4.1. クラス・デザインの意義
4.2. ADDIEモデル
4.3. クラス構成の基本型
4.4. デザインシートの利用
4.5. デザインシートを使いこなす
 第4章 確認問題
 参考文献
 
第5章 もっと使えるシラバスを書こう
5.1. もっとあるシラバスの役割
5.2. 目的と目標の設定
5.3. スケジュールのデザイン
5.4. 授業の構造の可視化
5.5. 評価情報の書き方
5.6. 授業の目標を設定してみよう
 第5章 確認問題
 参考文献
 
第6章 学びを促す評価
6.1. 評価の目的
6.2. 評価を設定する際のポイント
6.3. ルーブリック
 第6章 確認問題
 参考文献
 
第7章 大学教員としてのあり方
7.1. 変わりゆく大学
7.2. 大学教員のあり方
7.3. 目指す大学教員像を考える
7.4. 理想の大学教員像
 第7章 確認問題
 参考文献
 
第8章 ポートフォリオの作成
8.1. 構造化アカデミック・ポートフォリオ (SAP)
8.2. 構造化アカデミック・ポートフォリオ・チャート (SAPチャート)
8.3. SAPチャートの作成1: はじめに・教育
8.4. SAPチャートの作成2: 研究
8.5. SAPチャートの作成3: サービス・統合
 第8章 確認問題
 参考文献
 
第9章 伝え方のスキル
9.1. スキルの哲学:肝心なものは目に見えない
9.2. 導入編1: 空間をつくる
9.3. 導入編2: 伝わる話し方
9.4. 交流編1: まずは自分の緊張をほぐす
9.5. 交流編2: リアクションを生み出すために
9.6. 質疑応答1: 伝え方について
9.7. 質疑応答2: クラスルーム・コントロールについて
9.8. まとめ: 失敗を恐れるな
 
第10章 先達に学ぶ
10.1. 平岡秀一「理系のアクティブ・ラーニング」
10.2. 髙木晴夫「経営学のケースメソッド」
10.3. 本田由紀「購読票と二本のマイクで行う『教育社会学概論』の授業」
10.4. 三宅なほみ「協調学習における『知識構成型ジグソー法』」
10.5. 渋谷まさと「『解剖生理学』におけるアクティブ・ラーニング型授業」
10.6. 上田信行「プロジェクト型学習に学生を巻き込む」
10.7. 斎藤兆史「講義一辺倒から進化する英語教育の現在と課題」
10.8. 苅谷剛彦「オックスブリッジのチュートリアルと大学教員の育成」
10.9. ヘルマン・ゴチェフスキ「音楽史を学ぶのではなく音楽史をつくる」
10.10. 山邉昭則「学習者とともに創る授業」
10.11. 入江直樹「まだわかっていないことをテーマに生物学を考える」
10.12. 加藤雅則「社会人向けワークショップでのアクションラーニング」
10.13. 山内祐平「MOOC、反転授業、対面授業」
10.14. 浅田孝紀「演劇の要素をとりいれた高校『古典』の授業」
10.15. 吉見俊哉「マクロな立場から見た『高等教育』」
 
資料・付録
1. 確認問題の解答・解説
2. クラスデザインシート
3. クラスデザインシートの記入例
4. シラバスの事例:東京大学フューチャーファカルティプログラム
5. ルーブリック採点用レポート課題とルーブリック
6. SAPチャート
7. オンライン講座「インタラクティブ・ティーチング」講師・スタッフ紹介
8. 講座スタッフの編集後記「オンライン講座の舞台裏」

執筆者一覧
おわりに

関連情報

インタラクティブ・ティーチングとは (東京大学ファカルティ・ディベロップメント (FD) ウェブサイト)
https://www.utokyofd.com/mooc/about.html
 
インタラクティブ・ティーチングの動画教材 (東京大学ファカルティ・ディベロップメント (FD) ウェブサイト)
https://www.utokyofd.com/mooc/attend
 
JCERI×東京大学「インタラクティブ・ティーチング」 (JCERI日本教育研究イノベーションセンター)
http://jceri.kawaijuku.jp/research/mooc/
 
JACUEセレクション2019認定図書 (一般社団法人大学教育学会)
https://daigakukyoiku-gakkai.org/site/jacue-selection/selections/
 
FAJ会員が推薦するF本大賞2017 (FAJ日本ファシリテーション協会)
https://www.faj.or.jp/facilitation/faj/
 
著者インタビュー:
日本の大学「教育」は時代遅れ? 東大の「教え方」を変える東大FFPの挑戦とは (東大新聞オンライン 2019年9月24日)
https://www.todaishimbun.org/ffp20190924/
 
講演:
第4回東アジア日本研究者協議会国際学術大会 (台湾大学日本研究センター 2019年11月1~3日)
http://cjs.ntu.edu.tw/eacjs_jp_content.html
 
フォーラム:
「インタラクティブ・ティーチング」フォーラム 第1回「あらためて、シラバス」 (東京大学 2018年3月4日)
https://senseiportal.com/events/44676
 
「大学教育再生加速プログラム(AP)フォーラム」を開催 (東京電機大学 2018年2月15日)
https://www.dendai.ac.jp/news/2017/20180205-02.html
 
2016年度「ビッグリアルセッション インタラクティブ・ティーチングのその先へ:教育を変える新しい力」 (東大TV 2017年2月4日)
https://todai.tv/contents-list/2016FY/brs-1/opening
 
2014年度「インタラクティブ・ティーチング」 (東大TV 2014年11月19日)
https://todai.tv/contents-list/2014FY/course2014/01

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