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白とグレーの表紙

書籍名

光文社新書 炎上CMでよみとくジェンダー論

著者名

瀬地山 角

判型など

263ページ、新書版ソフト

言語

日本語

発行年月日

2020年5月20日

ISBN コード

978-4-334-04469-5

出版社

光文社

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炎上CMでよみとくジェンダー論

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2010年代以降の日本社会では、企業や自治体のCMの「炎上」が頻発するようになりました。問題 / 話題になったCMを見ているとあるパターンがあることに気がつき、その要素ごとに下記のような4種類に分類したのが、本書の議論の核になっています。ジェンダーに関して批判を受けたCMのほとんどはこのパターンで説明できます。
 
ただこの各象限で批判されたCMがある一方で、それと対をなすように、批判されなかったり、好感を持って受け取られたりしたCMも存在することもわかりました。その理由も明らかにしており、これらを対比することで、どこで判断を間違えると批判の対象となるのかがわかるようになっています。新聞雑誌の書評では、こうしたCM批評としての観点から紹介するものが多く見られました。
 
一方でこの本はジェンダー論の入門書になるように書いたものです。教養学部の「ジェンダー論」の講義については、東大の学部生なら聞いたことくらいはあると思います。本には講義で取り上げているCMも多く含まれています。CM批評といった観点とは別に、学生のみなさんに自分の将来を考えてもらうための「教材」として、CMを講義で使っていたことがこの本の出発点です。ですので本書では、独身の男性に結婚相手の条件として求められているものや、東大の女子学生がすでにジャンボ宝くじの当たりくじを持っている状態であることなど、学生のみなさんの将来設計に直結する身近な話題を数多く取り入れています。
 
またそうしたジェンダーの問題以外に、性的マイノリティを含む、さまざまなマイノリティの問題と言葉の政治 (用語法のあり方) について取りあげています。これも講義の一部を取り込んだものですが、将来責任ある地位に就くであろう東大生には必須の知識です。こうしたことについて「知らなかった」という言い訳が通用しないことは、本書を読んでいただければわかるはずです。
 
また東大の女子比率が長らく2割を越えないことも、その背景にある構造的な差別と共に紹介しています。男子学生のみなさんももう少し当事者意識を持って、こうした問題に向きあってほしいと思います。
 
私としては専門用語はあまり使わずに、東大の学部生なら誰でも読めるようなジェンダー論の基礎を学べる本として書いたつもりです。ジェンダー論の講義を聞いた人も聞かなかった人も、学生さんたちに広く読んでほしいと願っています。

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 瀬地山 角 / 2020)

本の目次

序  章 なぜCMは炎上するのか
第1章 子育てママの応援かワンオペ礼賛か 
           (性役割×女性)
第2章 ファッションや化粧品のCMは難しい?
           (容姿や性的メッセージ×女性)
第3章 何が「性的」とみなされるのか?
         (性的なメッセージ×男性)
第4章 「はたらけ!」といわれる男たち
           (性役割×男性)
第5章 マイノリティと言葉の政治
第6章 履いている下駄の高さ
あとがき
巻末付録 広告の“炎上”史

関連情報

著者紹介:
瀬地山 角
1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2009年より東京大学大学院総合文化研科教授。この間にソウル大に留学、ハーバード大、カリフォルニア大バークレー校で客員研究員。専門はジェンダー論。主な著書に『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』(編著)、『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)、『新・知の技法』(共著、東大出版会)など。
 
著者コラム:
瀬地山 角「女性に「キレイになろう」と訴えて炎上する企業がやりがちなCMの作り方 - 応援するはずがむしろ分断している」 (PRESIDENT Online 2020年7月20日)
https://president.jp/articles/-/37152?page=1
 
著者インタビュー:
瀬地山 角氏「ジェンダーの観点から4つに分類 炎上CMのパターンとは?」 (『宣伝会議』 2020年8月号)
https://mag.sendenkaigi.com/senden/202008/author-iinterview/019330.php
 
書評:
<一人一冊> 出口治明 (立命館アジア太平洋大学(APU)学長) (『週刊金融財政事情』 2020年9月28日号)
https://kinzai-online.jp/node/6817
 
道浦俊彦TIME 新・読書日記 (読売テレビ 2020年7月16日)
https://www.ytv.co.jp/michiura_time/contents/202007/jmv3czccmg1mzgw6.html
 
新鮮新選 炎上広告にみるジェンダー 女性の思いに目を (中部経済新聞 2020年6月27日)
https://www.chukei-news.co.jp/news/2020/06/27/OK0002006270a01_01/
 
炎上するCM・キャンペーンには法則がある! 4つのモデルに分けて考える「炎上の方程式」 (ダ・ヴィンチニュース 2020年6月26日)
https://ddnavi.com/review/639518/a/
 
新着ピックアップ (朝日新聞 2020年6月20日)
https://book.asahi.com/article/13478928
 
あとがきのあと: 「炎上CMでよみとくジェンダー論」瀬地山角さん (日本経済新聞 2020年6月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60090930Y0A600C2MY6000/
 

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