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えんじ色の表紙に山吹色の題字

書籍名

中国絵画総合図録 三編 第六巻 総索引

判型など

400ページ、菊判変

言語

日本語

発行年月日

2020年5月19日

ISBN コード

978-4-13-084206-8

出版社

東京大学出版会

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中国絵画総合図録 三編 第六巻 総索引

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2020年3月、コロナ禍の只中、『中国絵画総合図録 三編』第6巻が出版、全6巻が完結した。この書籍は、鈴木敬(1920~2007)名誉教授以来、東京大学東洋文化研究所東アジア美術研究室の経営する中国絵画イメージ・アーカイヴ・プロジェクトの成果である。このプロジェクトは世界中の中国絵画の総てを調査撮影、アーカイヴ化して斯学のプラットホームを築くことを目指すもので、デジタル画像以前のものも含めれば20万点以上の画像が保管整理されており、人文系の学問では珍しく4代、50年以上続いている。
 
美術史学は西洋から始まったもので、作品がどのくらい現存し、どこに所在するか、を把握した学問の基礎資料となるカタログ・レゾネの伝統がある。しかし、鈴木名誉教授以前には、中国絵画史ではそうした資料はまだ備わっておらず、各々が紹介した図録や刊行物によって図様が知られていたが、『中国絵画総合図録』はそうした状況を一変させ、中国美術史学のみならず日本を含む東アジア美術史学の研究にとって必携のレファランスとなった。以来、一世代、約20年ごとにリバイズし続けており、今回『三編』の出版完結となった。
 
プロジェクトは同じことを繰り返すだけでは実際に継続できない。精神を継承しつつ、時代の要請に応じて変化していくことも重要である。この半世紀の間に調査撮影方法もアナログの銀塩フィルムからデジタル併用、さらにデジタルへと完全移行した。又、この間の中国の経済的な進展は爆発的なものがあり、それに伴って作品の価格も高騰し、日本からは多くの中国絵画が流出するなど、所在もめまぐるしく変わった。
 
ぜひこの書物を開いて見ていただきたい。世界中に所在する中国絵画の膨大なイメージが目に入ってくるが、通覧するだけで、どのようなイメージがどのくらい広がったのか、見て取ることができる。それだけではない。対象作品の広がりは学問の進展を意味し、作品の移動は中国絵画に対する関心の高まりを示している。『三編』では、これまで含まれなかったボストン美術館などの重要なコレクション、地域としてはオセアニア地域、対象作品の時代としては清時代末・民国初期が加わった。ここには、レファランスでありながら、学問の在り方の「今」が反映されているのである。

 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 板倉 聖哲 / 2021)

本の目次

全巻の概要構成
 
『中国絵画総合図録 初編』全5巻 鈴木敬・戸田禎佑(1934~)編
第1巻 アメリカ・カナダ篇 1982年
第2巻 東南アジア・ヨーロッパ篇 1982年
第3巻 日本篇1: 博物館 1983年
第4巻 日本篇2: 寺院・個人 1983年
第5巻 總索引 1983年
 
『中国絵画総合図録 続編』全4巻 戸田禎佑・小川裕充(1948~2019)編
第1巻 アメリカ・カナダ篇 1998年
第2巻 アジア・ヨーロッパ篇 1998年
第3巻 日本篇 1999年
第4巻 總索引 2001年
 
『中国絵画総合図録 三編』全6巻 小川裕充・板倉聖哲 編
第1卷 アメリカ・カナダ篇1 2013年
第2卷 アメリカ・カナダ篇2 2014年
第3卷 ヨーロッパ篇 2015年
第4卷 アジア・オセアニア篇 2016年
第5卷 日本篇 2019年
第6卷 總索引 2020年
 

関連情報

国際シンポジウム:
『中国絵画総合図録 三編』完結記念 国際シンポジウム (東文研シンポジウム)
「東アジア美術研究の回顧と実践―コレクションとアーカイヴ―」開催のお知らせ (東京大学東洋文化研究所東洋学研究情報センター・東アジア美術研究室 2021年3月20日)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=WedJan200327222021
 
書籍紹介:
世界の中国絵画を追跡、総合図録の三編完結 (『朝日新聞』夕刊 2021年4月13日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14869575.html

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