
書籍名
コレクションとアーカイヴ 東アジア美術研究の可能性
判型など
520ページ、A5判、上製
言語
日本語、中国語
発行年月日
2022年1月
ISBN コード
9784585370000
出版社
勉誠出版
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
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東京大学東洋文化研究所東アジア美術研究室では、半世紀以上に亘って世界中の中国絵画を調査撮影、アーカイヴ化して斯学のプラットホームを築いてきた。人文系の学問では珍しく、鈴木敬 (1920~2007) 名誉教授に始まり、戸田禎佑 (1934~)・小川裕充 (1948~2019)、さらに現役スタッフ (板倉・塚本) と継続しているプロジェクトであり、現在では20万点以上の画像が保管整理されている。各世代ごとに『中国絵画総合図録』を出版しており、コロナ禍中、2020年3月に『中国絵画総合図録 三編』全6巻が完結した。それを記念して翌年3月に国際シンポジウム「東アジア美術研究の回顧と実践-コレクションとアーカイヴ」が開催された。コロナ禍であったため、対面はかなわず、リモートでの開催となった。発表者は井手誠之輔 (九州大学教授)・ユキオ・リピット (ハーヴァード大学教授)・石守謙 (台湾・中央研究院院士) 各氏と板倉で、中国絵画のアーカイヴやそれに基づく研究の回顧と展望が論じられ、海外からの参加者も多く、議論も活発に行われた。本書の前半はこのシンポジウムが基となっている (「東アジア美術研究・過去から未来へ―コレクションとアーカイヴ」)。
本書の後半部分(「東アジア美術研究の現在」)は、そうしたアーカイヴを用いた研究の実践である。このアーカイヴは中国絵画史研究のプラットホームとなっているが、中国絵画のみならず日本・韓国絵画研究にも有用であることは言うまでもないことで、東アジア美術史研究の再構築を進めていくための重要なツールになり得るのである。先代の小川裕充名誉教授は『初編』・『続編』・『三編』すべての世界規模の悉皆調査に参加された唯一の研究者で、このプロジェクトに尽力し、小川先生なくして継続しなかったといっても過言ではない。そのスケールの大きな研究は、中国絵画の普遍性を追求し、東アジア絵画史の再構築を目指したものであり、まさに再構築の推進者であった。残念ながら『三編』の完成直前に亡くなられ、シンポジウムでも弔意を示した。後半部分は、若手を中心に、小川先生の学恩を受けた研究者たちによって著されており、東アジア美術史の再構築を目指した小川先生の意思が次世代へと継承されていくことの証でもある。
ぜひ本書と共に『中国絵画総合図録 初編・続編・三編』全15巻も手に取って見ていただきたい。
(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 板倉 聖哲 / 2024)
本の目次
I 東アジア美術研究・過去から未来へ―コレクションとアーカイヴ
東洋文化研究所東アジア美術研究室 半世紀の歩み―『中国絵画総合図録』三編完結まで 板倉聖哲
附 参考資料 歴代教授履歴業績
正倉院宝物と中国の死後世界 ユキオ・リピット/呂 晨晨
唐絵研究の可能性―半島由来絵画を中心に 井手誠之輔
二十世紀前期の文物調査と中国美術史の発展 石守 謙 (飛田優樹 訳)
II 東アジア美術研究の現在
受戒と仏像 長岡龍作
唐宋画牛考 竹浪 遠
宋帝后画像について―東アジア中世の帝王画像における宗教性と世俗性 陳 韻如 (前田佳那 訳)
後堀河院の絵巻制作と蓮華王院宝蔵 増記隆介
浄土五祖像の成立をめぐって 朝賀 浩
惟肖得巌賛李白観瀑図試論―馬遠派観瀑図の受容 救仁郷秀明
洞天福地への旅―明代蘇州における旅行絵画の一側面 植松瑞希
東アジア絵画史の視点から考える花鳥画研究―呂紀と沈銓・南蘋派を例に 黄 立芸
アーカイヴとしての狩野派模本 田沢裕賀
中国近代と仏教絵画―金石から人物表現、アジア認識へ 塚本麿充
「旧王孫」が紡いだ詩画の縁―溥儒と須磨弥吉郎、そして伊藤紫虹の「合作」について 呉 孟晋
おわりに 塚本麿充
関連情報
http://cpdb.ioc.u-tokyo.ac.jp/
中国絵画総合図録 三編【全六巻】 (東京大学出版会)
シリーズ著者:小川裕充 編 板倉聖哲 編
https://www.utp.or.jp/book/b437183.html
関連インタビュー:
インタビュー14: 小川裕充 (OGAWA Hiromitsu/東文研・東アジア研究部門教授) (東洋文化研究所ホームページ)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/interview/14.html
一枚の絵画から、人と人の結びつきや文化の多様性が見えてくる。| UTOKYO VOICES 091
東洋文化研究所 東アジア第二部門 准教授 塚本麿充 (東京大学ホームページ 2020年7月2日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/voices091.html
書籍紹介:
(『週刊仏教タイムス』2022年4月7日号4面 2022年4月7日)
https://www.bukkyo-times.co.jp/index.html
国際シンポジウム:
『中国絵画総合図録 三編』完結記念 国際シンポジウム(東文研シンポジウム) 「東アジア美術研究の回顧と実践-コレクションとアーカイヴ―」開催のお知らせ (東京大学東洋文化研究所東洋学研究情報センター・東アジア美術研究室 2021年3月20日)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=WedJan200327222021