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日韓交流おまつりの写真

書籍名

国家主義を超える日韓の共生と交流 日本で研究する韓国人研究者の視点

著者名

韓国人研究者フォーラム編集委員会、李 旼珍、鞠 重鎬、 李 正連 (編)

判型など

216ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年6月5日

ISBN コード

9784750343457

出版社

明石書店

出版社URL

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国家主義を超える日韓の共生と交流

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本書は、日本で教育・研究活動を行う韓国人研究者らが、研究交流とネットワーク形成のために、2008年5月に設立した「韓国人研究者フォーラム」から生まれたものである。同フォーラムは、現在1,000人近くの韓国人研究者が日本の大学や研究所等で活動しているといわれる状況の中で、韓国人研究者らの学術的な交流及び親睦を深めるとともに、韓国人研究者のデータ・ベースの整備を通じて韓国人研究者ネットワークの構築を目指すことを目的としてつくられた団体である。
 
本書の企画が具体化しはじめたのは、日韓国交正常化50周年の2015年を翌年に控えていた2014年である。2012年から高まりはじめた日韓の政治的緊張がなかなか緩和せず、これ以上日韓関係を悪化させてはいけないという強い思いから、日本と韓国がナショナル・アイデンティティや国家主義を超えて、さまざまな分野で相互協力・共存関係を築くことができる方法を模索するために、本書は企画されたのである。
 
本書では、日韓国交正常化 (1965年) 以降の日韓経済関係の構造変化をはじめ、教育や文化面における多様な交流、韓国の民主化と市民運動の成長に伴って拡大した市民社会レベルでの交流、そして在日韓国人の人権問題についての検討などを通して、両国経済の共存・発展及び文化理解・文化連帯の可能性、そして国家主義を超える日韓市民社会の実現などといった、日本と韓国の未来を展望している。
 
本書が出されてから4年が経ったいま、残念ながら日韓関係は改善どころか、政治的対立のみならず、両国民の相互国に対する反感も高まるなど、いっそう悪化している。ところが、本書でも取り上げている教育及び文化分野での交流や市民社会レベルでの交流は、日韓関係の悪化や最近のコロナ禍の中でも途絶えることなく、依然として行われ続けている。
 
今年の初めに発生した新型コロナウィルス感染症によって、いま全世界が混乱と危機に陥っている。このようなグローバルな諸問題 (気候問題、環境と生態系保護問題、平和と核軍縮問題など) はもちろんのこと、日韓両国が共通に抱えている問題 (少子高齢化問題、福祉問題、雇用問題など) を克服し共存していくためにも、日韓両国は互いに反目し合うのではなく、さまざまな角度から対話を試み、連帯・協力する関係を築いていかなければならない。日韓関係の改善とともに、両国が今後持続可能な社会として共生していくための課題を考えるうえで、本書が少しでも参考になれれば幸いである。
 
 

(紹介文執筆者: 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク (ASNET) 准教授 李 正連 / 2020)

本の目次

はしがき

第I部 日韓経済の構造変化と共存
 第1章 国交正常化以降における日韓経済財政政策の比較
 第2章 依存から競合、そして新たな共存へ向かいつつある日韓経済

第II部 文化・メディアにおける相互表象からの脱却
 第3章 日本における韓国語教育と韓国における日本語教育
 第4章 ソフトパワーとしての韓流と嫌韓流論、そして韓流食客たち
 第5章 謝罪する日本 (日本人) の表象――日韓の新聞報道の分析

第III部 市民社会の交流と国家主義の克服
 第6章 日韓自治体交流の軌跡と展望――川崎市と富川市の教育・文化交流を中心に
 第7章 日韓市民団体・労働団体の交流とその成果
 第8章 在日韓国人の人権問題に関する考察

韓国人研究者フォーラムについて
 

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