東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にグレーのアウトライン、赤い帯

書籍名

有斐閣アルマ Specialized 戦後日韓関係史

著者名

李 鍾元、 木宮 正史、 磯崎 典世、浅羽 祐樹

判型など

314ページ、四六判、並製カバー付

言語

日本語

発行年月日

2017年2月

ISBN コード

978-4-641-22077-5

出版社

有斐閣

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戦後日韓関係史

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韓国は日本の植民地支配から解放され、建国されてから約70年が経過した。さらに、1965年に日本と国交正常化されてから50年を経過している。80年代までの冷戦期には、反共自由主義陣営の一員として政治経済における緊密な協力を行うことで、韓国は持続的な経済発展と政治的民主化を達成し南北体制競争に勝利すると共に、日本の安全保障にも貢献した。しかし、市民社会間の交流は限定された。その後、90年代の脱冷戦期に入ると、一方でそれまで制限された市民社会間の交流が活発になったが、他方で、日韓関係が対称的なものに変容し中国の存在感が高まる中、日韓の間には過去の歴史に起因する「未解決」の諸問題が顕在化すると共に、それが現在における日韓間の競争局面にも連携し日韓関係は葛藤に満ちている。価値観が共有され交流が高まるが、それと共に葛藤も増しているというのが日韓関係の現住所である。そして、2000年代以降、北朝鮮の核ミサイル開発という安全保障上の危機が日韓を直撃する。
 
日本の政治外交史の専門家ではなく、主として朝鮮半島の政治研究を専門とする4人の著者が、10年ごとの時代区分に基づいて、(1) 日韓関係を取り巻く国際関係、(2) 日韓政府間関係、(3) 日韓の経済関係、(4) 日韓の市民社会間関係、という4つの次元とその相互関係に留意して、戦後の日韓関係の歴史的展開を分析したのが、本書である。
 
序章で戦後日韓関係を鳥瞰する見取り図を提示した後、第1章は1950年代に焦点を当て、韓国の李承晩政権との間で国交正常化に向けた日韓交渉が米国の仲介で始まったが、交渉が行き詰まったのはなぜかを考察する。第2章は60年代に焦点を当て、日本との経済協力に基づく経済発展を指向した韓国の朴正熙政権との間で、65年国交が正常化される過程を分析する。第3章は70年代に焦点を当て、中国をめぐる国際関係が変容する中、それが日韓関係に及ぼした影響について、葛藤と協力という2つの方向から解明すると共に、従来封じ込められた市民社会間関係の萌芽を指摘する。第4章は80年代に焦点を当て、新冷戦下で米国が仲介する日韓関係という構図が再現されると共に、韓国の民主化運動をめぐる日韓市民社会の交流が本格化したことを強調する。第5章は90年代に焦点を当て、冷戦の終焉が日韓関係に及ぼした影響について、それに起因した諸問題の顕在化とそれに取り組む日韓関係の力量強化という双方向から分析する。第6章は2000年代に焦点を当て、日韓関係が抱える諸問題同士の連関を解明する。第7章は2010年代に焦点を当て、日韓関係の現状を歴史の中に位置づける。終章では序章の問題意識に対応して、国際政治の理論と日韓関係の対応関係を検証する。
 
以上、本書は、戦後日韓関係に関する歴史的分析を通して葛藤に満ちた現状の原因を解明すると共に、その葛藤をどのように克服するのか、その条件を示唆した。大学授業の教科書として利用することを念頭に置いたものである。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 木宮 正史 / 2017)

本の目次

序 章  戦後日韓関係の歴史と構図 (李 鍾元)
第1章  戦後日韓関係の始まり──1950年代 (李 鍾元)
第2章  冷戦と経済協力──1960年代 (木宮正史)
第3章  冷戦の変容と関係の緊密化──1970年代 (木宮正史)
第4章  韓国民主化と市民社会交流──1980年代 (磯崎典世)
第5章  脱冷戦期の協力の模索と課題の噴出──1990年代 (磯崎典世)
第6章  複合化する日韓関係──2000年代 (浅羽祐樹)
第7章  「普通」の2国間関係へ──2010年代 (浅羽祐樹)
終 章  今後の日韓関係に向けて (李 鍾元)
読書案内 / 参考資料 / 索引
 

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