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書籍名

世界と日本がわかる 国ぐにの歴史 一冊でわかる韓国史

判型など

256ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2021年12月1日

ISBN コード

978-4-309-81111-6

出版社

河出書房新社

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学内図書館貸出状況(OPAC)

一冊でわかる韓国史

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本書は、朝鮮半島地域の歴史についての、初学者向けの通史である。河出書房新社の「世界と日本がわかる 国ぐにの歴史」シリーズの1冊として企画された。周知のように、現在、朝鮮半島は南北に分断されており、朝鮮民主主義人民共和国 (北朝鮮) と大韓民国 (韓国) という2つの国家が併存している。本書の書名にある「韓国」とはこのうちの大韓民国を指しているが、本書が取り扱うのは大韓民国建国 (1948) 以後の歴史だけではない。本書では全体の9割近くを先史時代から近代に至る朝鮮半島地域の歴史の叙述に割いている。本書を通読することで、朝鮮半島地域の歴史の大きな流れを一通り理解することができるだろう。
 
日本に暮らす私たちにとって、文字どおり「一衣帯水」の関係にある朝鮮半島地域の歴史を学ぶことには重要な意義がある。なんとなれば、朝鮮半島と日本列島との間には古くから密接な交流が積み重ねられてきており、日本の歴史や文化を考えるうえで朝鮮半島は無視できない存在だからである。そして朝鮮半島地域との関係は、好むと好まざるとにかかわらず、今後も続いていくからでもある。本書の「はじめに」で、「朝鮮半島の人々が歩んできた歴史を学ぶことは、単に知的好奇心を満たすにとどまらず、私たち自身の来し方を振り返り、行く末を見据えるうえでも意義ある営みということができます」(3頁) と書いたゆえんである。
 
ところが、高等学校までの日本の学校教育では、朝鮮史に関して断片的な事柄が取り上げられるのみで、必ずしも体系的に学べるようにはなっていない。初学者向けの良質の入門書もさほど多くはない。そこで本書を監修するに当たっては、予備知識がほとんどない読者であっても歴史の流れを体系的に理解できるような叙述に特に留意した。そのために、細かい事実の羅列を極力避け、文章表現もできるだけ平易であるよう努めた。結果として、すでに一定の知識を有する読者は物足りなさを感じるかもしれないが、書名にあるように「一冊でわかる」コンパクトな通史にはなっているのではないかと思う。
 
その一方で、本書では北朝鮮建国 (1948) 後の歴史についてほとんど言及していない。それは、一義的にはそもそも本書があくまで「韓国史」という枠組みで企画されたことに由来するわけだが、同時に監修者である私自身の能力不足によるところもないわけではない。この点は今後の課題としておく。ともあれ、本書を出発点として朝鮮史に関心を持つ読者が少しでも増えるならば、本書は一定の役割を果たしたといえるだろう。そうなることを切に願う。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 六反田 豊 / 2022)

本の目次

はじめに 多様な交流が積み重ねられてきた
韓国の4つのひみつ
プロローグ 生まれて約70年の若い国
 
chapter1 伝承上と実在の王朝
chapter2 三つ巴の争い
chapter3 初の統一王朝
chapter4 高麗の興亡
chapter5 朝鮮の繁栄
chapter6 朝鮮の苦難
chapter7 日本統治から独立へ
chapter8 大韓民国の歩み
 
ひみつコラム
 [1] 朝鮮半島の多彩な料理
 [2] 韓国の国旗
朝鮮半島の中国の主な王朝・国家・時代
朝鮮半島の歴史年表

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