
書籍名
法解釈入門 [第2版] 「法的」に考えるための第一歩
判型など
244ページ、A5判、並製カバー付
言語
日本語
発行年月日
2020年12月
ISBN コード
978-4-641-12624-4
出版社
有斐閣
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
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本書は、憲法・民法・刑法という基本的な3分野を例に、法解釈の基礎から応用に至るまで、実例を示しながら示した、法学入門書である。
法学部というと、法律の条文をたくさん覚えるという誤解がある。高校の進路指導でも公然と、そのようなイメージが口に出されていると耳にするが、およそ法学の何たるかが理解されておらず残念である。世の中には膨大な数の法律があり、命令や規則、条例等に広げれば、法の条文は一人の法律家が覚えきれる量ではない。むしろ、法律家や、法学を学んだ社会人に求められるのは、その時々に必要な条文を探し出して、読んでそれが何を意味するかが分かるという能力である。
ところが、条文の意味は、読めばすぐわかる場合もあるが、むしろ特有の読み方をしないとわからないという場合も多い。条文の多くは、社会で紛争が起きたときにそれを解決するための基準をあらかじめ示しておく (そのことにより、紛争を防止する) ことを役割としている。このため条文は、典型的な紛争を念頭に置きつつ、汎用性があるように書かれるのが通常である。その結果として、マージナルな紛争が生じた場合に、この条文を適用して紛争を解決して良いのか、そうではないのかがわからないという事態が起きるのは避けがたい。さらにいうと、ある紛争について異なる条文が適用できそうに見え、しかもどちらの条文を適用するかによって解決のあり方 (例えば勝ち負け) が変わるということも稀ではない。このような場合に、条文で使われている言葉や条文の意味、そして条文相互の関係を読み解くという作業が必要になる。これが「法解釈」と呼ばれる作業である。
法学の授業は、この「法解釈」を中心に進められる。いま述べたような、解釈を必要とする場面―「論点」等といわれる―において、どのような解釈が唱えられるのか、なぜ解釈が対立するのか、いずれの解釈が妥当か、最高裁判所の判例はどのような解釈を取っているか、あるいは判例それ自体もどのように解釈すべきか…といった学習を繰り返すことで、標準的な法解釈のあり方とその内容を理解し、さらには自分で法解釈ができるようになることが、法学教育の目標の一つである。
確かにこれまでの法学教育は、法解釈に偏重しすぎるきらいはあり、その点は是正される必要があるが、例えば立法や契約の締結など、新たな法を制定しようという場合にも、その制定した法が後でどのように運用されるのかといった視点は、制定により目的を達成することができるのか、思わぬ副作用がないか等を考えるために不可欠である。その点でも、法解釈の重要性は強調してもしすぎることはない。
本書の初版刊行の直前に、共著者であった島田聡一郎先生 (早稲田大学) が亡くなられ、その遺稿を鎮目征樹教授 (学習院大学) がチェックしてくれた。第2版の刊行に当たっても、引き続き鎮目教授の協力を得られたことに感謝している。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宍戸 常寿 / 2021)
本の目次
第1部 法解釈を始めよう
第1章 まずは条文を眺めてみよう
第2章 条文を解釈しよう
第3章 各法分野における法解釈の特徴
第4章 法解釈と利益衡量論
第5章 解釈の対象となる法
第6章 判例・学説の関係
第2部 各法分野における法解釈の例
第7章 民 法
第8章 刑 法
第9章 憲 法
第3部 2つの視点から考える法解釈
第10章 広島市暴走族追放条例事件──憲法と刑法の視点から
第11章 立川テント村事件──刑法と憲法の視点から
第12章 利息制限法と司法──民法と憲法の視点から