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書籍名

シリーズ大学の教授法 6 授業改善

著者名

佐藤 浩章、 栗田 佳代子

判型など

216ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年3月31日

ISBN コード

9784472405365

出版社

玉川大学出版部

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授業改善

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社会のグローバル化および技術革新は、教育に大きな影響を与えています。アクティブラーニングやオンラインでの学習が取り入れられるなど、大学の授業は日々変化しています。私たちは、自分たちが受けてきた授業とは全く異なる授業を担わなければならないただ中にいます。このような変化の激しい時代に生きる私たち大学教員に求められるのは、常に自分が行っている授業を見直し、よりよい授業に向けて改善し続ける姿勢でしょう。
 
一方、昨今、大学教員は研究においてますます高い成果をあげることが求められていることも事実です。このような状況下では、授業改善が求められていることは理解しつつも、実際にそれに取り組むことは、時間的にも精神的にも難しいというのが大学教員の本音ではないでしょうか。
 
このように教育と研究を対立するものとしてとらえる考え方がある一方で、両者を連続するものとしてとらえる考え方もあります。つまり、授業改善を教育活動であると同時に、研究活動ととらえる考え方です。学生の学びをいかに促すのか、深めるのかといった問いを立て、その解を求めて授業を改善していくプロセスは、研究活動そのものです。そして、その研究を個人で行うだけでなく他者と共同で行うことで、その価値は増幅し、教員個人の授業改善にとどまらず、学部や全学、そして全国や世界規模の大学の授業改善に広がっていくこともあります。しかも、その研究の成果は目の前にいる学生に直接還元されます。このように、授業改善は研究と同様の喜びを実感できる営みでもあるのです。
 
本書では、最初にこうした授業改善の意義や価値を明らかにします。そして授業改善を進めるための具体的な方法を示し、授業改善に必要な体系的な知識や技術を提供することを目的とします。
 
まだ、学ぶ側にいる大学生にとっても、大学教員が授業改善に向けた小さな一歩を踏み出し、その歩みを生涯続けられることを手助けする本書は、授業改善という営みの実際を知るきっかけとなるでしょう。
 
第1部では、授業改善の背景や意義、そして関連する礎知識や理論を学びます。まず、授業改善が求められる背景についてとりあげ、続いて授業改善の意義、教員のキャリア発達との関係について考察します (第1章)。次に、教育スキル・知識・理念という3つの概念を説明します (第2章)。そして授業改善に関わる諸理論を概観した上で、本書を通して使用するLTAモデルを提案します (第3章)。
 
第2部では、授業を観察・分析する方法を学びます。授業の記録方法 (第4章)、授業評価アンケート (第5章) と学生の学習成果 (第6章) の観察・分析方法をとりあげます。
 
第3部では、授業を変える方法を学びます。学習意欲の喚起と目標達成のために授業を変える方法 (第7章)、効率のよい授業に変える方法 (第8章)、シラバスを変える方法 (第9章) をとりあげます。
 
第4部では、授業改善を深める方法を学びます。まずは、ティーチング・ポートフォリオ (教育業績記録) を作成する方法 (第10章)、そして、授業改善を研究にする方法 (第11章)、同僚とともに授業を改善する方法 (第12章)、専門家とともに授業を改善する方法 (第13章)、授業改善をカリキュラム改善に繋げる方法 (第14章) をとりあげます。
 
第5部では、授業改善に活用できるツール、事例、方法に関する資料を所収しています。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 栗田 佳代子 / 2021)

本の目次

第1部  授業改善を理解する
 
1章  授業改善の背景と意義を理解する
  1  授業改善の背景
  2  授業改善の意義
  3  教員のキャリア発達と授業改善
 
2章  教育スキル・知識・理念を理解する
  1  教育スキルを理解する
  2  教育に関わる知識を理解する
  3  教育理念を理解する
 
3章  授業改善の理論を理解する
  1  授業改善を理論で裏づける
  2  授業改善のモデルを理解する
  3  LTAモデルを理解する
 
第2部  授業を観察・分析する
 
4章  授業を記録する
  1  授業を記録する
  2  授業記録を書き分析する
  3  授業を録画し分析する
 
5章  授業評価アンケートをとる
  1  授業評価アンケートを授業改善に活用する
  2  授業評価アンケート結果を分析する
  3  授業評価アンケートを見直す
 
6章  学習成果を明らかにする
  1  学習成果について理解する
  2  学習成果の評価方法を検証する
  3  学習成果から得られる情報と授業改善
 
第3部  授業を変える
 
7章  効果のある授業に変える
  1  学習意欲を喚起する
  2  基本レベルの目標を達成させる
  3  応用・発展レベルの目標を達成させる
 
8章  効率の良い授業に変える
  1  効率化を目指した授業改善の意義
  2  授業前の効率化を図る
  3  授業中の効率化を図る
  4  授業後の効率化を図る
 
9章  シラバスを変える
  1  授業改善の視点からシラバスを捉える
  2  シラバスを書き直す
  3  授業の構造を可視化する
 
第4部  授業を深める
 
10章  ティーチング・ポートフォリオを作成する
  1  ティーチング・ポートフォリオについて理解する
  2  ティーチング・ポートフォリオを作成する
  3  他者とともにティーチング・ポートフォリオを作成する
 
11章  授業改善を研究にする
  1  授業改善を研究として捉える
  2  研究のプロセスを理解する
  3  研究手法を理解する
 
12章  同僚とともに授業を改善する
  1  他者とともに授業改善に取り組む
  2  授業参観を行う
  3  授業検討会を実施する
 
13章  専門家とともに授業を改善する
  1  専門家の協力を得る
  2  授業コンサルテーションを受ける
  3  学内に専門家がいないとき
 
14章  授業改善をカリキュラム改善につなげる
  1  授業改善からカリキュラム改善へ
  2  カリキュラムの観察・分析・変化につなげる
  3  カリキュラムを変えられる組織をつくる
 
第5部  授業改善のための資料
  1  授業参観のための資料
  2  同僚とともに取り組む授業改善方法
  3  ティーチング・ポートフォリオの実例
 

関連情報

オンライン講義:
2020年度開講 大学教育開発論/東京大学フューチャーファカルティプログラム (東大FFP)
第5回 授業改善とふりかえり (UTokyo OpenCourseWare 2020年)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1994/

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