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白い表紙

書籍名

大日本古文書 家わけ第十九 醍醐寺文書之十七

判型など

360ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年7月15日

ISBN コード

978-4-13-091252-5

出版社

東京大学出版会

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『大日本古文書』は、1901年に最初の1冊を刊行して以来、史料編纂所が継続して編纂・出版してきている日本史研究のための基礎的な史料集のシリーズです。その中のひとつ、『家わけ第十九 醍醐寺文書』は、京都市伏見区にある真言宗の名刹醍醐寺に残る史料群・醍醐寺文書を翻刻した史料集です。
 
醍醐寺文書は、三宝院 (さんぼういん) や理性院 (りしょういん) などの、醍醐寺内の院家に伝わった文書を集積したもので、奈良時代から近代までの豊富な内容を持つ貴重な史料として、国宝に指定されています。醍醐寺文書は木製の函に収納されていますが、その総数は800函を超え、現在も調査・整理作業が進行中です。
 
『家わけ第十九 醍醐寺文書』は、醍醐寺文書を第1函から整理番号の順に、読みにくい「くずし字」を正確に解読して活字に直し、詳細な注を付けて、出版しています。第17冊目の本書は、醍醐寺文書の第25函1号から第25函198号に相当する文書を収めています。
 
本書所収の文書は、南北朝・室町時代のものを中心に、江戸時代初期にまで及びます。第25函の文書は、全体としてまとまった性格があるものではありませんが、おおよそ年代の古い順に並んでおり、近代の史料整理の段階で、意図的に整理番号が付与されたものと推測されます。
 
本書に掲載した文書の内容は多様ですが、たとえば、東寺講堂で行われた正月の法会についての史料や、醍醐寺にあった行樹院 (ぎょうじゅいん) という院家の所有する土地についての史料などがあります。
 
特に興味深い史料としては、高野山金剛峯寺の住職任命に関する史料群があります。これは、豊臣秀吉の時代の有名な醍醐寺の僧・義演 (ぎえん) が、金剛峯寺住職の任命方法を改革したために残されているもので、義演自身の筆によるものが含まれています。また、京都の等持寺で開催された室町幕府主催の法会・武家八講に関しても、いくつかの史料が存在しています。これは、参加した僧侶や貴族のリストで、室町時代の寺院社会を考察するための重要な史料です。さらに、義演の筆による史料の写しや覚書が多数みられ、義演が『醍醐寺新要録』という編纂物を編む際に資料として活用された可能性があります。
 
なお、第25函の文書はまだ残りがあり、本シリーズの次冊に続く予定です。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 教授 高橋 慎一朗 / 2021)

本の目次

(本書の目次は文書の目録であり、一部のみを抜粋して掲げます)
 
醍醐寺書 第二十五函
三八四八 明徳四年十二月十一日 僧源快書状
三八四九 明徳五年五月 日 三宝院雑掌申状案
(中略)
四〇八九 応永十七年十月二日 日野重光書状
四〇九〇 応永十九年九月廿日 珍皇寺執行等連署請文案

関連情報

関連記事:
所報 - 史料編纂 刊行物紹介「大日本古文書 家わけ第十九 醍醐寺文書之十ニ」 (『東京大学史料編纂所報』第36号)
https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/syoho/36/pub_komonjo-iewake-19-12.html

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