東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

真っ白な扉ページの真ん中に「大日本古文書」と書名あり

書籍名

大日本古文書 家わけ第十 東寺文書之十七 百合文書れ之三・そ之一

判型など

328ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年3月31日

ISBN コード

978-4-13-091317-1

出版社

東京大学出版会

出版社URL

書籍紹介ページ

英語版ページ指定

英語ページを見る

『大日本古文書』は、1901年にその最初の1冊を刊行して以来、史料編纂所が継続して編纂・出版してきている日本史研究のための基礎的史料集のシリーズである。その中のひとつ『大日本古文書 家わけ第十 東寺文書』は、五重塔が印象的な京都東寺に伝来した膨大な数の文書群のうち「東寺百合文書 (とうじひゃくごうもんじょ)」といわれる約2万5千通の文書の翻刻・校訂に取り組んで、現在も継続中である。
 
「東寺百合文書」は、1997年国宝に指定され、さらに2015年10月にはユネスコの「世界の記憶 (世界記憶遺産): Memory of the World」に登録された。アジアの東の端で独自に発展をとげてきた仏教文化を伝える史料がこれほどよく残っていることが稀有であると世界から評価されたのである。特に寺院の宗教活動を経済面で支えた荘園の文書が多くみられることから、日本では近代歴史学の初発の時代から法制史・社会経済史分野の基本的史料として広く利用されてきたが、研究の進展とともに、そうした分野にとどまらない豊かな可能性をもった文書群であることも明らかになってきている。
 
「東寺百合文書」の時代は8世紀から18世紀初頭まで約1000年にわたる。この古文書が生きていた時代、東寺の僧侶たちはこの文書を「箱」に収納し、厳重に管理してきた。それらは、江戸時代になって加賀藩第5代藩主前田綱紀が寄進した新しい同一規格の桐箱百個 (百合、蓋つきの箱を「合」という単位で数える) に入れ替えられ、ひらがな・カタカナの「いろは・・・」の名称で呼ばれるようになり、東寺の宝蔵に保管されて伝えられてきたのである。百合文書はどんな文字で書かれ、どんな形をしているのか、桐箱はどんなものなのかなどのイメージについては、京都府立京都学・歴彩館の「東寺百合文書WEB」のサイト (http://hyakugo.kyoto.jp/) を覗いて見てほしい。精細な画像の数々が迎えてくれる。
 
さて本書は、膨大な「東寺百合文書」のうち「れ函」「そ函」の文書を翻刻収録している。個々の文書の内容を尽くすことはとてもできないが、山城国上久世 (かみくぜのしょう) ・下久世荘 (しもくぜのしょう) ・植松荘 (うえまつのしょう)、播磨国矢野荘 (やののしょう) をはじめとする主要な東寺領荘園の年貢の収納や分配、他の領主との領有権をめぐる争いに関する文書、荘園や寺内の会計帳簿などが多く、それらを読解分析し組み立てることによって、荘園の領有や寺の経営面での実態、室町幕府の訴訟制度の実際などを考えることができる。また歴史上の個人の事跡を追うこともできる。「れ函」の最後に収録した年月日の記載のない一通の文書は、戦国時代、三好長慶 (みよしながよし) 政権の軍事面に力を発揮した十河一存 (そごうかずまさ) の十代の頃の自筆の手紙である。関連するほかの文書とあわせてじっくり読んでみると、この頃、東寺との間にトラブルを抱えていた若い一存の憤懣と不安とが入り混じった心情が感じられるような気がする。一通の手紙から関連史料を探り、他の人びととの関係や背景となった社会情勢を分析していくのも歴史学のひとつの方法である。
 
大日本古文書のシリーズは、常に古文書学の最前線を意識しながら、正確な翻刻と校訂を心がけ、歴史学の基盤部分を確かなものにすることを目指している。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 教授 高橋 敏子 / 2016)

本の目次

(*途中省略)
大日本古文書  家わけ第十  東寺文書之十七

        目次

[東寺百合文書  れ] (承前)
  九八  長禄二年四月廿二日  西院文庫文書出納注文・・・・・・・・一
  九九  長禄二年四月  日  東寺雑掌陳状・・・・・・・・・・・・・二
  (以下中略)
  一一七 (天文十五年) 十月九日 細川氏綱書状案・・・・・・・・三七
  一一八 天文十五年十月十一日 平盛知書状案(折紙)・・・・・・三八
  一一九 (天文十五年) 十一月廿八日 松田守興書状・・・・・・・三八
  一二〇 (年月日未詳) 十河一存書状・・・・・・・・・・・・・四〇
                                                         [百合文書 れ] 完

[東寺百合文書 そ]
  一  自康和二年二月十九日至康和四年四月廿五日  丹波大山荘文書案・・・・・・・・・・・・四一
  (一) 康和四年四月廿五日  丹波国司解案・・・・・・・・・・・・・四一
  (二) 康和二年八月十六日  丹波国司解案・・・・・・・・・・・・・四三
  (三) 康和二年二月十九日  丹波国司解案・・・・・・・・・・・・・四五
  (以下中略)
  一一〇 文亀元年九月二日 山城下久世荘新重行請文・・・・・・・・二八二
  一一一 文亀元年九月二日 山城下久世荘公文道徳久世弘成書状 (折紙)・・二八二
                                                         [百合文書 そ] 未完

        目次 終
 

関連情報

1. (京都府立京都学・歴彩館) 「東寺百合文書WEB」
http://hyakugo.kyoto.jp/

2. 史料編纂・出版報告「大日本古文書 家別け第十 東寺文書之十七」 (『東京大学史料編纂所報』第51号、2016年10月31日)